はぐれザル“出がらしモン次郎”の野生相談🙉
近ごろ、“お天気屋”に、人間の皆さんから、都会=町のほうまで野生の動物がやって来てこわい、という相談や苦情が寄せられています。
そこで、動物の皆さんの意見もきいてみようと、“お天気屋冬まつり”のイベントの中で、
人生相談じゃなくて、“野生相談”コーナーを
開いてみました。
しかし、動物の皆さんは、スマホもパソコンも、テレビ・ラジオも持ってないので、集まったのは、テルボーの友だちばかり。
PR不足からか、子グマ兄弟、ウリボー兄弟と、
いつもの顔ぶれです。
そこへ、ユキウサギのカップルが、新しい仲間を連れてきたと思ったら、ひどいケガをして、助けを求めて1匹のおサルが、やって来たのでした。
「あっしは、はぐれザルの“出がらしモン次郎”
ってモンです。訳あって群れから離れ、山を飛び歩いてたつもりが、ひと様の住む町へ迷いこんだようで。あっしの姿を見てびっくりした、人間のだんなたちに、棒で突っつかれ、あみをかけられちまいました。あっしは何も盗んじゃいないし、誰も傷つけちゃいないのに。で、結局あみに捕まったんですが、どこへ連れてかれるかわからず、こわくなって、やっとの思いで逃げ出してきたって訳です」
「そこへ、ユキウサギのカップルに“お天気屋の野生相談”をすすめられたと。相談はあとにして、まず傷の手当てをして休んでください」
シャチョー以下、お天気屋の社員たちは、モン次郎君の傷に薬を塗り包帯を巻くと、飲みものや軽食をすすめました。
「人間の皆さんも悪気はないのだけど。住む世界が違うからね。もう町には、行かないほうがいいですよ」
マジメに“野生相談”にのる、お天気屋の社員たち……。
おかげで、昼すぎにやって来たモン次郎君も、
夕方にはいくぶん元気を取り戻し、落ち着いてきたようすです。
「すっかり、お世話になっちまって。これ以上皆さんに、ごめんどうをかけちゃいけねえ。
そろそろ、行かなねえと」
「もうすこし、休んでからにしたら?」
テルボーは、思わず言いました。
そして、お天気屋メンバーたちは、口ぐちに、
“お天気屋”の会社近くの山の森なら、安心して暮らしやすいこと、里山の人たちは町の人たちと違って、サルなど動物を見ただけでびっくりしないし、やさしい人もいることを話して聞かせ、引きとめました。が、モン次郎は、立ち上がり、背中を向けたのでした。
テルボーは、思わず、あとからみんなと食べようと思っていた、リンゴとバナナを紙袋に入れて、モン次郎を追いかけました。
「モン次郎君!これ少ないけど、よかったら、
食べて……」
「何から何まで世話になっちまって、すんません。テルボーのアニキ。ゴチになりやす」
袋を受け取ると、モン次郎の背中は、夕焼けにまぎれて、遠ざかっていきました。
テルボーは、しばらく、それを眺めてじっとしていました。
今回、“お天気屋”のメンバーたちは、野生動物
に、食べものや飲みものをサービスしましたが、人間の皆さんは決してマネをしないでください。野生の動物は、ペットではないので。
そして、野生の動物を見ても、おどかしたり、
近くに寄ったりしないように。人間が野生動物をこわいように、動物も人間がこわいのです。
#絵本
自然と歴史の勉強につかわせていただきます。決して、飲み代宴会代にはいたしません byお天気屋