童話小説「ガルフの金魚日記44」
おひるねをしすぎたのでしょうか、夜になっても目がさえてねむれません。
夜空には満点星々が、キラキラとかがやいています。
浜にうちよせるさざ波が、小さく遠く、ざぶん…、ざぶん…、ときこえてきます。
波の音以外は、シーンと静まりかえっています。
ひつじかいが、夜の星をながめ、もの思いにふっけたのも、こんな夜だったのでしょうか。ぷく。
あっ、青く白く光るものが、天の川を横切り、一本の糸をひき、消えてなくなりました。ほんの一瞬だったので、見まちがったかもしれません。こんどはふたつ、すっすっと、流れていきました。
間違いありません。あれはきっと流れ星です。消えてなくなるまでにお祈りをすれば、願ごとがかなうそうです。
やってみましょう。胸びれを合わせます。目をつむりました。これじゃあ星が見えません。
あっ、星が流れました。ブツブツかんがえているうちに、お願いするのをすっかりわすれていました。ぷく。
今度は目をあけて夜空をにらんでいました。しかし、星は流れくれません。
きつくにらんでいるうちに、まぶたがとろんとして、いつのまにかに眠ってしまいました。ぷくぷく。
ぷくぅー。目をさますと、太陽はすでに高く昇っています。
あれれ、太陽のまわりに、七色にひかる、まん丸の輪がかかっています。雨のあとにでる虹ににています。それが、ぼんやりとした太陽を、とりかこんでいるのです。
あれも虹なのでしょうか。このあと、雨になるかもしれません。
なぜかというと、雨のにおいがするからです。
雨がちかづくと、ムッとしたにおいがするからです。
四季ばあさんもそんなことを、いっていました。
かみなりさんにもにおいがあります。
ぷくはかんじるのです。ちょっとなまぐさいような、こげたような、このにおがしたときは、あらしになります。だから、金魚鉢のそこでじっとしていることにしています。
かみなりさんは電気だそうじゃないですか。感電したら大変ですからね。ぷくぷく。
そういえば太陽で思いだしました。
四季ばあさんが、腰をのばそうと店から出て、明るい太陽の下でウーンと背伸びをすると、へっくしょん、ってかならずくしゃみをするのです。
そしたら、ベンチに座っていたじいさんも、はくしょん、ってくしゃみをします。
どうして、おばあさんはやおじいさんは太陽を見ると、くしゃみをするのでしょうか。
くしゃにをしないぷくには、わかりません。もちろん、太陽を見ても、くしゃみはしません。ぷく。
やがて太陽は西の空を赤くそめ、しずんでいきます。東の空からは、赤い月がのぼってきました。まんまるの赤いお月さまです。
お月さまも夕焼けに染まるのでしょうか。それともはずかしくて顔をまっ赤しているのでしょうか、ぷく。
お月さまは赤い顔のまま、どんどんのぼっていきます。すると、赤からきいろになり、空の高いところにつくと、いつもの銀色のお月さまになりました。
よかった、ぷく。
もし、もしも、ですよ。あのお月さまがなくなったらどうなるのでしょう。
とっぷりとくれたやみ夜だけになってしまうのでしょうか。
恋人たちが、明るい月の下を、わかれをおしみながらならんで歩くことも、なくなるのでしょうか。
春さんはこの島にきて、こんな月の下で、冬さんとどんなおはなしをしたのでしょうか。気になります。ぷく。
そんなこと…、きいてはいけないのでしょうか。
かぐやひめさん、どうしたらいいとおもいますか。ぷくぷく。
明日の金魚日記へつづく