百人一首教え方大全(導入期→成長期→熱中期)
必要な情報が必要な方々に迅速に届くように
久しぶりのnote更新となりました。
年度が変わり、身の回りの状況も大きく変わり、何より新天地に越してようやく1年がたって、私も少しずつ新生活に慣れてきたところです。
今年度は、海外からのオファーや企業や団体からの年間での仕事の依頼等も増えてきているため、単発でのセミナーや講演についてはお断りせざるを得ないケースが出てきてしまっています。実際、直近の1か月間で実に10回ほどの講演やセミナーをお断りせねばならない事態になってしまいました。
とはいえ、依頼された内容にはできるだけお応えしたいという気持ちもあり、そこでnoteやvoicyなどを活用して必要な情報が必要な方に届くようにしていくことを決めました。
セミナーや講演会と違い、noteやvoicyならばいつでもアクセスすることが可能ですし、私も隙間時間を活用して発信ができます。
さらに、今まで有料の講演会やセミナーを運営して私に依頼をして下さっている団体や企業の方々の手前、そこでお話しした内容を無料で発信することには抵抗感や引け目があったのですが、noteだけでなくvoicyにもいよいよ有料放送機能が搭載され、この機能を使えば必要な方々だけがそこにアクセスできる仕組みを整えられることが分かりました。
今まで有料のセミナーで話してきた内容や、これから話そう(あるいは本に書こう)と思っている内容は、随時有料ページにて発信し、必要としている方に迅速に届く仕組みを作っていけるようにするつもりです。
「この内容について発信してほしい」という内容があれば、いつでもリクエストいただければと思います。
「百人一首」導入期の指導
SNSを中心に、過去のセミナー参加者の方々からも、「百人一首の指導法について詳しく教えてほしい」というリクエストが多数届いています。
以前に、別のセミナーでもお話ししたことがあったのですが、尺の都合上その会ですべてをお伝えすることはできなかったこともあり、また、別開催でセミナーを企画するのも現実的ではないので、noteやvoicyにまとめてみることにしました。
百人一首という教材に取り組み始めて、はや18年。
私は初任の頃からこの教材に取り組み続けてきました。
以前のセミナーでも話しましたが、どんなに荒れたクラスであったとしても、この百人一首という教材があれば必ず立て直せるという自信をもつに至るほど、この教材の力を価値を感じてきた18年でした。
その間、百人一首の指導の仕方も毎年試行錯誤を重ねながら、よりよい形を目指してブラッシュアップを続けてきました。
この教材は普通に導入するだけでも効果はあるのですが、指導にひと工夫・ふた工夫を加えるとその効果は激増します。
今回は、その辺りの情報を中心にシェアしていきます。
まずは、導入期の指導。
はじめは、趣意説明が肝心です。
「何のためにそれを行うのか」ということについて、スッキリストンと理解・納得が得られることが大切だということです。
通常、私は次のような学級通信もしくは学年通信を活用しながら、趣意説明を行っていきます。
(テキストだけでは伝わらない語感や語り方、さらにルール説明の仕方のコツについては、セミナーで紹介している内容の為Voicyで触れました)
さらに手堅く趣意説明を行う時には「学習指導要領との関連」に触れたり「実際の先輩たちの映像」を見せた時もありましたが、要は「なぜ百人一首を行うのか」についての納得が生まれるのが大切ということです。
その「納得」は、子どもたちにとって、という側面もありますが、保護者の方々や職場の同僚たちにとってという側面もあります。
私が最初に教員として勤め始めた奈良県の学校にはすでに百人一首文化が存在していましたが、その後引っ越して勤め始めた札幌の学校には百人一首文化が存在しませんでした。
こういう状況の中で、新たな動きとして百人一首を始める際にも「趣意説明」が大切になってくるということです。
そして、いよいよ実際に百人一首を始めていくわけですが、大きな成長をもたらすためには、次の2つの工夫が必要です。
①読みの工夫
②仕組みの工夫
特に大切なのは、①です。
仕組みも大切なのですが、私は長年百人一首に取り組む中で、①だけでも大きな成長や熱中状態を生み出せることが分かってきました。
それくらい、読みの工夫をすることは重要な意味をもちます。
成長期の指導に置いて最も大切な「読みの変化」
私は、ざっと7つの読み方の工夫を活用しています。
下の句全体・2回繰り返し読み
下の句の頭・強調読み
上の句の頭・強調読み
上の句全体・緩急読み
上の句全体・表彰読み
上の句の後半・省略読み
上の句下の句・通常読み(大会仕様)
