本場ディズニーランドのキャストを卒業する話。
大学4年生の時、Disney International College Programに参加し、フロリダにあるWalt Disney Worldで働いた。
ここに至るまでの過程は紆余曲折あり、
幼い頃から将来の夢の欄に
「ディズニーランドで働くこと」と書き続けてきたわたしにとって、ここで働くことはまさに
"夢を叶えた"時間であった。
感動する経験も出会いも数多くあるのだが、
中でも私の心に残っているエピソードがある。
それはキャストをついに卒業し、明日には
日本に帰国するというまさにディズニーで過ごす私の夢の最終日のこと。
友人と最後に夜の花火をみる待ち合わせ時間まで、ここで素晴らしい人達と働けた幸せと、
帰国し久しぶりに家族や友人に会える嬉しさと、
もうここにいることのできないさみしさの入り混じった複雑な気持ち感じながら、わたしはゆっくり夕暮れ時の美しい園内を一周していた。
キャストの仕事はただひとつ。
「Make a magical moment」
訪れるゲストが笑顔になる、魔法のような幸せな時間を提供する。ただそれだけだ。
ただそれだけが、とても難しかった。
「ディズニーだから当たり前のサービスだろう」
を越え、感動を生み出すには、
相手視点と判断力と、少しばかりの勇気が必要だった。
毎日通った風景と出来事を思い出しながら、
1番最初に配属された「Pinocchio Village Haus」
(ピノキオビレッジハウスというレストラン)に
自然と足が向かった。
入口に入るといつものように店内は慌ただしく混み合っていた。
わたしは自分の教育係だったマイクを探した。
何人のも新人を育成してきたベテランで、
「キャストの名札をつけたら、君は魔法が使える
君もmagical momentがつくれるよ」
そう言ってくれた人だった。
運良く店内に出てきた彼を見つけ、
わたしが名前を呼ぶと、彼は笑顔で手を振り返してくれた。
明日には帰国することと、ひとしきり思い出話に花を咲かせたところでわたしはこう話した。
「わたしにかけられてた魔法もとけて、明日には
普通の田舎の大学生に戻っちゃうな(笑)」
すると彼は途端に真剣な顔になった。
「それは、、、違うよ。君はディズニーの魔法は
ここを出るととけると思ったのかい?
そんなことはない。きみはもうその名札がなくても、誰かを幸せにすることができる。
帰国した日常生活の中で、身近な人たちをね。
はじめは魔法が使えるなんてと言われてでた勇気は、君自身の本物の力になる。ディズニーの映画の主人公たちと同じだよ。
だからここで働いたことは一生の誇りなんだ。
本当に、卒業おめでとう!」
たぶん、泣いていたと思う。
最後の最後に大きなものをもらった気がした。
わたしは彼に心の底から感謝を告げ、
友人とみる最後の花火へと向かうと、
長きに渡り一緒に働いていた友人は、
私の顔を見るなりにやりと笑ってこう言った。
「magical momentされたな?(笑)」
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