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ガルフの金魚日記7

秋ちゃんが帰ってきました。
「おかえり。ぷくぷく」
金魚鉢から、元気よく声をかけました。だけど、返事が返って来ません。どうしたのでしょう。うまくいかなかったのでしょうか。

 秋ちゃんは家に入ると右回れして、出窓のぷくのところにやって来ました。
「ケンのやつ、バカじゃない」
 プリプリしています。とても機嫌が悪そうです。それで、だまっていようと思ったのですが、ついよけいなことを聞いてしまいました。
「好きって、いえなかったのですか」

「言ったわよ。勇気を出して。なのに、ケンのやつ、ケラケラ笑って…」
「笑ったんですか」
「友だちならいいよって、そういうの。もう、腹が立って、くやしくて…。友達なら、もう、いいわよ! って…、帰ってきた」
「友だちなら、いけないのですか…、ぷくぷく」

 おんなの子の気持ちなんて、ぷくにはわかりません。
 すると秋ちゃんは、首を強く左右に振りました。
プリプリしていた秋ちゃんでしたが、急にしょんぼりしてきました。

「ケンちゃんと、ちゃんとお友達になりかたかったのに…」
 ぽつりとつぶやきました。
「でも、怒って帰ってきたんでしょ」
「ガルフが行けっていったから、こんなことになったのよ」
「ええ、そんなぁ。ブクブクブクぅ……」

 すると突然、秋ちゃん、しくしく泣きだしました。
 困ったことになったぁ、と思っていると、
「あたし、かってに帰ってきて、ケンちゃん、怒ってるだろうなぁ」

 なんとかしてあげたいんだけど…。
ぷくは金魚鉢の中を、ぐるぐる泳ぎながら考えました。でも、なんにも思い浮かびません。
 秋ちゃんは手の甲で涙を拭いました。

「あたし、ケンちゃんにもう一度あって、話してくる」
 そういうと、風のように、ぷくの前から駆けだして行きました。
 今度こそうまくいくといいなぁ…、ぷく。
 それからしばらくして、ピンクのワンピースがひらひらふわふわと、スキップしながら宙を泳いでいます。うまく話せたのでしょうか。

 秋ちゃんが帰ってきていいました。
「ガルフ。ケンちゃんとお友だちになったよ」
「そうですか。よかったですね。ぷく、ぷく」
 ぼくも金魚鉢の中で、スキップをしました。
 ぷくぷく、ぷくぷく。ぷっぷっぷー。                    明日の金魚日記へつづく

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