童話小説「ガルフの金魚日記31」
ピーヒョロー、ピーヒョロロー。
トンビが青くてたかーい空の上で、大きな輪を描きながら、ゆうゆうと飛んでいます。
なにかエモノでもねらっているのでしょうか。
金魚鉢の中にいるぷくは、だいじょうぶです。
たぶん…、ぷく。
あれれ、いつのまに来たのでしょう。ベンチにブチネコが座って、ぷくと同じように、空を見上げトンビを見ています。
ブチネコは魚を口にくわえています。きょうのお昼ご飯でしょうか。
ピーヒョロー、ピーヒョロロー。ピー!
トンビはくるりと頭を下げると、とつぜん、こちらに向かって急降下してきました。
シュゥー。バサバサバサ。
ニャー、ミャー。ギャオー。
ビヒャヒャヒャヒャー。ぶくぶく。
ぷくは、金魚鉢の底におおいそぎでかくれました。
びっくりしたな、もう。いきなり襲ってくるなんて…。まったく失礼なトンビだ、ぶく。
トンビは、ブチネコのそばをかすめて、飛び去って行ったようです。
ブチネコはだいじょうぶでしょうか。
トンビは、ブチネコが口にくわえていた魚をかすめ取り、飛び去っていきました。
トンビは、あの高い空からブチネコの魚をねらっていたのです。
ニャオー、ブー。
ブチネコは、飛び去るトンビに、抗議の声をあげました。
「あーあ、ブチネコさん、ごちそうを取られちゃいましたね」ぷく。
「ギャオ。くやしいよ。ボーっと見とれていたオレが悪かったんだ。さっさとミケちゃんのところに行けばよかったのに」
そういって悔しがりました。
防波堤のそばに、ミケネコが小さく丸まってふるえています。ここからでもわかるぐらいですから…、よっぽどこわかったのでしょう。
「おい、金魚、またな」
ドラネコはベンチからひょいと飛び降りると、ミケネコのほうにかけていきました。
「ぷくは、ガルフだよ」
と、さけびましたが、聞こえたでしょうか…。ぷく。
ドラネコは、道の中ほどで立ち止まり、ふり向きました。
「わかった、ガルフだな。オレは旅ネコの紋次郎だ、おぼえておいてくれ、じゃあな」
そういうと、再びミケネコのほうに、ゆっくりとかけて行きました。
明日の金魚日記へつづく
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