一個
住んでいるマンションの駐輪場に、治安の悪い自転車がある。
いつも左端に同じ向きで停められており、ずっと使われていない雰囲気で佇む赤い折り畳み自転車。
そしてカゴの中にはなにかしらのゴミが入っている。
ある時はスタバのカップ、またある時は炭酸飲料のペットボトル。
たまにカゴに何も入っていない時があり、持ち主なのか優しい他人なのかが捨てているようだった。まるでゴミ箱のような自転車だった。
最近は何も入っていないなぁと思っていた矢先、仕事から帰ったある日、パックの唐揚げが入っていた。
え?唐揚げ?まだ中身入ってるじゃん!
私も近所のスーパーでよく買ってたあの唐揚げじゃん!思わず立ち止まってしまった。
そして次の日の朝、カゴの中はゴミで埋め尽くされ、いまにも溢れそうになっていた。
あぁ、すごいことになってるな…。
捨てている人の家にゴミ箱はないのだろうか…?
管理会社に連絡すべきか…。
誰かしてくれないかな…。
帰宅したときにはゴミは溢れ出すどころか地面に散乱しており、唐揚げは中身だけがなくなっていた。
そしてついに管理会社から注意喚起の通達文がポスティングされた。
常識的な住人が連絡してくれたんだろう。
心からありがたいと思った。
一個ってこわいな。
たかが一個と思っても、それが二個、三個、そして溢れ出してしまう。
だらしなさは、かえって無駄な労力や問題を生み、結果的に大きな損につながる。
今日の夕方、近所のスーパーで例の唐揚げを見た。そっと目をそらした。
ゴミを無視し続けた罪悪感と、何かしらの動物が地面に転がった唐揚げを貪り食っている想像をしてしまい、胸焼けしそうになった。
しばらく食べれないかもしれない。
あと、今朝ねぼけて「おろしたてのレインコート」の記事を消してしまった。ちょっと気に入っていたので悲しい。