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TRPG未経験でPathfinderに参入して丸2年のキャンペーンを完走した話

2022年某日。
ありがたいことに、家族の友人から「自分がGMをするのでPathfinder RPGをやってみないか」というお誘いをいただいた。
私にとってTRPGと言えば最近よく聞くのはクトゥルフってやつ? 昔からあるのはD&Dだっけ、速水螺旋人さんが漫画で描いていた……ぐらいのふんわりとした認識だったが、二つ返事で参加表明をした。
この記事では、PathfinderどころかTRPGをやったこともない筆者が「Pathfinder RPG:Rise of the Runelords」を2年もかけて遊ばせてもらった感想をつらつらと述べてゆきます。

※Pathfinder RPGとは何ぞや、という話は省きます。
※キャンペーンのネタバレが少しだけ含まれると思いますので、Riseをいつか遊ぼうと思っている方、今遊んでいる方には非推奨です。


キャラメイク


取っ掛かりとしてはやってみたいクラス(戦士、魔法使いなどのジョブ的なもの)と種族(人間、エルフ、ドワーフなど多種多様)、後はキャンペーン特徴と呼ばれる、その物語にちなんだキャラクターのちょっとした背景設定を決めると良いとのことだった。

ちょうど一緒にキャンペーンを遊ぶ家族はウィザードをやるということだったので、アタッカーでダメージ出すのって気持ち良さそうだし前衛職をやることにしよう。
自分は絵を描くのが好きなので、PC(自分のキャラのこと)も設定が固まれば立ち絵を描いてみたい。そうなると、鎧とか着込んだタイプは作画コストが高くて面倒臭いな、というクズの思考が働いた。
後は、たまたまその時にテイルズの最新作を遊んでいたのだが、そこに出てくる”ロウ”というキャラクターの衣装デザインに感銘を受けた。
何だそのスリットは。そっか。モンクってスリット作れるんだ。軽装を強いられるのが逆に(作画コスト・お楽しみ露出的に)良くないか?
かくして邪な気持ちからクラスを”モンク”にすることにした。
種族はスラッとしてて何か絵になるからという理由でハーフエルフに。

流石にキャンペーン特徴はPCのクラスに向いたものを選びたいな、と素人なりに考えあぐねて”巨人殺し”を選択。
今思うとこの選択がキャンペーンを終えるまであまりにも多大な影響をキャラクターに与え過ぎたのだが、ある意味面白かったので後悔はしていない。
能力値はダイスを振って決めた。初めてTRPGのダイスを振ったけれど妙にワクワクする。
残りの細かいビルドはGMさん達にやっていただいた。

Pathfinderはデータゲーだと思う。
電源ゲームならばゲームソフトが内包し自動処理してくれる膨大な量の各種データが、Pathfinderは無料で公開されている(その上、それを有志の方々が日本語訳してくれている)。
その中から”なりたいキャラ”になる為にデータを組み合わせてビルドするのは、慣れてくればカスタマイズ性が高くて楽しいが、素人にはハードルが高過ぎる。
GMさん達は恐らくはそれを分かっていたので、まずは使いやすく強い土台を組んでくれたのだ。大変にありがたいことである。
(恐らくポケモンで言うとコジョンドみたいな性能になるよう組んでくれたのだが、キャンペーンの後半では筆者が筋肉信者と化しDEXではなくSTRばかり伸ばしてしまった)


人物としてのキャラメイク


キャラクターの年齢性別、信仰、アライメント、外見的特徴、経歴や性格などはビルドというより好きに妄想して決めて良いようだった(クラスにより信仰やアライメントが縛られたりはする)。
この辺もほとんどダイスで決めることも出来るのでそれもまた一興だが、せっかくなので筆者は色々妄想した。

その人物の誕生〜冒険直前までの経歴を考えるのが、各設定を考える上でもやりやすそうだ。
モンクなので人生の中で厳しい修行を積んだ比重は多いだろう。
寿命が長めなハーフエルフであるから、その辺は何とかなるが、ハーフエルフはその出生から複雑な内面の持ち主も多いらしい。なるほど。
後はキャンペーン特徴の”巨人殺し”だったか。どれどれ……

〔Giant Slayer〕/巨人殺し
あなたの家族の村は、ヴァリシアの荒野で巨人に略奪され、くすぶっている廃墟しか残されていませんでした。あなたの村が破壊された後、あなたの家族はそのような悲劇が二度と起こらないように巨人との戦いのために訓練を積みました。(以下略)

良く言えばドラマチック、悪く言えば重すぎるバックボーン。
キャラメイクに取り掛かる前、重すぎる設定だと普通の現代人である自分が演じるには感情移入が難しいし避けた方が良い、と考えていた筈がどうしてこうなった。
まあ良いや、こうなりゃ思い切り設定に組み込んでしまうしかない。
そうして出来たのが大体こんな感じのPCである。


