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むかし中国の大理を旅していた時 其の2

 むかし中国の辺境の街、大理を旅していた時、移動だけで五日間とまさに難行苦行の末、辿り着いた大理の街のその歴史は古く、いにしえから交通の要衝と栄えた都で、大理古城や城壁が残り歴史を色濃く感じさせてくれる街でもあります。

 週一度のバザールが今日アルヨ~と、宿の人が親切に教えてくれました。マーケットではなくバザールという響きに、すかさず反応してしまい、バザール、要するに青空市場ですが、なんともシルクロードの交通の要衝を連想させ、まさに旅情を駆り立てる言葉じゃないですか、これは行かなくてはとおもむろにバス停へ向かいました。

 バザールへ向かうバス停には、それこそ今から青空市場で売ろうとする、野菜や果物、ニワトリや卵、ヤギや子豚、衣類や生活用品、バザールへ行かなくても小規模なバザールは、このバス停で完結できるのではないかと思われるほど、様々な人々が集まっていました。

 このバス停だけで、これだけの人数と荷物があるのだから、中国のことだけに、今から来るバスも当然満員だと予想にかたくなく、それにこの人数+食料品+雑貨+ニワトリ+🐐(ヤギ)+子豚を押し込むとどうなるか、考えただけでも背筋が凍る思いです。

 これを私が以前利用していたピーク時の埼京線の中なんかに持ち込んだ日には、好意的に感じる人より、「なんで通勤時間に🐐(ヤギ)を持ち込むんだ!」と、乗客は怒りに震え罵倒されることこの上なく、車内の混乱は避けられず、最寄りの派出所に突き出され、おまけに動物ギャクタイの罪まで擦り付けられ、いつの間にか全国的なニュースに取り上げらえること間違いありません。

大理、昆明 052

 バスを待つ人々の中に、姿勢良く本を読んでいる高校生ぐらいのおさげの女の子がおり、彼女の足元にオスのニワトリがやってきて、なぜかその子の足にしつこくまとわりつき始めました。たぶんニワトリが大好きなトウモロコシでも、足元に落ちていたんでしょう。すかさず二三歩うしろに退きますが、なおもニワトリは彼女の足元にまとわりついて離れません。

 ハハハ、あの女の子、ニワトリと踊っているみたいで面白いなあ~ 何の気なく見ていました。
 すると、彼女は、もう、怒った!目じりを吊り上げ険しい表情をすると、おもむろに息を大きく吸い、鼻孔を人差し指で押さえ、ふん!と掛け声とともに、ニワトリ目がけ手鼻を発射しました。それが見事に当たり、ニワトリはコケーと飛べない羽をばたつかせ一目散に退散していきました。

 一瞬のことで我が目を疑いましたが、あれは紛れもなく手鼻、それも多少粘り気のある鼻汁。いくら何でも女子高生が手鼻をかんで、鼻汁を動く標的であるニワトリに当て撃退するなど思いもよらず、もうこれは神の領域。あの子がオバサンになったら、いったい全体どのような進化を遂げているのか、それがこの国の人口の大半を占めるであろうという事実に衝撃が走り、考えただけでも足が震えます。

 もし、日本の女子高生の足元にニワトリがまとわりついても、キャーと叫びながら逃げるだけでしょう。しかし、そこはやはり中国、たとえニワトリであろうと、売られたケンカは女子高生でも黙ってはおれません。
 彼女は蹴とばす、小石を投げる、痰をからめた唾を吐くという様々な攻撃オプションが考えられる中、瞬時に適切な武器(手鼻)を選択、間髪入れず充填(鼻汁)させ、ものの見事に命中、鍛錬とたゆまぬ努力さらに冷静沈着さの表れと同時に、軍事評論家もうならせ、ゴルゴ13を彷彿させる手際と命中精度はどこからくるのか。さらに「オッサンと手鼻」ならぬ、あってはならない組合せ「JKと手鼻」。

 っていうか~マジ卍 チューゴクすこ、ちょっとやばたにえん?でも今はタピれば、よいちょまる。あざまる水産~てか(って言うか、ほんと中国すごすぎ、ちょっとあり得ない。でも今タピオカ飲んでれば、なんとなく幸せ。有難うございます~てか)、妥協することもできず心の整理もつかず、今まさに目にした光景を帰国してどう説明できるのか、きっと誰にも信じてもらえず相手にもされず、そのうち部屋に引きこもっていること間違いありません。

大理、昆明 035

 今日こそ冷えたビールに出会えますようにと、手を合わせながらレストランに入って祈るようにすぐ聞くのは、この店は何がうまいかではなく、冷えたビールがあるかどうかになってしまい、当然どの店もアルヨ~と二つ返事で持ってくるのは、相変わらず常温ビールだけだけ。
 ここは我々の常識など粉々に砕け散ってしまう中国です。もう怒る気力もありません。

 またもや、冷えたビールに出会えず、がっくり肩を落とし、宿に戻る道をとぼとぼと歩きながら、「こんなことだったら、香港で浴びるほど飲んでくるんだった・・・」と後悔の念ばかりが後ろから追いかけてきます。

 外国人がよく利用するホテルの前なんかに、ヤミ両替屋が立っており「マニチェンジ! マニチェンジ!」、しつこくまとわりついてきます。「そんなに変えるカネなんか、もうナイヨ~」って言っても、なおもしつこく言い寄ってきます。

 あまりのしつこさに、あの女子高生の手鼻を思い出し、もう、怒った!目じりを吊り上げ険しい表情をすると、大きく息を吸い、鼻孔を人差し指で押さえようとすると、間違って自分の鼻の中に指を入れてしまいました。
 しばしもん絶、自分の指にむせびながら、もうどうでもよくなり、いつしか両替屋の声が「アイスビール、アイスビール」と叫んでいるような幻聴に思わず「えっつ!ほんと!」振り返ってしまう自分に対し、なぜかしら一筋の涙がこぼれ落ちてきました。

 なんで大理の女子高生は手鼻ができるのか、なんでビールを冷やしてくれないのか、なんでこんなことしているのか、これでいいのか、と訳が分からず、だけど、冷えたビールが飲みたい・・・ ほんとうに辛いです・・・ と、想いを香港のコンビニの冷蔵庫に寄せると思わず顔がにやけ、いつしか寝入ってしまいました。

大理、昆明 014


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はなじゃ
旅は続きます・・・