ウキ
釣り人には堪えられない「寒クロ」のシーズンがやってきた。
夏場は漁師たちに「カワデ(川鯛)」とバカにされる黒鯛も、海水温が下がり冬を越すために荒食いする今の時期は脂がのり大変美味になる。
それゆえ「寒クロ」と称され釣り人が目の色を変える冬の磯釣りのターゲットとなるのだ。
男鹿の磯では、十一月中旬から一月末まで、県内外からの釣り人でいっぱいになる。早起きの苦手な私の場合は、魚を釣るより釣り場を確保することの方が大変である。
北西の季節風が雪を伴ってビュービューと容赦なく打ち付け、波しぶきをかぶり、鼻水をたらし、それでも暇があれば、否、時間をやり繰りして磯に通う釣り人とはいったい何であろう。
平日に、岩場いっぱいに散らばったカラフルなウェアを着た釣り人達を見るたび、この人達はいったいどういう仕事をしているのだろうか?と思う。
まあ、私もそのうちの一人ではあるのだが。
この「寒クロ」釣りに欠かせないアイテムの一つに「ウキ」がある。
30㎝ほどの長さの細い棒状の「立ちウキ」。
あるいはどんぐりのような形をした「円錐ウキ」等々。
ウキは魚の当たり(魚信)を取るためというよりは、実は潮の流れをとらえ、魚を掛けるポイントに、餌の付いた針を運ぶ役目と考えた方が正しい。
これらの「ウキ」は木製や樹脂で作られており、釣りの名人たちのデザインやその名が冠せられ、いかにも釣れそうなネーミングで売られている。
値段もバカにならない。数百円のもあるが高いものだと一個数千円のものまで。
ただし、高価だからと言って釣果が上がるものでもない。
やはり最後は腕である。
種々多様な「ウキ」、実はもう一つの重要な役目がある。
整然とディスプレイされて店頭に並び、釣り人を釣り上げるのである。