1stフルアルバム「Fool」が出来るまで
先日満を持してやっと、1stフルアルバム「Fool」をリリースすることができました。
ここに至るまでの話をちょっとしてもいいでしょうか。
■アルバムを作ろうと思った理由
今回の『Fool』に関しては「フルアルバムを作るんだぞ!」と意気込んで、一から曲を書き溜めてきました。ミュージシャンとしては普通のことなのかもしれませんが、私にはそれに至る理由があったのです。
前作「CHIME」は2019年の12月だったので、CDとしてはちょうど2年ぶりのリリース。思えば過去作は自主制作EP「Hi Lucie!!!」から始まり、1stミニアルバム「LUCKY」、会場限定EP「exlover」、1stEP「CHIME」と、その時々にあった、ライブでやっている曲やデモたちから自然に「これだろう」という感じで選曲され、ごく自然な流れでまとめた作品でした。それ以降も曲は書いていたし、次も同じように作品を出せる、どこかそう思っていました。しかし、2020年1月、「CHIME」のツアー後にかなこがLucie,Tooを去り、初めて「メンバー脱退」という、Lucie,Tooにとても後ろ向きな出来事が起こったのです。
「傾いたLucie,Tooをどうやって前に向かそうか」
「かなこが居なくなったら終わりだと言った人たちをどうギャフンと言わせようか」
悶々としながら出した答えが、「年内(2020年)にフルアルバム出す!」と言うものでした。
私自身に対しても、かなこが居なくてもLucie,Tooは大丈夫と証明したかったんです。
■2ピースから再び3ピースへ
3つあって完成のパズルのピースが1つなくなった様な状態。3人の良かったバランスを、ナホと二人でどう保つかどう埋めるか、必死でした。それに絶対に活動を停めるのは嫌だったので、新メンバー募集しながら、強力なサポートベーシストかなたま(DIALUCK)に助けられながら、たえず不安ながらもどうにか活動を止めずにいられました。ちょうどその頃(2月)に出来た曲が「ハミング」で、これがきっかけとなりナホと二人で再び「Lucie,Tooを立て直すぞ」強く思えました。
ベーシスト募集も、有難いことにたくさんの応募が来て、気になる方何名かと会ってお話して、その中の1人がヒカリでした。
ヒカリの第一印象は、真っ白なゆきんこの様なとても透明感のある可愛らしい印象でした。話していくと、色んな繋がりがあったり共通の知り合いが居たり、ヒカリにはヒカリのバンド人生で積み上げてきたものがあるんだなと感じ、それがLucie,Tooの一部になったらまた新たな強さを身につけられるかもと思えたのです。そして大きな決め手になったのが、以前ヒカリが別バンドでホーム宇都宮HELLO DOLLYに出演した際、店長の久保さんがヒカリのバンドを絶賛していたのを覚えていたこと、そして私も打ち上げに顔を出していたので、すでにヒカリと出会っていたと言う事実でした。私は運命を感じがちなので、そう言うのに弱いんですよね。笑
初めてスタジオに入った時も、多少のこれから感はありましたが、バチッと合わせてくれて、アー写やライブ等を頭で想像した時にとても合うなと思い、あらためてヒカリに声をかけたのです。
■コロナ禍
そんなこんなしているうちに世間はコロナ真っ只中になっていました。相次ぐイベントの中止や色んな悲しいニュース。ステイホームの時期で、画面越しで見る色んな言葉が、私にはとても重く辛くのしかかってきて、思うようにバンド活動も出来ずイライラする日々が続きました。その中でできた曲が今回の表題曲にもなっている「Fool」です。
本当にこの時期は、色々模索して、バンドとして自分のできることを考え、どう発信しようか、そのことでいっぱいいっぱいでした。
それでも、どうにかこのコロナ禍にできることとして動こうと決めたのが、憧れのかなたまがサポートしてくれたという事をLucie,Tooの一部として記録すること、Lucie,Tooを育ててくれた宇都宮HELLO DOLLYを微力でも助けたいという2点だったのです。「ハミング」をレコーディングしてシングル配信し、そしてその「ハミング」とできたての「Fool」をセッション動画としてHello Dollyで撮影しました。ここでも思っていたのは、Lucie,Tooとしてまだまだいける姿勢を見せよう、ということでした。
■アルバム完成への厳しい道程
