クマ出没に対する考察
近年、住宅地や市街地などでクマが出没する事件が多発しています。
クマの出没によって、以前よりも人の生活が危険に晒されており、実際にケガをする人や命を落とした人もいます。
先月の30日には秋田県のスーパーマーケットにクマが入り込み、47歳の従業員の男性がケガをする事件がありました。
これらの事態を踏まえ環境省は、「クマ類出没マニュアル」を作成し、注意喚起を行なっていますが、一向にクマ出没の件数が減らず増加の一途を辿っています。
そこで今回はこのクマ出没に関する詳細とその原因について考察を行い、その対策について解説したいと思います。
クマ出没の原因
上記の通り、近年、住宅地や公園などの身近な場所でクマの目撃情報が増えています。小学校の校庭に現れたり、車の走行中に急にクマが飛び出し衝突する事例など、私たちの生活圏とクマの生活圏が曖昧になっています。2023年には流行語大賞に「アーベンベア」が選出されるほど、クマの出没は大きな問題になっています。
ではなぜクマたちが市街地などの身近な場所に降りてきているのでしょうか。主に原因は3つあります。
地球温暖化による気候変動
気候変動はクマの生態系に大きな影響を与えています。
気温の上昇は早くなり、春の訪れが早まることで、冬眠から目覚めたクマが自然界で食料を見つけることが難しくなってきます。
例えば、果実や種子が育つ時期が早まる一方で、クマの目覚めがそのタイミングにに追いつかない場合、食料が足りなくなることもあります。
そのため、クマが食べるどんぐりが温暖化の影響で少なくなっており、餌を求めて人里まで降りてきていると推測されます。
クマたちの暮らす場所の平均気温が1度上昇すると、食物連鎖に大きな変化が生じると言われています。
工業化や都市化による環境破壊
クマたちが暮らす森林が都市開発などによって縮小し、食料を求めて市街地に降りてきています。森林が減ることはクマたちの生活に深刻な問題となっており、私たち人間が伐採してしまったことで、クマたちの生活圏を変えてしまっています。
地方都市の過疎化や住人の高齢化
林業や農業は深刻な跡継ぎ問題もあり高齢化が進んでいます。手入れできず放置された森林や耕作放棄地が増えると、私たち人間と野生動物たちの境界線が曖昧になってきます。
過疎化が進み放置された農地や果樹園には食べ物があるため、クマの目撃を年々増えていると報告されています。
市街地でのクマの行動
市街地に降りてきたクマは、住宅地や公園など、人の生活圏に侵入することがあります。特にゴミの管理が不十分な場合、臭いを発しやすくなるため、つられてクマが出没しやすい傾向にあります。
近年では、警戒心が低下したクマが、人間を恐れず接近するケースがあるため、問題となっています。
このような状況で、私たちはどのような対策をすれば良いでしょうか。
次に地域規模での対策と個々人ができる対策について解説します。
対策
地域の安全対策
具体的にはクマの生態や遭遇時の対応を市民に周知すること、共存への理解を深めた上で以下のような対応が必要となります。
クマの情報管理
クマの出没場所や育成数などの最新の情報を得ることは対策を練る上で必要にです。
北海道ではツキノワグマの生息密度を調査し、特定の地域での個体数の増加を把握することで、市街地での侵入を未然に防ぐ取り組みが行われています。また生息の調整のため、捕獲や避妊手術などの人道的な方法が模索されています。
ゴミの管理
最近の研究では、クマの行動範囲内にある住宅地でのゴミの管理を徹底することが、被害を減らす上で効果的だと指摘されています。
クマによる被害を未然に防ぐためには、地域住民への啓発と環境設備が必要です。住民には、ゴミを適切に管理して、クマを引き寄せないようにする指導が行われています。
人間とクマの住み分け
人とクマの住処をしっかり分けるための取り組みが必要になります。
ドングリなどクマの食べ物が山中に十分にあれば、クマが人里へ出る確率を減らせます。さらに農地や住宅街に近い森林でドングリやその他のクマの食料を適切に管理することで、クマが食料を求めて移動する距離を減らすこともできます。
現在も、山間部ではクマの食料源を保護し、彼らが人里に降りてくる必要性を減らす取り組みが行われています、
捕獲と駆除
クマの出没が問題になる地域では、捕獲や駆除が最終手段となっています。
捕獲したクマを保護したのち自然に戻す場合、他の問題に波及しないように、適切な場所へ戻す必要があります。
人の安全性を優先して、どうしても駆除せざるを得ない場合も生態系への影響を最小限に抑える必要があります。統計によると、適切な管理の下で行われた捕獲・駆除は、クマの人里への侵入率を25%低下させたと言われています。
クマ駆除に対する批判について
ここでは、市街地や住宅街に出没したクマ駆除に対する批判について考えてみたいと思います。冒頭に述べたスーパーマーケットに出没したクマ事件ですが、対応として電気を使って駆除された後、店の外で運び出されました。
この対応として、秋田県に120件ほどの非難があり、その大部分が駆除に対するやり方の苦情で、「(クマを)遠くの山に逃して」「なぜ殺処分するのか」といったクレームでした。
このクレームに対して、色々と議論がされており、私なりの見解を述べたいと思います。この問題2つの観点でを考える必要があります。
人とクマの命の重さ
クマを駆除するという選択
人とクマの命の重さ
人とクマは同じ動物(動いている生き物)であり、命の重さは同じだとは思っていますが、ではどちらの方が大切なのかを考える必要があります。
例えば、兄弟や親戚の命を守るためにクマを駆除するか、それとも兄弟や親戚が命を落とす代わりにクマの命を守るか、という二択を迫られたとします。おそらく、ほとんどの人は兄弟や親戚の命を優先するのではないでしょうか。
※あくまで2者択一で例を出しています。
似たような例として、ペットと人命のどちらを大切にするのかメディアで騒がれた事件がありました。結果として、人命を大切にする人の意見もあった一方で、ペットも人命と同じで扱うべきという意見も多数寄せられました。
現に航空会社では乗客に手荷物を持たせないよう、徹底した訓練を行なっております。
私自身、同じ命ではあるものの、やはり人命優先であるべきだとは考えるものの、より議論を重ねて結論を出していく必要があると思っています。
クマを駆除するという選択
批判の論点はクマを駆除して、命を奪う選択をしていることです。
もちろん、クマにも生きる権利があり、むやみに駆除しないことが大切ですが、そん対応をしないことで、よりクマの出没が起こり最悪の場合、人の命を奪ってしまう可能性もあります。
最近の例では、肉食のクマ(OSO18)が目撃されており、今後も同じようなクマが現れる可能性もあります。いつか特定の人間を襲うクマも発生する可能性も否定できません。
最悪の手段として、クマを駆除するという選択肢は必要であり、すぐにそれを無くすことができないのではないかと考えています。
まとめ
色々と解説してきましたが、まとめると以下になります。
近年、住宅地や市街地などでクマが出没する事件が多発しており、以前よりも人の生活が危険に晒されています。
クマ出没の原因として「地球温暖化による気候変動」「工業化や都市化による環境破壊」「地方都市の過疎化や住人の高齢化」があげられます。
対策として地域レベルでの「安全対策とクマの情報管理、クマとの住みわけの明確化」を行い、個人では「ゴミの管理」を徹底する
クマ駆除に対する批判について、以下2つの観点で考える必要があり、今後議論を重ねていく必要がある
人とクマの命の重さ
クマを駆除するという選択