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ここで買う“気分”。オーボンヴュータン-尾山台

ここで買う“気分”。
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夕方、散歩に出て
涼しくなったので、もう
蚊もいなかろうと
緑の中を気分よく歩く。
スーパーで
夕飯用の豚肉ひとつ買って
ぶら下げながら
家に帰ろうと思う。
ふと、いつもと違う道を歩きたくなり
あそこの洋菓子屋に
行ってみようかと提案する。
「おもしろいこというねぇ」
と、妻。
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妻は、この店が
好きで
何か人にお礼をする必要があるときに
必ず名前をあげる。
相手の好みを考えて
ここにしないことも多いのだが
1番に名前をあげるのだから
この店が好きなのだろう。
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ここは、
本格派伝統フランス菓子という感じ。
ぼくは、味としては
もう少し素直でわかりやすい
なんとかホテルだとか
なんとか洋菓子店というような
フランスというよりは
明治というかんじの
(先代が進取の気性で飛びついて
今では伝統になったみたいな)
洋菓子が好きなので
自分からは、ここはあまり来ない。
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ただ、やはり店に入ると
その素晴らしさに魅了される。
この店は、
外国にいるような気分になる、
もしかしたら
時代も超えていて
これほどの洋菓子店は
外国にも今では珍しいのではないかと
思うほど。
多種多様な洋菓子が並んでいて
見ていて迷う
ワクワクする。
地味だけれど色々な形の焼き菓子
色とりどりの宝石のようなゼリー菓子。
ジャムやキャンディやチョコレートに
パテまで。
折り目正しい何人もいる店員の
白服も
気分を高揚させる。
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ここで買うこと
ここで買ったものを差し上げること
美味しいから、だけではない
“気分”
ただ有名、一流だから、ではない
ここを目指して出かけてくること
ここで迷って
注文して
お金を払って
包んでもらうのを待っている
“時間”
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そんな空気みたいなものが
ちょっぴり
誇らしかったり
素敵だと
ここにくる女性は
思うのだろうなぁと思った。
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そんなことを考えていたら
妻が
「こういうところが好き」
と指を指して話し始めた。
(写真1枚目)
みんな一緒じゃない
大きさや形のちがう銀盆に、
それぞれのお菓子が
それぞれにちがう並べ方がされてる。
直接置いたり
レースペーパーを敷いてみたり
積み重ねてみたり色々。
そういうところが
いいの、と。
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な、るほどねぇ
唸りました。
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乙女で、
マリーアントワネットで、
フランス。

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