このあたりは、音声で聞かないと分からない部分があると思うので、深く知りたい方は実際のセミナーかvoicyを活用してご確認ください。
尚、全ての読み方に共通することとしては、試合がある程度進み、残りの札が少なくなってきたら「読みを徐々に早めていく」ことがあげられます。
20枚あったスタート時点と、残り5枚になった段階では札の取りやすさがまったく違います。
後に行けば行くほど読みを少しずつ早めていくことで、試合に躍動感とほどよい緊張感が生まれるようになります。
尚、最終段階の大会仕様の読みでは、こうしたスピードの緩急は一切つけずにあえて平坦な読みを行います。
この段階に来ると、むしろ淡々と読み進める方が、試合の緊迫感が一気に高まるからです。
このようにして、子どもたちの成長具合や実力に合わせて、微妙な読みの変化をつけられることが、成長期においては特に大切です。
さらに、子どもたちの確かな成長が感じられるようになったら、その様子を通信で伝えるとよいでしょう。
実際の通信をもう一つ紹介します。
誰も百人一首をやっていないところから、少しずつ熱が他学年や他学級に伝播していき、ついには学校予算で札が購入されるようになって、校内からチャンピオンやメダリストたちが誕生するまでになりました。
札幌での最初の種まきからここまで、およそ3年かかりました。
たった一つの教材が、確かな教育文化を生み出し、大きなうねりを引き起こすまでに至ったのです。
その熱は、新天地の愛知でも同じように着実に芽吹き始めています。
「熱中期」に至るための5つのしかけ
成長だけでなく、教室に熱中を生み出すためには、次の5つを行うことも効果的です。
①バッジテスト
②コテンパン体験
③札落とし
④対外試合
⑤公式戦
順に説明していきます。
①バッジテストとは、簡単に言うと、「級表」のことです。
フィギュアスケートには、「アクセルジャンプが出来たら〇級」のような明確な指標がありますし、柔道や空手にも「帯制度」があります。
要は、「自分が今どの程度のレベルにいるか」ということが分かることで、次なるステップへの意欲が生む仕組みを創り出すということです。
これを、私は百人一首でも応用しています。
「1首覚えたら〇級」「全て覚えたら〇段」のようにして、クラスの子たちの意欲が持続するように難度の傾斜をデザインするのです。
これがピタリとはまると、さらに熱中体験が生まれやすくなります。
②さらに、先の通信でも紹介したように、何度か「コテンパンに敗れる」という体験もまた熱中を生むことに一役買ってくれます。
最初は全く勝てなかった相手に、少しずつ実力が近づいてくると、「何としても勝ってみたい!」と奮起する子が出始めるということです。
③札落としは、駒落としをもじったもの。
つまりはハンデ戦です。
将棋でも実力の高い人が駒を落として対戦するように、すでに大会で入賞した子たちには札のハンデを設けることがあります。
ただし、この制度は採り入れることがやや高難度です。
ハンデに抵抗感を示す子も少なくないので、上手に趣意を語り、抵抗感を前向きな気持ちに昇華させてあげることが重要です。(この辺りの語りもVoicyには収録しました。)
④の対外試合では、学級の外に対戦相手を求めます。
他の学級や、他の学年で百人一首をしているクラスがあれば、互いの「交流戦」と称してクラス対抗の試合をするということです。
学級の中だけでも熱中は生まれますが、学級の外に出ると、この熱がさらに加速します。
⑤そして、学級の外だけでなく、学校の外に出て戦うのが公式戦です。
相手は別の学校の子どもたちなので、当然面識はありません。
そうした特別な空間で戦うことは、子どもたちの熱中体験を一層後押しします。
教室に豊かな成長体験や圧倒的な熱中体験を!
最初にも書いた通り、初任の頃から一貫して取り組み続けている数少ない教材の一つが、この百人一首です。
クラスの仲が良くなり、教師の指示に自然と子どもたちが耳を傾けるようになり、さらにたくさんの成長体験や熱中体験が生まれていく。
皆さんの学級でも、そうした豊かな体験が生まれていけばという思いでこの記事を書きました。
必要な方の所に届けば幸いです。
尚、Voicyでは音声でのサポートだけでなく、今回は「アフターフォロー」もつけることにしました。放送を最後まで聴いてくださったら分かりますが、実際に百人一首を実施してみてお困りのことがあれば私に直接質問ができるようにしてあります。ご希望の方はそちらもご活用ください。
サポートして下さる皆様、いつも本当にありがとうございます。いただいたサポートは全てクリエイターとしての活動費、または発信にかかわる情報収集費等に使わせていただきます。サポートして下さった皆さんには、いずれ直接どこかでお礼をお伝えしたいと思っています。