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「AIエージェントで誰でもエンジニア!」と浮かれている人に伝えたい、実際に英単語アプリを作ってわかった本音
はじめに
最近、「AIエージェントがあれば誰でもエンジニアになれる」
「Cursor最高!」
「Cline最高!」
といったキャッチーな言葉をネット上でよく目にします。
プログラミングをほぼ知らない人でも、こうした自律型のAIコーディングツールを使えば、あっという間にアプリを完成させられる──
そんな夢のような話を聞くと、「ついに新時代がきた!」と期待してしまうかもしれません。私も、そうです。
しかし、実際のところはどうなのでしょうか。
私はエンジニアではありません。普段エンジニアさんにディレクションをする立場ではあるので、プログラミングにまったく縁がないわけではありませんが、ブラウザでアラートを出すのも都度ググらないとできないレベルです。
しかしながら今回、AIエージェント(主にCursorとCline)を活用し、英単語学習用のウェブアプリを作ることができました!
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実例がないとわかりにくいと思うので、できたものをNetlifyにアップしています。
※ただバグが無いとは言ってない
結論から言うと「全部おまかせでパッと終わる」なんてことはない、と痛感しました。
一方で、ゼロから一人で完成まで持っていけたのも事実。
ものすごく便利だけれど、それなりに大変でもある──
そんなリアルを本音で語りたいと思います。
アプリの概要と動機
私が作ったのは、英検2級程度の英単語を大量に覚えるためのウェブアプリです。約2700語を30カテゴリに分け、各カテゴリをさらにコースとして細分化。それぞれに約10単語ずつ振り分けて、コースごとに単語を覚えることができます。
実際のリング式単語カードをイメージし「わかるので次へ」 or「 わからないので解説を見る」というシンプルな構成。それをひたすら繰り返します。
学習の進捗は、本来ならサーバー側のデータベースで管理したいところですが、今回は個人用なのでローカルストレージで済ませています。
なぜこんなアプリを作ろうと思ったかというと、AI時代で英語の重要度を日々痛感してるからです。
毎日大量の英語に触れますが、いちいち翻訳を通すのが面倒で面倒で。語彙不足を補うには、ひたすら単語を覚えるしかないのです。
そこで毎日、通勤中にChatGPTに単語問題を出してもらっていたのですが、正直めんどくさい。作問や解説はとてもよいのですが、UIが使いづらい。
そう感じたので、今話題の「自律型のAIコーディングツール」を使えば一気に作ってしまえるのではと考えました。
使用したAIエージェントと特徴
今回の開発に用いたコーディング用AIエージェントは主に2種類です。
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どれが良いかは知らないのでプレーンなのにしました
・Cline:コードエディタ「Visual Studio Code(以下、VS Code)」の機能拡張。自律型で指示に従いファイル作成からほかファイル参照、コード作成、検証まで勝手にやってくれます。LLMを選択できDeepseek v3という格安中華LLMと連携できます。
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・Cursor:VSCodeをフォークして作られた次世代エディタ。豊富なAIアシスト機能が売り。課金プランがありClaude 3.5 Sonnetと連携できて優秀。2週間有用モデルが無料で試せます(上位モデルは使用回数上限あり)
https://www.cursor.com/
CursorはClaude等の上位モデルの無料リクエスト枠が限られていたので、必要な場面だけ集中して使うようにしました。
Clineは連携したDeepseek v3 が2月末までキャンペーン中でとにかく安価です。膨大な数の作業指示を投げてもわずか数円レベルのコストですみました。
ただ、使い続けると回答が遅くなったり間違いが増えたりする傾向があり、修正ループにはまることも少なくありません。
Cursorは比較的正確にコードを提案してくれる印象ですが、一度に大きく修正を依頼すると別の部分がおかしくなることもあり、結局こまめな指示とテストが必要でした。
個人的には最初ざっくりとした指示でClineを活用し、また繰り返しの地味な作業やCSSの修正はClineが主に担当。Cursorは主要な機能を仕上げる部分で活用していましたが、開発後半はCursorばかりを使う流れになりました。
