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学芸美術 画家の心 第41回「ピエール=オーギュスト・ルノアール サマリー夫人の肖像 1877年作」
印象派で好きな画家と言えば、一番は間違いなくクロード・モネ。そして2番目はピエール=オーギュスト・ルノアールになるだろう。
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日本人の好きな画家ランキングでは、フィンセント・ファン・ゴッホが断トツの一位だと思われるが、ゴッホはポスト印象派に分類した。
ルノアールが大きく評価されるようになるのは、「ムータン・ド・ラ・ギャレット(1876年)」もしくは「読書する女(1874年)」からであるが、わたしはルノアールがルノアールとして確立した絵は、この「サマリー夫人の肖像」だと考える。
この絵はルノアールの色となるピンクないし赤が、背景色として配されている。これ程までに大胆にピンクを配色した絵の最初だからだ。
この絵からルノアールは我われの知るルノアールになったのだ。
ちなみにサマリーは1875年パリ、フランス座でドリス役としてデビューし、きびきびと所作と明快な発音、知的な印象などで人気を博した女優さんだ。
ルノアールは彼女の全身像とこの半身像を描いている。
ルノアールの絵は、目にも優しく、ゆとりを感じさせる。心は穏やかになり、そして癒される。
ルノアールは言う。
その中を、歩いてみたくなるような風景が
その背中を、撫(な)でてみたくなるような女の絵
こんな絵が、わたしは好きだ
この絵は、まさしくこの言葉の原点ではないだろうか。