並行して水面下ではヒカリとスタジオに入り、既存曲を仕上げたり、出来上がった新曲たちを合わせたり、年内にフルアルバムを出す準備をしてました。一新するためにはとにかくたくさん書いて、その中から厳選してフルアルバムを作ろう、それなら30曲目安で必要だという社長厳令を受けひたすら作り溜めていましたが、なかなか私の中で納得いく様に作れず、徐々に焦りは出てきました。それでも、なんとか自分の中でフルアルバムに入れたい10曲が固まって、その他に今まで作り溜めて勝手にボツにしてた10曲くらい、計20曲ほどを社長に聴かせて、「私はこの10曲でフルアルバムを出したい!」とぶつけたたところ5曲しか採用されず「まだ(足りない)っすね」と打ち返されてしまいました。めちゃくちゃムカついたし腹たったし、己の曲なのになんでこんなこと誰かに決められなきゃいけないんだ!と、当時はとても憤りを感じてました。
5曲しか採用されず、拗ねて少しサボってしまったりもしましたが、まだまだもっと曲を作らなきゃと焦り、焦れば焦るほど納得いく曲も生まれず、できない自分にとてもイライラしていた時、社長から「俺は(アルバムの完成について)ぜんぜん焦ってないっすよ」という思いもよらぬ一言をもらいました。そこで、すごく緊張の糸が解けた感覚がありました。早く(アルバムを)出さなきゃ、証明しなきゃやばいと呪縛に囚われていたのでしょう。そこから「曲を作る」という行為を意図的に止めてみた時期がありました。以前のように自然に曲が生まれ、思うがまま自由に作っていた時のことを思い出し、その感覚をまた呼び起こそうとしたのです。
その頃から年内にフルアルバム出すと言う目標よりも、みんなが納得した形で焦らず本当に良いものが出来たら、出すくらいの気持ちにシフトチェンジしました。今思うと、そうでもしないと自分が保てなかったというのもありますが。
有言実行できなかった自分をもちろん攻めましたが、その分良いものを作ってやろうと言う気持ちが大きくなりました。
余談ですが、最初に採用された曲と言うのは「ハミング」「Fool」「Bedroom」「トキメキ」「スーパームーン」です。
その中で「Bedroom」が採用されたのはとても意外でした。この曲はLucie,Tooの元になったNow,Nowへのアンサーソングで、わかる人はわかると思うのですが、「Thread」をオマージュして作っています。歌詞の内容や世界観は、死。今までのLucie,Tooでは歌わない様なテーマです。でも、この時期って多くの方がコロナで亡くなったり、後は私の叔母が病気になり緊急手術を行ったりして、私の身の回りでも死について考えさせられるような色んな出来事が起きて、出来た大切な曲です。それが社長にも伝わったのでしょうか。
私が激推しした好きな曲も「違うなぁ」ボツにされてしまったり、それが今回特典にもなってる「マイダーリン」なんですけど、今となってはこの曲がもしフルアルバムに入ったら、確かに少し浮いてしまう気もします笑 ただ、私の中でフルアルバムのバランスを考えたり、今までのLucie,Tooを崩さず、新たな一面も見せたいと言う想いだったり、私の気分の浮き沈みが激しい為に、フルアルバムのテーマ、「ポジティブ&ネガティブ」は最初からずっとありましたね。
■まさかの展開
少し前向きになり、ヒカリお披露目ワンマンライブも無事終わり、その頃にできた曲が、「Winter Song」です。この時はフルアルバムに入れるつもりで作って、グループラインにデモを送ったら、季節物に弱い社長が、クリスマスに間に合う様にすぐレコーディングしようと言ってくれ、11月後半くらいにできた曲なので、急ピッチでスタジオで合わせて、レコーディングした記憶があります笑
それはそれでとてもよかったのですが、もちろんフルアルバムからは除外でした(甘くなかった)。
「Winter Song」はカセットも即完したり、大きな反響もあったりとまだまだコロナが猛威を振るう中ではありましたが良い気持ちで年が明けました。しかし、どこかで少しずつメンバーのテンションが下がっていってるのを感じはじめていました。まぁコロナだから仕方ないよね、と落とし所をつけ、私が良い曲を書いてバンドが軌道にさえ乗れば大丈夫だろうと思い込んでいたのです。
3月に入りようやく曲も揃った為、やっとレコーディングができる!ってなり、3人で改めて曲を並べ、レコーディングについての話をしました。しかしその時も二人のテンションはあまり上がってる感じは無く、不安になった私は何度も「これで(レコーディングに突入するけど)大丈夫?」と確認した記憶があります。と言うのも、私一人のLucie,Tooではないので、二人がこの曲たちに納得言ってないのならまた作るつもりもありました。それでも、二人からは「大丈夫」とだけ。その時の話し合いはモヤモヤして終わりました。