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このレベルで活用できるなら日々課金しても良いと思いました
実際に感じた「冷水ポイント」
「AIエージェントを使えばすぐ完成!」という言葉を真に受けている方は申し訳ないです。それは言えない。
決して楽ではありませんでした。何度投げ出しそうになったことか。
その間、毎日3時間以上格闘し、結局完成までに4日ほどかかっています。
まず、エラーが出たらAIに「直して」と言っても、新たなバグが生えてきます。その修正をすると、今度は別の部分のコードが壊れてしまう。ClineとCursorに責任をなすりつけ合いながら、修正を繰り返すうちに、どんどん本来のコードが破壊されていく。ただただ見守り「save」ボタンを祈りながら押す日々でした。
全体を見る力が私がないので、場当たり的な修正を繰り返す時間がとにかく多かったです。
それでもすごいと思える理由
一方で「私レベルのエンジニア力でも完成まで行き着ける」のは衝撃的でした。コード全体を把握していなくても、ある程度プロンプトを工夫してAIに依頼すれば、HTML、CSS、JSがまとまった形で生成され、なんとか動かすところまで持ち込める。ダッシュボードの円グラフが一発で動いたときは感動モノでした。
本来、初心者がウェブアプリを自作するなら、少なくとも基礎的な構文やフレームワークの使い方を学ぶ段階が必要です。しかしそれらの作業を何一つすることなく、なんなら今回は結果的に1行もコードを書いていません。
それでいて、デプロイまでできてしまったのは大きな進歩だと感じます。「誰でもエンジニア」とは言い過ぎかもしれませんが、「エンジニアを職業としてない人間でも一応動くものを作れる」というのは2025年1月の時点で事実です。
英単語2700個の一括生成
英単語学習アプリを作るうえで地味に大変なのが、単語リストと解説文をどう用意するかでした。そこで「ChatGPT o1」に、まず重複しにくいカテゴリを30種類挙げさせ、品詞バランスも指定しながら3000個の単語候補を生成させました。
※300個ほど重複してたので削除して2700個にしました
※それでも3000個近くの単語を1回のやり取りでリストアップできるのはすごい
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名詞50%、動詞25%、形容詞15%、副詞6%、
その他(前置詞・接続詞など)4%となりました
さらに解説文も、Dify(ノーコードAIアプリ構築ツール)でGPT 4o-mini APIを使い、Python経由で順次リクエストを投げて生成しています。
このようなツール作りでもCursorやClineは大活躍してくれます。
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出力をJSONに限定できて便利だ!
ただたまに「```json」「```」で囲った文字列が返って来るのが混ざる!
ただ、JSON形式で出力させたいのに、余計な改行や特殊文字が混じることがあり、そのたびに対処法を考える必要がありました。最終的にはプロンプトで「不要な文字列を入れないでほしい」と明示し、返ってきたデータを再度Pythonに整形させるという手間をかけて、何とか正しいJSONを組み立てています。
ClineとCursor、両方使うわけ
両方話題になってたので、比較検討のために同時に使ってみました。
Cline with Deepseel v3 はとにかく作業量が多くても低コストで試し放題というメリットが大きいです。
構造の大枠をざっくりと実装させる段階では、Clineに「必要なファイルを全部作って」「ダミーデータで動作確認して」といった雑多な作業を投げ続けました。
もちろんエラーも多発しますが、何度もリトライしても出費を気にしなくていいのはありがたかったです。
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逆にCursorは無料枠が限られてる分、機能の詰めや難しいバグ修正をお願いするときに役立ちました。Cursorは「codebase」機能で関連ファイルを一括して把握してくれるので、局所的な修正を頼んでも大崩れしにくい印象です。
これは来月は課金だな、と即断できる超スグレモノでした。
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ただ、過信は禁物で一気に複数機能を組み込もうとすると、意図しない箇所をガンガン消してたりします。こちらがわからに事をいいことに。
