ゴム手袋をすると、バナナが食べれなくなる
◆風が吹けば桶屋が儲かる。ゴム手袋をすれば・・・
「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざがあります。
関係なさそうなことに影響が及ぶことを表していますが、
どういった理屈でしょうか。
大風が吹けば土ぼこりが立ち、それが目に入って盲人が増加する。
盲人は三味線を演奏するので、三味線が売れる。
三味線を作るのに猫の皮を使うため、猫が減ってネズミが増える。
ネズミが桶をかじるから、桶の需要が増えて桶屋が儲かる。
理屈としては面白いですが、実際はあり得ないでしょう。
「ゴム手袋をすれば、バナナが食べれなくなる」
不思議に思われるでしょうが、これは現実に起こっています。
どんな仕組みでしょうか。
◆ラテックス-フルーツ症候群
ゴム手袋には天然ゴム(ラテックス)のものと、
合成ゴム(ニトリル)のものとがあります。
天然ゴム(ラテックス)の場合に、問題が生じます。
ゴムの木の樹皮を傷つけると、じわっと乳白色の液体が出ます。
これをラテックスといい、ゴムの原材料です。
アトピー性皮膚炎の人や、手荒れの人が天然ゴムの手袋をすると、
手の皮膚のすき間からラテックスの一部が入ってきます。
表皮のランゲルハンス細胞がそれを感知し、ラテックスを外敵とみなします。
これを感作といいます。
問題はここからです。
ラテックスには、多くのたんぱく質が含まれていますが、その中のあるタンパク質(ラテックスたんぱく抗原)がバナナにも含まれています。
そのため、ラテックスに感作された人がバナナを食べると、口の中がピリピリしたり、かゆくなったりします。
これを「ラテックス-フルーツ症候群」といいます。
アレルギーを起こすのはバナナだけではありません。
栗、アボカド、キウイでも同様のアレルギーを起こし得ます。
アレルギーは、ある一つの物質について起こすのが普通ですが、同じたんぱく質を持った別の食べ物に対してアレルギーを起こすことを「交差反応」といいます。
「天然ゴムの樹液」「バナナ」「栗」「アボカド」「キウイ」は、異なるの種ですが、共通のたんぱく抗原を持っているため、交差反応を起こすのです。
◆ラテックス手袋は使わない
交差反応を起こしてしまっては、どうしようもありません。
バナナ、栗、アボカド、キウイは食べれないでしょう。
予防が肝心です。
アトピー性皮膚炎の人や、手が荒れている人はラテックスの手袋を使わない。
これに尽きるのではないでしょうか。
参考文献
矢上晶子、松永佳世子:「ラテックス-フルーツ症候群」,MB Derma. 245: 22-28, 2016.
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