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模写の風景 画家の心 第26回「ワシリー・カンデンスキー 塔のある風景 1909年作」

 カンデンスキーはロシアの画家であるが、モスクワ大学で法律と政治学を修めた秀才だ。ところが画家になりたくてフランスに渡り、絵の勉強をし、一端ロシアに戻るが、戦争を挟みフランスで没する。享年77歳。

 この絵は彼が43歳になった時の絵だ。左端から眺めると印象派のような絵で、塔のある家とわかる。順に目線を右に送っていくと山なのか、それとも角の生えた黒い生き物なのか、よくわからないものが見える。見れば見るほど得体の知れないものになっていく。

 右端にある白いものは雲だろうか。天気は晴れているのか、嵐なのか。昼なのか夜なのかもわからない。すべての状況を表したものだろうか。とにかく見れば見るほどよくわからない。見る側の感性にゆだねられた絵だ。

 カンデンスキーは抽象画家の代表だが、抽象画に進んで行く最初の絵がこれだ。画家の心に浮かんだ心象を表し、見る側が自由に想像して絵を楽しむわけだが、この種の絵を何枚か続けて見ると、とても頭も目もひどく疲れる。

 ところが模写して気が付いたのだが、画家の方は心に浮かんだことを気の向くままに形にし、色をのせていく。ただそれだけだ。

 このスタイル、画法に慣れてしまえば画家自身は意外と気楽に楽しく描いているのではないだろうか。

 皆さんは、抽象絵画はお好きだろうか。

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