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まつもと to なかい to あんた誰?
連日ワイドショーやニュースを賑わせている「仲居くん、フジテレビ問題」
本人が記者会見しないのだから、本当のことなんて誰もわからない。
でも、そんな話を毎日聞いていると、タレントへの上納システムはあるのだと思わせる。
私の頭の中は、テレビ番組の敏腕プロヂューサー色元となって松本と仲居の飲み会に参加していた。
「松本さん、中居さん、お久しぶりです」
私が声をかけると、並んで座っていた二人がこちらを向く。
「いろいろ騒ぎがあって大変だったでしょう。今日はゆっくり楽しんでくださいね」
私が二人に近づいてゆくと、松本が目じりを下げて微笑んで答える。
「おお、お前か色元。元気でやってたか?」
「おかげさんでなんとかやってます。松本さんは今何をしてるんですか?」
「テレビには出てないけど、実は番組の構成はしてるんだよ」
「ああ、なるほど、そういえばあの番組・・・」
やはりこの男がいないと成り立たない番組もあるのだろう。
「おい色元、おれもテレビ出れねえからよ。なんか仕事くれよ」
中居が横から入ってきた。
私はこの男に借りがある。この男の口利きで若くしてプロヂューサーにまで上り詰めたのだ。
「仲居さん、今騒がれてるのに、こんなとこにいて大丈夫ですか?」
「松本さんから誘われたr断れねえよ。お前も来るっていうしな」
「仲居さんのおかげでここまでこれたんです。テレビから去ってしまって寂しい限りです」
「もう俺たちなんていらねえんじゃねえの。次期社長の噂もあるって聞いたぞ」
「勘弁してくださいよ、これからもまたお願いしますね」
「今日はお二人に新しい番組のアイデアを見ていただきたくてお呼びしたんですよ」
謹慎状態でテレビからは遠ざけられている二人の目が光った。
「おい、それは復帰したときの仕事ってことか」
松本が身を乗り出してくる。
「もちろん、お二人がメインの番組です」
「じゃあ二人のトーク番組か」
「いえいえ、ゲストの女性を呼んでいろいろ楽しいことするんですよ」
「どんなことするのか教えてよ」
中居も乗り気になっている。
「『まつもと to なかい to あんた誰?』ってタイトルです。じゃあこれからやってみましょう」
奥に案内されて薄暗い部屋に入ると、黒く丸い台の上に着物を着た女性がいた。
後ろ姿しか見えないが、金髪のショートカットで背の高い、二人とも好みのタイプだ。
「彼女が乗っているのは回転テーブルです。これからお二人に思い切り帯を引っ張っていただきます」
「あれえー、お代官様おやめください・・・ってやつか」
松本の顔に笑みが浮かぶ。どうやら喜んでくれているようだ。
「二人で思い切り引っ張ると、女性が高速で回転します」
「それでどうなるの」
仲居も興味津々だ。
「この女性の名前を当ててもらいたいのです」
「やってみるべ」
二人は帯を握って息を合わせる。
「せえのっ」
思っていたよりも帯は短く、二人は勢い余って部屋の角まで飛ばされる。
薄暗さと距離があるため顔はさらにわかりづらい。
高速で回転し続ける女性の、赤く分厚い唇が苦しさで開く。
人差し指を振りながら、彼女は叫び続けるのだった。
「どんだけ、どんだけ、どんだけ、どんだけー。背負い投げぇー」
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