私は本当にそういうはっきりしないのが苦手で「言いたい事あるなら言えや!」って思うし、エスパーじゃないんだから人の本当の気持ちなんて、想像こそすれ、完璧にわかることなんて絶対ないんだからと。投げかけてることに対してのアンサーがない感じにまたイライラしましたが、一旦落ち着いて、社長にどうすればいいか相談した所、単刀直入にもう一回電話で聞いてみたら?との言葉に、たしかにシンプルに考えてそうだよなと思い、ナホちゃんに電話し「あの時の話し合いの後すごくモヤモヤして、今の曲に納得言ってないのであればまた作り直すよ」と、なほちゃんが答えやすいよう努めて伝えたら、「あの時は体調が悪かったのですみません。」とのこと。私の考えすぎか!と、その時はすごく拍子抜けし思わず嬉しくなってしまいました。
考えすぎで被害妄想ぎみな性格の私なので、普段からなるべくポジティブに気楽に物事を考えようと意識してるので、「なーんだそんな事かーよかった!じゃあレコーディングしよう!」と、気持ちを切り替え、社長にもそう伝えました。
が!しかし!そんな中、社長がコロナウイルに感染しまさかの重症化!3月いっぱいは動けなくなってしまいました。
そして4月、社長が無事生還し、レコーディングの日程を決める話し合いを社長含めてした所、まさかのメンバー二人脱退宣言。
本当に、悲しみと怒りと呆れと、言葉が出ませんでした。
やっぱりモヤモヤ本当だったんじゃん、直接伝えてもぼやかされたのずるいじゃん!という気持ちや、一度切り替えた私の気持ちも結局また独りよがりだったんかいと。
ナホは、海外に住むと言う夢が日に日に膨らみ、いずれLucie,Tooとして活動出来なくなると言う思いを抱えたまま続けていていいのかと日々葛藤していたとの事。(詳細はHPを見てください)。進んでいくLucie,Tooにたいして自分が足かせになるのが申しわけないという優しさだったのでしょう。ヒカリは、Lucie,Tooに加入した時には高かったモチベーションが次第に薄れていって、気楽なバンド活動がしたいという事でした。
その時はひとまず何も言わず受け止め、また私の中の考えをまとめて、話そうと思いました。
なんかやけくそになり、その足で社長とナードマグネットのライブを見に行ったのですが、案の定嗚咽が出るほど号泣してしまい、メンバーに挨拶もできずそそくさと帰った記憶があります。笑
今思えば、思う様に活動出来ず曲ができない苛立ちがピリピリと二人に伝わり、そう言った想いが気軽に言えない雰囲気になっていたのだと反省しています。
その時の私は、まだ大丈夫。取り戻せると思ってました。どうにかこの曲たちをこの3人で世に出したいという気持ちで、特にナホには彼女の気持ちを取り戻すため、いろんな提案をしました。
コロナ禍で今すぐは海外にいけないので、レコーディングをして、二人の無理のないようにツアーを周り、ナホ海外行ってらっしゃいファイナルをやったらちょっとぶっ飛んでて面白くない?と提案したり、活動頻度は減るけど、Lucie,Tooにはナホが必要だから、海外住んでてもLucie,Tooで居てほしいと伝えたり。
そして何より、コロナ禍で色んなバンドが解散や脱退が続いていて、その流れに乗っかってしまい、また悲しいお知らせを皆んなに届ける事になるのかと思うと、本当に申し訳なくて嫌でした。
その中でできた曲が、Get Backとシワの種です。でもシワの種は少ししんどすぎたので、ライブで一回やって一旦はボツにしてました。
■それでも前を向く
結局、頑ななナホの気持ちを取り戻す事はできず、脱退する運びとなってしまったのですが、オリジナルメンバーが続けて二人脱退し、いよいよLucie,Tooを続けられるのかと不安が大きく、正直この時ばかりは解散も考えました。それでも、頭を過るのは苦しいときに加入を決めてくれたヒカリに、Lucie,Tooとして何も飛躍や楽しい思い出をあげられないなんて、、、と半ば意地のように持ちこたえました。Lucie,Tooはまだまだこんなんじゃない!すごい楽しい事いっぱいなんだから!と。
すると、その楽しい事チャンスがきました。同じレーベルの先輩、ナードマグネットも新メンバーさえこさんが加入し、お披露目ツアーを行うにあたって、東名阪のオープニングアクトをLucie,Tooで考えてると社長から言われたのです。
