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せんばさ
一人旅もいい加減飽きたので、私は雑貨店に女性陣を迎えに行くことにした。
しかし、まるしーはまだ買うものを悩んでいるようだった。
もう一度一人旅に出て本屋でも探そうかと思っていた時、ぬいぐるみの群れが私の目にとまった。
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これはリラックマといわれるキャラクターだ。
子供たちに絶大な人気を誇る、とてもかわいいクマのぬいぐるみである。
実は我が家にもこいつの枕がある。テレビを見ながらうたた寝をする時にちょうどいい。
それにしてもこのクマの表情を見てもらいたい。なんか「ぽやぁん」として癒されるような気分になるだろう。
マンガで表現されるクマのキャラクターには、他にプーさんなどもいる。
それも実にかわいらしいので、子供にとってはクマというもののイメージがよくなっていることだろう。
しかし、実際のクマは全然違う。
最近は人里に下りてきて、作物を荒らしたり人間に危害を加えるやつまで現れている。
実物を見たときにはじめて、人はその恐ろしさを知るのだろう。
本当のクマとは、漢字書いた「むうつきひーひ、ちょちょんがちょん」の熊なのだ。
私の頭の中は、山中のクマとなって、冬眠の準備をしていた。
冬眠に入るにはあらかじめたくさん食べておかないといけない。
私たちの場合は変温動物とは少し違うのだ。哺乳類のつらいところでもある。
この辺にあるどんぐりや木の実はすべて食べつくしてしまった。
一応雑食ではあるが、むやみに小動物を食べようとは思わない。こうなったら人里にでも下りてみようか・・・。
しかし、私は人間が怖いのだ。彼らは鉄砲を持っている。私の仲間もずいぶんその魔の手にかかり死んでしまった。
そして彼らはそれを歌にまでして私たちを馬鹿にしているのだ・・・。
~それを猟師が鉄砲で撃ってさ
煮てさ
焼いてさ
食ってさ
・・・せんばさ。
せんばさ!?
私はその言葉の意味を想像しただけで身震いしてしまった。
殺されて食われる以上の恐ろしいプレイがそこには存在するのだろうか・・・。
と、その時私の近くで物音が聞こえた。
見るとそこには猟銃を手にした人間が数名、私に近づいてきているではないか!
あんたがた誰さぁぁーーーーっ!!
慌てて穴を掘り始める私の尻に麻酔弾が打ち込まれる。
意識を取り戻した時、私はコンクリートで作られた箱の中いた。
鉄格子の向こうには多くの人間が私を見つめている。
それは殺されて食べられるよりも恐ろしい「せんばさ」な状況であった。
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