ノリで入籍してみたよ

5月に入籍した。
今年の年明けに初めて会って喋ったくらいの関係性で（マチアプとかじゃないよ）、初めは全く恋愛対象として見ていなかったような人と、あれよあれよという間に交際して結婚した。

私から一方的にアプローチして始まる恋愛ばかりしてきたので、相手からグイグイ来られるのは新鮮だった。結婚についても、どのみち結婚するなら今でも一緒じゃね？的なノリでサラッと決まった。そんなノリでもきちんとアポをとって親に挨拶しに来て、両家顔合わせもセッティングして、私が希望した日に二人揃って時間外窓口に行き婚姻届を出し、指輪も入籍日に間に合わせた。

彼も私と似たような家庭環境で、異性に対してちょっとしたトラウマがあるようだった。子供っぽくて不安定なところがあったけれど、そこも私にとっては通じ合えると感じてむしろプラス要素だった。
彼の心が癒えるなら私が母親がわりにでもなんでもなってやろう。育て直してやろう。と、人生で初めてそこまで思えた。

マリア様になりたいのではない。嫌なことは嫌だと言うし、わがままも言うし、つまらないことですぐ怒るし泣くし拗ねる。それでも夫が私を選ぶのなら私は快く許して導いてやろうと思うのだ。

夫と初めての旅行で大塚国際美術館に行った。私がかねてより行きたいと思っていた場所。好きな絵画の前に立つとこれはねこうでねああでねとウンチク垂れる私に面倒臭がることもなく、へぇ〜すげぇ…とニヤニヤしていた夫は、それ以来私のことを「俺のヴィーナス」「自由の女神」と揶揄しておもしろがる。

俺は花子ちゃんがいなかったら生きていけない、と時々思い出したように呟く夫に、「そうでしょうよ」とふんぞり返る私。それをにやにやと見て嬉しそうな夫。喧嘩らしい喧嘩はまだしたことがない。夫が怒ることは滅多にないし、私が怒っていても夫は言い返したりしないであくまで熱心に私の機嫌をとろうとする。

夫の子供っぽさが私にはちょうどよく、私は私でのびのびとしていられて心地がいい。夫と私はよく似ていて、夫の欠点は私の欠点でもあるので、まあ私も一緒だしなと許せる部分が多い。

今は義実家で同居生活だけど、義父も義祖父も優しく、気をつかってもらっているので、むしろ男所帯で助かったなとすら思っている。義母がいたらこうはいかないだろうな、と思う。ごはんを作ると喜んでくれるので張り合いがある。とはいっても夫か義父が作ったごはんをいただくことのほうが多いが…。
私は母とふたりの生活が長かったし、一人暮らしの時期に暗い部屋でボソボソとごはんを食べる寂しさを知っているから、明るい部屋でテレビを見て笑いながらああだこうだ言い合ってごはんを食べられるのがうれしい。

夫と仕事終わりにお酒を飲むのも楽しいし、レイトショーを見に行って感想を言い合ってるうちに寝落ちするのも楽しいし、趣味が同じなので休日は一緒に趣味を楽しんだり、家を買うならこんなのがいいなとか、子供が女の子だったら〜みたいなもしも話をするのも楽しい。付き合いたてと熟年夫婦のハイブリッドみたいな感じで楽しく暮らしている。
夫は料理も要領よくこなすし、換気扇とか製氷皿とか、なかなか普段気づきにくいところの掃除も率先してしてくれる。夫が手癖で作ってくれる卵焼きがすごく好きだ。

もともと私は黒髪色白で中性的なタイプが好みだったから、茶髪色黒で男の子らしい感じの夫には恋愛感情は抱けないと思っていた。けれど、一緒にいるとずっと笑ってるんじゃないかというくらい楽しくて面白くて、私が泣いていても思わず笑っちゃうようなことを言ってくる夫にどんどん惹かれていった。

転職もしたばかりで、突然がらりと生活が変わり、自分だけの人生ではなくなったんだということに対してプレッシャーも不安もあるし泣きたくなることもある。

だけど、夫より早く家を出て、車の中で朝のラジオを聴いていると、なんだかこういう悩みすらも幸せだなと思えたりするのだ。

いつまでこの幸せが続くかわからないけれど、私は自分で選んだ人生にいつか花丸を付けたい。
そのためにただ今日を、いまを、がんばろうと思う。