【YOHAKU】オンライン授業のもやもや
「意味がないんやろなって思った。私が話すことを、誰も聞いてないし、誰も必要としてないんやろなって思った」
オンライン授業でのディスカッション。
マイクも切られた真っ暗な画面に向かって話し続けるやるせなさ。
前代未聞の一斉オンライン化で、問題点も多く発見された授業。
こんにちは、YOHAKUです。
今回は、とある大学3年生の声を聞かせてもらいました。
彼女の通う大学もコロナウイルスの影響で、前期がオンラインになりました。
そしてその中の授業の1つで、オンラインならではのコミュニケーションのしんどさを感じてしまったそうです。
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真っ暗の画面に向かって語りかける20分間
ーしんどかったのは、どんな授業でしたか?
演習の授業で、水曜日の1限目だった。
自分の専攻コースは、教授も授業の数も少ないところで、卒業までの必要単位で専攻科目の枠で取らなきゃいけない数が決まっているから、1限の演習ってちょっと嫌だなぁと思ってたけど履修してた。
ーオンラインの授業になって、どうでしたか?
先生もすごい戸惑ってたんよね、もう定年間近の先生で、オンラインになって授業のやり方を模索してるって感じ。
積極的に工夫してくれる人で、先生が悪いわけではないんやけど……
前半が講義型の授業で、後半20〜30分くらいをZoomのブレイクアウトルーム(※)に分かれて「授業の内容を好きに話し合ってください」って。
※ブレイクアウトルーム……Zoomミーティングで、参加者を複数のセッションに振り分ける機能のこと
ー授業のどんなところがやりづらかったですか?
その後半のディスカッション。いろいろ原因はあるんやけど、メンバーが毎回違って知らない人がほとんどで、違う学年の人もいっぱい混じってて、しかも話すテーマが自由っていうふうに投げられてるのがやりにくかった。
ーなるほど。ディスカッションはどんな様子でしたか?
初めは、ちらほらビデオをオンにしてる人もいたけど、教授が学生側のビデオ通信データ容量に気を遣って「無理に顔出さなくていいよ〜」って言ってからは、10割ビデオオフ。まぁ1限やったから仕方ないんやけど。
私は学生団体やバイトでオンラインミーティングの経験があって、顔が見えていない時の話し合いのしづらさを知っていたから、発言の時とかはたまにビデオつけてた。
初めの方は、ブレイクアウトルームは先生が見ていないからっていうので、みんなディスカッションで話したくないからビデオオフマイクミュートで時間が終わるのをただ待つ、みたいな状態になったんよ。
それが先生にバレて、じゃあ一番受講人数の多い3回生がディスカッションの進行役になって、授業後何を話し合ったかのメモをチャットに送ってください、ってなったんよね。
それからが特にしんどかった。
誰もビデオをオンにはしてくれなかった
ーなるほど、必ず発言しないといけないってなると、なかなか負担がかかりますよね。
そう、それで自分もブレイクアウトルームで進行しないといけなくなって、人数の少ない専攻コースやから、きちんとしようと思って。たまにビデオつけたりもしたけど誰もビデオをオンにはしてくれなかった。
他の人は意見をいうときも、一瞬マイクオンにして自分の意見言う、即ミュート!って感じで、話し合いらしい話し合いはできなかった。
自分はそれを打って、なんとかまとめて……って、段々しんどくなり始めたかな。
ーミュートやビデオオフって「積極的に話す気はありません!」って意思表示みたいなところがありますもんね。
うん、自分はやることやったんでもう喋りません、みたいな。
それで段々、意味がないんやろなって思った。
私が話すことを、誰も聞いてないし、誰も必要としてないんやろなって。必要としてるのは先生くらいやけど、別に直接聞いてるわけでもないし。進行役をしても、なんかやっとるわ、としか他のメンバーは思わんし。
「受講しない」を選択する悔しさ
ーそれは、じわじわしんどくなりそうですね。
それで、もういっかーってなって、ブレイクルームになった瞬間に抜けるようになったんよね。
けど、多分そういう人が他にもいて……。
「悪質な退室の仕方してる人は減点してます」っていうメールがきたんよ。
30分おきに出席が取られてたらしい。それがなんか監視してますよって脅しみたいで嫌になって。
そういう評価ならもういいやと思って受講をやめた。
授業内容自体に興味はあったし、後期対面になったら気まずいなとは思ったけど。
ーなるほど、内容に興味があっても授業形式によってしんどいってケースは、このオンライン授業のせいで増えていそうですね。
その点はちょっと悔しかったかなぁ。
相手のことを考えたら、もう少し歩み寄る余地はあった
ー何か他の学生や教授などに伝えたいことはありますか?
うーん、ビデオをオンにすることのめんどくささは私もわかるからなぁ。部屋を片付けて、着替えてメイクして髪整えてって。特に1限なら厳しいよね。けど、相手のこと考えたら、もう少し話し合いをしやすくする譲歩の余地はあったかなって。
教授に関しては……例えばディスカッショングループメンバーが定まってないことによって、他学年とも話せる機会があったりっていうのは、私もめっちゃ良いと思った。
ただ出席だけを重視するような評価方法にはいい気分せんかったし、教授がもうちょっとディスカッションのトピック絞るとか、あとはブレイクアウトルームを回ってくれたりすると良かったかな。進行役の3年生への負担も大きかった。
けど、向こうから見たらディスカッションで話したくないから退室した生徒でしかないんやろなっていうのはわかってるからなぁ……。
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今回は、オンライン授業に”しんどさ”を感じたことのある大学生にお話を聞かせてもらいました。
こまかに話を聞いていくと、そこには、実際に体験しないとわからない、見えにくい”しんどさ”がありました。
授業参加者、授業実施者が相手の状況を、もう少しでも想像することができれば、不慣れなオンライン授業に関わった人みんなそれぞれの”しんどさ”を軽くできていたのかもしれません。
もはや日常となったオンラインでのコミュニケーション。
今回のお話が、優しい想像力の”余白”になれれば幸いです。
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植木凛・小林華