童話小説「ガルフの金魚日記43」
「オイ、きんぎょ、おきろ」
水草の影で、うとうとお昼寝をしていました。
びっくりして目をさますと、ドラネコがぷくをにらんでいます。
「おどかさないでください」
「やさしく言ったつもりなんだが、びっくりさせてわるかったな。オレとミケとに子ができたんだ。見てもらおうと思ってよ」
ドラの横にミケ、そのとなりにかわいい子猫が二匹、ちょこんと座って、ぷくを見ています。
「どうだい。かわいいだろ」
「ええ、とってもかわいいです。それで、名前は?」
「名前はまだない。そろそろ考えないといけないんだが、いいのが思い浮かばなくってよ。この島に親しいネコもいないし、どうしよかって悩んでいたら、金魚のオマエのことをふと、思いだして、相談してみようとね。それで、みんなして来たってわけよ。なんかいいの考えてくれねぇか」
「ミケさんはどう言ってるのですか。ぷくがつけるのはおかしくないですか」
「ミケもそれでいいっていうんだ。なあミケ」
「ミャー」
「えっ、いまなんていったんですか」
「そうだってよ。ミケは、島育ちで、ネコ語しかしゃべれないんだ。ゆるしてやってくれ。そのうちおしえるからよ」ミャオ、ミャオ。
「名前ですよね」
ぷくは、二匹の子猫の顔をじっと見ていました。
「コドラとコミケじゃあ、ダメですよね」
「あたりめえだろう。そんな名前、こんど口にしたら食っちまうぞ」ギャオ。
「わかりましたよ。ちょっとじょうだんをいっただけじゃないですか」ぷく。
もういちど子猫の顔を見ました。うーん、ぷくぷく。
「あー、思いつきました。キンちゃんとチェリーちゃんでどうでしょうか」
「キンにチェリーか、なんかしっくりこないなぁ。ミケ、どう思う」
「ニャオニャオ」
「好きじゃないってよ。ほかに、もうちょっとなんとかならないのか」
「では、キンタくんとマリンちゃんではどうです」
「いやぁ、だめだな。それって、金魚の名前じゃないのか」
「ええ、そうですけど。だめですよね、やっぱりね」
「こんど金魚の名前いったら、ほんとうに食ってやるからな」
「わかりました。わかりましたよ。えーっと、ムギ、ソラ、ココ、マロン、モモ、キナコ、リン…」
「もういい。聞いてられん」
「ミャオミャオ」
ミケさんが何か言っているようです。
「おう、そうか。わかった。ミケがな、ソラとモモがいいそうだ」
「ソラちゃんとモモちゃんですか。いい名前じゃないですか」ぷくぷく。
「お前がつけたんじゃないか」ミャーオ。
「ああ、そうでした」ぷくぷく。
こネコちゃんたちの名前は、ソラとモモと決まりました。
四匹は、しっぽをピンと空にむけて、道路をわたり歩いて行きました。これからお散歩でしょうか、それともおやつにするのでしょうか。
ここはポカポカ陽気の、気持ちいいいちじく島です。
ふわぁー、あくびが出てきました。もう一度お昼をいたしましょう。では、おやすみなさい…。ぷくぅ。
明日の金魚日記へつづく