童話小説「ガルフの金魚日記23」
出窓から見える海が、まっ赤に色づいています。
赤い夕陽けが、暗い島々を染(そ)めぬいています。
きれいな夕焼けです。
なぎさのさざ波までが赤く、きらきらとかがやいています。
思わず、「ぷくー」、とためいきがでました。
そのとき、あお白い小さな光が、出窓の外をただようように飛んでいます。
ぷくは、すぐに、四季ばあさんだと思いました。そして、
「おばあさん、四季ばあさん」
と、声をかけました。
でも、返事はかえってきません。
どうやらほんものの、ほたるのようです。
「ほたるさん、こんばんは」
ほたるは、ぷくのいる金魚鉢にふちにとまりました。そして、おしりの光をてんめつさせます。
ぴーか、ぴーか。
ぴか、ぴーーか。
ぴか、ぴか、ぴーーか。ぴか、ぴーか。
ぷくは、きれだなって、ただ見とれていたのです。
ぴか、ぴか、ぴー。
ぴーか、ぴーか。ぴか、ぴーーか。
ぴか、ぴか。
さいごは、つよい光でした。
「ほたるさん、どうしたの。なにか言いたいことがあるの」
ぴーか、ぴーか。ぴかー。
ほたるさんは羽を広げると、ふわりと飛びあがりました。
そして、来たときと同じように、ふわふわと海のほうに飛んでいきました。
ほたるさんは、ぷくになにが言いたかったのでしょう。けっきょく、よくわかりませんでした。
今度あったときは、ほたるのひかり語が、わかるようになっていたいと思いました。
まっ赤に染まっていた空でしたが、やがて群青(ぐんじょう)色から深い藍(あい)色にかわり、海の上にとっぷりと暗(くら)い闇(やみ)が広がりました。
今夜は月もなく、星明りだけの夜です。
あの星ぼしは天の川というそうです。冬さんがこどものころ、四季ばあさんにおしえてもらいました。
ピカッと光りながら暗い空を、何かが流れました。
星くずがこぼれ落ちたのでしょうか。ぷく。
目の前の白い砂浜に黒い波がおだやかに打ちよせています。ちゃぷん、ちゃぷんと、さざ波の音がきこえてきます。
夜の闇はしずかに、しずかにふけていきます。
明日の金魚日記へつづく
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