そんなときは、やはりコミット履歴やバックアップをきちんととっておかないと困る場面も多いです。
「誰でもエンジニア」ではなく「根気強い人ならエンジニア風」
開発を通じて感じたのは、「AIエージェントは相当強力なアシスタントになるが、雑な指示だけで全部を完成させるのは難しい」ということです。
何度も仕様確認をし、エラーが起きたら対処法を試し、別のAIに丸投げして比較し、というプロセスで、なんとか私は乗り越えました。
また、やたらとバグる場合、AIがやり取りを重ね内部的に混乱している可能性もあります。ときにはセッションを切り直したり、別のツールに乗り換えたり、ChatGPT o1に「もう私にはあなたしかいません」と依頼する必要がありました。
人間のエンジニアでも同じかもしれませんが、「疲れてきたら頭をリセットする」感覚がAIエージェントにも必要だと感じました。
使いこなすのは大変だけれど…
正直、私がコードを完全に理解していればもっと早く進んだはずです。非エンジニアのため、修正内容をAIに丸投げするときも「これでいいんだよね?」と確認できず、あとで発覚する不具合に何度も苦戦しました。実際、短期間で完成したとはいえ、無駄な遠回りが多かったかもしれません。
エンジニアの方が使えば、適切なサポートと長年の経験で、私とは比較にならないスピードで実装ができるのではと感じます。
これからの展望と注意点
今回の英単語アプリは、まだ見た目も地味ですし、バグや不整合も完全には消えていません。
さらに言えば、ほかの端末との学習進捗共有ができないので、サーバーサイドも導入して本格的なDB管理をしたいところです。もちろんそこまでやると、また大変な修正祭りになるはずですが、少なくとも今回の経験で「やればなんとかなる」という感覚は得られました。
一方で「AIエージェントがあれば一瞬で完璧」に過度な期待も抱がずにおこうと思いました。少なくとも2025年1月の段階では。
作るレベルにも当然寄りますが、大量の指示、何度ものバグ対応、途中の仕様変更で起きる混乱など、実際には小さな沼がたくさん待ち受けています。新時代のワクワクはもちろんあるけれど、「全部丸投げして終わり」にはならない。
そこを最初から理解しておくと、変な挫折感を味わわずに済むと思います。
同じように始めてみたい人へ
もしあなたがプログラムに苦手意識があっても、とりあえずAIエージェントを使って簡単な開発を体験してみる価値は大いにあります。
全体の仕様や目的をしっかり考え、こまめにプロンプトを作成し、何度もテストする覚悟さえあれば、形になる可能性は高いです。
ただし、つまずいたときに自力で原因を追う努力や、実装方法を変えたりという柔軟性が必要です。自分の頭で考える部分をゼロにするのは不可能なので、「半分は自分がディレクションしている」という実感を持ちながら、AIエージェントと対話を重ねるのがいいですね。ちょっとできるエンジニアが隣にいる、そう思えるだけで人生が、ちょっとHAPPYに思えます。
まとめ
とりあえず騒がれてるので、使ってみたというのが今回の正直なところです。初回とはいえ、実際に使ってみて見えてくる視点が色々ありました。
英単語ウェブアプリもまだまだ改良の余地があり、仕様追加やUI向上を試しながら、本来の目的である英語学習を続けていければ良いなと思います。
デバッグをしすぎた結果、かなりの単語が覚えられました。そんな学習法もありですね。
DBをちゃんと導入して複数端末で同期させる機能を付けたいし、発音機能を組み込んでリスニングにも活かしたい。こういった欲望が次々に出てくるのも、「自分で作ったからこそ」モチベーションが湧くからでしょう。
やがてAIエージェントの性能がもっと飛躍的に高まれば、バグも修正も一瞬で済むようになるかもしれません。
しかし、そこで必要なのはやはり「何を作りたいか」というアイデアと方針を明確にする力です。いくらAIが優秀でも、必要なことを正しく伝え、最後に仕上がりをチェックするのは人間であることは、しばらくは変わらないでしょう。
そう考えると「今のうちにAIエージェントと対話しながらものづくりを経験しておく」ことは将来的に役立つ気がしてきました。
「全部丸投げで楽勝」では決してありませんが、十分に実用レベルまでたどり着ける可能性があるからこそ、「ちょっと苦労しても試してみようかな」と思えるのではないでしょうか。
私もこれからも試行錯誤を続けて、いずれさらなる学習アプリや別ジャンルのプロダクトを作ってみるつもりです。
AIエージェントの力は本当にすごい。ただ、一足飛びにすべてを解決してくれるわけではない。そこを理解したうえで使いこなし、非エンジニアでも「作りたいものを作れる」喜びを味わえる人が増えればいいなと、心から思います。
ってo1が言ってました。