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童話小説「ガルフの金魚日記20」
むこうからトコトコやってくるのは、ぷくをおそってきたブチネコではないでしょうか。金魚鉢にエサをばらまいてにげていった、あのブチネコです。
でも、きょうはなんだか、ようすがちがいます。ごじまんの長いシッポをピンと立てて、歩いています。ぷくー。
あれれ、ブチネコのうしろを、すました顔のミケネコがつてきます。短いシッポをお空にむけて、かわいいお耳ピンとはって歩いています。
二匹がならんで、ぷくのいる出窓の前のベンチに、ピョンと飛び上がりました。そして、二匹ならんでぷくをみました。
ぷくは、身を固くして、金魚鉢の底に身をひそめました。
ぷくの心配をよそに、風来坊(ふうらいぼう)のブチネコはミケネコに顔をむけると、ミヤーオとなきました。
すると、ミケネコがミャーと、優しくこたえるようになきました。
ごあいさつだったのでしょうか、それが終わると二匹は、ベンチから飛び降り、シッポをピンと立て、ゆっくりと道路のむこうの、海の方に歩いていきました。
ああ、びっくりした。二匹のネコににらまれたときは、どうなることかと思いました。
どうやら、風来坊くんは地元のミケネコさんと仲よしになったようです。ここに住み家を決めたのでしょうか。それで、ぷくに彼女を紹介しにきてくれたんだね。
「おしあわせに、ブチネコさん」ぷくぷく。
目を遠くにむけると、みどりの木々におおわれた、かわいいいくつもの島が、水色の海の上にぽっかりと浮かんでいます。
みどりの木は松というのだそうです。
青い空には、まっ白なわた雲がポワンポワンと浮かんでいます。
そういえばもうじきだいだい色のビワが、たわわに実る季節になります。
フワぁー、ぷくぷく。そんなことを思っていると、大きなあくびがでました。
目の前の景色がぼやけ、とろんとしてきました。
ちょっとお昼寝をしましょう。ぷくーぷくー。
ここはそんなまったりとした時間が、ゆっくりと流れるイチジク島です。
ぷくぷく…ぷく。
明日の金魚日記へつづく