お水も風俗も、お客とキャストは平等である

「お客様は神様です」
商売において、こんな言葉を使う方もおりますが、これが誤った方向に行くことで、とんでもないお客を育てていくことになる。

そもそもお水も風俗も共通するのは、遊ぶ時間を売ってるだけであり、
その子を売ってるわけではない。

キャバ時代、こんなお客様がいた。

指名を何度かしていただいた、パチンコ店のとある社長。

彼はお金にも余裕があり、まぁまぁ見た目もイケメンだったが、
人を見下す癖があった。

「女はアクセサリー」
こういう言葉が似あう方で、
当然彼にとって私を指名することは、好みとかそういうことではなく

「ススキノで有名な子を指名している」

という事なのだと思う。

そんな彼がある日来店したが、
その日はとにかく忙しく、リストもてんてこまいだった。

当時、私の場合、お客様が入店すると、リストがどこに指名が入ったと教えてくれていた。

それを覚えて、自分で時間を計算し、うまく立ち回っていたのだが、
その日に限って、しかもそのお客様の入店の際、連絡がなく、
リストがそれに気づいたのは2時間後。

慌てて、リストがやってきて
「瑞城さん〇〇にお客様指名で着てたんですが2時間行ってません。
言うの忘れてごめんなさい」
と謝ってきた。

まぁ人なんだからミスもあるだろうと思って、
いいよと言って、ついていた指名の卓から移動して
そのお客様のところに向かった。

席に着いて
「ごめんなさいね~。リストが忘れてたみたいで、わからなかったの。」

と言ったら
「悪いと思ったら、かけつけだよな!じゃあ駆け付け一杯いってもらおうか」

と、意地の悪い顔で、焼酎を満タンにしたグラスを私に渡して来た。

まぁ仕方ないと思いながら
「いただきます~、遅れてごめんなさい~」と言いながら

一気をしていたら、彼が私のグラスを掴み、上にあげ、
最後には頭に焼酎をかけてきた。

『ミスで2時間来れなかったからとこれはないよな・・・。』

びしょびしょになった私を観て、
彼は笑って、もう一杯飲めよと勧めた。

無性に腹が立ったが、
ここでぶちまけてはいけないと思って下を向き我慢していたら、
ふいに後輩のしーちゃんの心配してる顔が見え、思わず

「見んなよ!!!」

と叫んでしまった。

精一杯我慢していたため、思わず後輩にあたってしまった・・・。

そのあと、1時間彼の席に着いたが、
先ほどの行為が私にはどうも納得いかなかった。

その後、店は閉店になり、支払いが終わった方が順次エレベーターに乗るため、お帰りのお客様がエレベーターホールに押し寄せる。
お客様のお見送りのためについていたキャストも当然そこにはたくさんいた。

彼の番になり、彼と彼の部下たちが数名エレベーターに乗った。
私と私と一緒についていた数名のキャストがエレベーター前に整列する。

そこで、私はエレベーターを足で止め、彼らにこう言い始めた。

「先ほどのお店のミスは本当に申し訳ありませんでした。
しかし、あなたの私に対する行為は、あまりにもひどい物だと思います。
キャストにも店にもルールはあります。
でも、お客様にも同じようにルールは存在します。
あなたはそのルールを犯しました。
よって、今後、私を指名したとしても、こちらでキャンセルさせていただきます。
お店に来るのは構いません。それはあなたの自由なので。
でも、私は今後一切あなたの席にはつかないので、ご了承ください。

本日はご来店誠にありがとうございました。」

そういって、頭を深々下げた私を見て、一緒にいたキャスト全員が頭を下げた。

エレベーターホールにいた他のお客様もキャストも、その様子を静かに見守っていた。

エレベーターが閉まるとき、彼の顔が一瞬見えたが
それはキツネにつままれたような顔だった。

エレベーターが閉まった後、なぜかエレベーターホールには拍手があふれた。

数か月後、私は彼と偶然、店が終わってから、とある交差点で出会うこととなる。

それは店が終わって、常連の某食品会社の社長とお寿司屋さんに行こうとしたとき。


やたらどっかのアフターの女の子達とうるさくしていた中心は彼であったのだが、交差点でばったり出くわした彼は、私の顔を観るやぎょっと顔をしておとなしくなった(笑)

それを見た某食品会社の社長が
「あれはなに?知り合いなの?」
と聞いて来たので

「あぁ~先日私がキャンセル宣言した人だよ(笑)」
というと、事情を察したようで

「あぁ~あれが・・・(笑)」
とにやにやしていた。

そりゃそうだ。
店の女の子にキャンセルかけられるなんて、余程のことがないとなることはない。
彼はそれだけ余程のことをした証拠なのだ。

誰だってミスはする。
でもそれを許す気持ちも世の中必要だが、
あまりにもひどい場合は教育という名の制裁も必要だと私は思う。

たぶん誰も言わないから、
それが正しいと思って行き過ぎたことをしてしまうのだから。

相手が社長だろうがなんだろうが、
ダメなものはだめって言えなきゃホントの信頼は勝ち取れない。




元ストリッパー&振付師の観月真子こと藤倉瑞城です。