専業主婦歴20年 浦島ハナコの病院受付奮闘記#34 <ワクチン打った次の日の有給は認めない?>
貴方の職場はホワイトですか? おめでとうございます。そのままずっと腰を据えましょう。
まさかのブラック……? 残念ですがお仲間ですね。
就職活動はしんどい、にもかかわらず採用された職場がブラック企業だったら?
悩んでいる暇はない。さっさと転職しましょう。時間は無限ではないのだから。
私の反省を込めて贈りたい。あなたのこれからの選択の助けになりますように……。
<ワクチン打った次の日の有給は認めない?>
私がパートから社員になる際に、半年経てば有休を10日もらえるという条件があった。
「社員になったら、ハナコさんが有休をきちんと取れるように協力するから。休みの日が祭日と被ったら振り替えられるようにしてあげる」
社員になろうか迷っていた頃、セッカチさんから言われた言葉だ。
しかし蓋を開けてみれば、祭日の振り替えどころか、とてもじゃないが有休を「取りたい」と言える状況ではない事が分かった。
そんな中、驚愕の事実が発覚した。
なんと、例え事前に申請したとしても、コロナワクチンを打った翌日に有休を取ることは認められないというのだ。
ワクチンの副反応で熱が出るか出ないかわからないのに、前もって休もうとする考えがいけないという。
こんなの、あまりにも理不尽ではないか?!
しかもだ。
院長とセッカチさんだけは、ワクチン打った次の日に熱が出たら仕事できなくなると言って、休みの前日にワクチンの予約をしているのだ。
「次の日熱出ると困るから休みの前にワクチン打とうね」
横でこう話すセッカチさんを、私は白けた気持ちで見つめていた。
世間ではワクチン休暇を取らせる会社も出ているというのに…………。
私は早くも社員になったことを後悔していた。
そんなある日、コロナワクチンを打った理学療法士さんが、三人同時に体調を崩して欠勤した。
当然ながら、理学療法士さんが三人も同時に休んでしまったので現場は人手が足らず混乱した。
翌日、そのことに腹を立てた院長が、休んだスタッフの給料を減給にすると言い出した。
これには流石に他のスタッフも納得いかず院長に抗議した。
その甲斐あって、ベテランスタッフは減給とならず有給扱いとなったが、入社半年満たない新人さんには有給はないということで減給となってしまった。
院長は体育会系の「気合いだ、気合いが入っていないから熱が出る」といつも言っていて、熱が出ていても解熱剤飲んで出社することを強要していた。
”体調管理をしっかりしていないから熱が出る”
”例え熱があっても休まず出勤するのが当たり前”
この考えはさすがにどうかと思う。
医療従事者として、まして医者としてあるまじき思想ではないだろうか。
そうとは言え、私は院長に不満を持ちながらも、辛うじて休むことなく出勤し続けた。
しかし、身体はだんだんと悲鳴をあげ始め、あらゆる場所に不調が現れるようになってくる。
肋骨が急に痛み出したり、胸のチクチクした感じや肩の異常な凝りなど、今までに経験した事のない症状が次々と現れ、それが何か月も続いた。
ストレスかな? それともワクチンの影響かな?
このまま働いていたら大病するかも。そんな予感がするほど身体が普通ではなかった。
そろそろ限界かも? ふとそんな言葉がよぎったある日、二年前に辞めたシズカさんから、アコガレクリニックに戻りたいと連絡が来た。
シズカさんは、憧れクリニックを辞めて、3箇所の病院で受付を経験している。
そのどの病院も、院長やスタッフから意地悪くされたのだというのだ。
現在は他院の整形外科に勤務しているのだが、そこの院長は受付をあからさまに見下しているのがよく分かり、そんな職場で働いているのかと思うと気が滅入るそうだ。
受付には社員が三人いるのだが、彼女たちはそれを逆手にとって、仕事をサボってばかりいて、パートの方が沢山働いている。
そんな社員のために一生懸命働くのが馬鹿らしくなったというのだ。
「他の病院で働いてみたら、アコガレクリニックの人たちが良かった事を思い出したの」
「アコガレクリニックに戻れるようハナコさんから院長に聞いてもらえないかしら?」
シズカさんもまた、以前出戻ってすぐここを辞めたサワヤカさんと同じことを考えているようだ。
しかし今回の私は、シズカさんの要求を安易に引き受ける気持ちにはなれなかった。
そして、彼女が辞めてから本日までの経緯・現在の待遇・院長やセッカチさんの言動等を話して聞かせた。
ここに戻るより、今現在の職場にいて様子を見た方がいいと私は考えた。
二年前にここが嫌で辞めたのだから、戻ってくることはない。
私はシズカさんが戻らないことを願っていた。
「よく考えてみて。私は戻ることはお勧めしない、それでも戻りたいと思うのなら、私ではなくセッカチさんを通して院長に伝えてもらうといいよ」
そうアドバイスをして電話を切った。
院長やセッカチさんが、スタッフに対して理不尽な扱いをするのを目の当たりにするにつけ、私は病院への不信感をどんどん募らせていく。