もう即答で、出たいです!と答えました。このツアーは3本は本当に大きく、おかげでかなり前向きになれました。ナードマグネット先輩には感謝しかありません。サポートドラマーは以前からも交流のあった、ほのちゃん(たんこぶちん)に依頼しました。速攻で電話をし、Lucie,Tooの現状を話し、サポートをしてほしいと伝えたら、喜んでOKの返事。ほのちゃんにも感謝です。。
こうして、ナードマグネットとほのちゃんに、Lucie,Tooの危機を救ってもらい、(私の主観ですが)ヒカリもなんとかモチベーションを取り戻しているように感じました。その時期にできたのが、Tears Flowerです。こちらはCD限定の曲です。その理由は後ほど。
前向きになり心の余裕もできれば、自然と良い曲も生まれるもの。改めて今まで出したLucie,Tooの音源を聴いた時に、初心を思い出し作ったのが「幻の恋人0」と「first song」。この曲たちは1stミニアルバム「LUCKY」に収録されてる曲と物語が繋がってるのです。歌詞を見たり、曲を聴けばわかると思うので、是非どっちも聴いてください。笑
■いよいよアルバムへ
だんだんと曲が出揃い、バンドの雰囲気が良くなったのを感じたのか、社長の「GO」が出て、やっとこレコーディングができる事になりました。しかしこのレコーディングも怒涛で、御茶ノ水のastro studioに1週間の缶詰生活でした。
その中で11曲まるまるのレコーディングはほのちゃんのスケジュール的に厳しい所があり、もう一人最強サポートドラマー、同じレーベルのCALENDARSからTKことタカヒロさんに半分叩いてもらう事にしました。タカヒロさんはHELLO DOLLYでも働いており、Lucie,Too結成当初から活動を間近で見てくれてたので、こちらも快く引き受けてくれ、危機を救ってくれました。
そして、MVにもなっている「シワの種」を呼び起こしてくれたのもタカヒロさんです。一度だけ、宇都宮HELLO DOLLYでのライブでやったのを覚えてくれており、絶対アルバムに入れた方がいいとの激推しで、入れることを決めました。
あのままボツにしなくて本当によかったです。ただ未だに歌うのは少ししんどい部分もあるけど。笑
やっと固まった11曲がこちら
1. first song
2. Fool
3. シワの種
4. Get Back
5. 幻の恋人0
6. スーパームーン
7. トキメキ
8. Tears Flower (CD only)
9. 片思いFire
10. Bedroom
11. ハミング
(片思いFireはヒカリの激推しでアルバムに入れる事が出来ました。笑)
エンジニアは前作「CHIME」に引き続き、レイさん。短い期間だからと言って妥協はする気はさらさらないので、本当に大変だったと思います。今までのLucie,Tooとはガラリと変わった最高な音に仕上げてくれました。
CDのデザインは、ヒカリがインスタで追っかけていたHOHOEMIさん。とてもLucie,Tooの雰囲気と合い、ヒカリナイス!と思いました。笑
そして、CD限定の「Tears Flower」この曲は、ヒカリとほのちゃんを想って書いた曲です。サブスクでなんでも聴ける昨今、改めて一人でも多くの方に、このとても素敵なCDを手に取ってもらいたいと言う想いから、敢えて大切な曲をCD限定にしました。是非、歌詞の細部まで見て下さい。とても前向きな曲です。
■アルバム発売、そして全国へ
アルバムが完成した頃には最初に抱いていた焦りや、はじめに書いたような何かを証明しなきゃという気持ちはなくなっていました。
結果として、2年間の沢山の想いがギューーーっと凝縮された1stフルアルバムが出来たのですから。
正直今までのLucie,Tooとは違いすぎるし、弱い部分を曝け出しすぎて、リリースに至るまで不安でいっぱいでしたが、曲を聞いた皆さんの反応を見てこれでよかったんだと素直に思えました。応援してくれている方々にも日々救われております。
「Fool」の名の通り、いつまでたってもバカで愚か者の私を、そしてヒカリをこれからも宜しくお願いします。
本当にLucie,Tooを終わらせなくてよかったです!
これから、Lucie,Tooをもっともっと強くするべく、この曲たちを引き連れて、Lucie,Too史上初全国16本のツアーを周ります!少しだけ前進、でも相変わらず不安が拭えない世の中ではありますが、強力なサポートドラマーの面々もいるのでお楽しみに!
長くとりとめなくなりましたがこのへんでいったん終わりにします。
皆さんとライブハウスで会えるのを楽しみにしております。