リンファ・シュタインハイル
36歳のハーフエルフ(人間でいうとハタチかそこら)。
父は変わり者のエルフ。母は人間で元モンク。
排他的なエルフのコミュニティからは家族ごと拒絶されて、ほど近くの小村で慎ましく暮らしていたが巨人が襲来。
父親が犠牲になり母娘で命からがら遠く遠く東の国へ。
母親がモンク修行をしていた寺院で自身も二十余年ほど修行を積む。
一人前のモンクにはなれたが、巨人に受けた傷に苦しみ抜いた母は死に、尊敬していた師匠も死に、地下闘技場で荒れ狂った時期もあった。
時を経て落ち着いた今は、父の故郷、そして巨人に滅ぼされた自分の故郷を再び訪れる旅に出ることにした。
その旅先で今回のキャンペーン(物語)に巻き込まれる、という設定だ。

モンクは自動的にアライメントが秩序に固定されることもあり、大まかな性格は逆転裁判シリーズの綾里春美をイメージしていた(そんでもってイメージCVは早◯沙織さん……)。
言い方が過去形なのは、ロールプレイをしているとどうしてもPL(中の人)の内面が滲み出てしまいうことと、前述の”巨人殺し”により徐々に方向転換していってしまったことに起因する。
体育会系、敬語キャラ、実直、一方で自由で風変わりな余白を隠し持つ。そんな感じのイメージだ。

外見はクラス選択のきっかけとなった腰骨お楽しみスリット以外は、やや彩度低めの青系でまとめた配色、もみあげだけ長い髪型、何かちょっと透けてるインナー等、完全に筆者の好みを詰め込んだ。
モンクなので太ももはぶっとければぶっといほど良いとされる。
ちなみに向かって右側のもみあげとアクセサリーで連結された金髪は”巨人に殺された父親の遺髪”であり、これが一本たりとも抜けたり触れられたりすることなく戦うのが彼女のポリシーである。
また、モンク衣装も母親の着用していたものをリメイクして使用していることにした。
絵にする段階で、彼女の両親に対する感情が必然的に重くなっていっているのが分かる。
果たして筆者に背負い切れるのだろうか。


いざ冒険へ


オンライン通話と専用ツールで行われるセッションには当初4人の冒険者(PC)が集い、途中参加で最終的には6人パーティになった。
構成メンバーはざっとこんな感じ。

モンク(筆者のPC)
・・・後に巨人絶対殺すマンと化していくハーフエルフ♀。

バーバリアン/ファイター
・・・孤児で元鉱山労働者。武勲を立てたいハーフオーク♂。

ガンスリンガー/ローグ/アルケミスト
・・・錬金術研究で第三の腕や翼を自身に生やすマッドなヒューマン♂。

ウィザード
・・・頼りになる力術使いだがクソジジイロールの上手いヒューマン♂。

バード
・・・美しく人たらしな商人。その正体は人に化けたキツネ♂。

クレリック
・・・酒に溺れ酒を信仰するヒューマン♂。どこかのハ○ターとは無関係。

参加者には私がよく知る人も、初めましての人も居た。
Pathfinder大先輩が1人、未経験が私含め3人、D&Dはやったことがある人が2人だったと思う。
なので序盤の複雑なシステムに振り回されている内は積極的に会話をするどころではなく、ややぎこちなかったかもしれない。
だが冒険に慣れてくるとPCを通して相互理解が進み、気楽に会話できるようになった。

パーティとして見るとおじさん(一人は爺さん)が多いことと、善のアライメントが極端に少ないことが目立った。
カイデン・カイリーエンという酒飲みの神様を信仰している者が2人も居たことも相まって、我々は何かと酒を要求し、酒を捧げて旅の行末を占い、長旅から帰ってくると”錆びたドラゴン亭”で宴会というのがお決まりパターンになった。
どこかのダンジョンで巨大蟹のモンスターを討伐した時は「持ち帰って蟹鍋にするぞい」と、ウィザード爺さんの鶴の一声がかかり、皆で蟹鍋を堪能したのも良い思い出だ。

パーティで善のアライメントを持つのはクレリックだけなので、NPCの頼み事を受けるかどうかは善意より正当な報酬が優先されることが多かった。
顕著な例としては「あなた達の耳に、ネコ科の動物の悲しそうな泣き声がどこからか聴こえてた。さあどうしますか」という時に「……何か聴こえるな」「罠じゃないですか?」「怪しいのう」「無視しようぜ」という流れになり、慌ててNPCが「きっと私の同僚のペットの声だ! 様子を見に行かないか」と介入したエピソードもあった。良心とか無いのか。

リンファ(筆者のPC)も表面上は良い子ちゃんぶってはいるが秩序中立である。
報酬をせびったりはしないが拒んだりもしない。貰えるもんは貰いますスタイルだった。
なりふり構わなくなるのは目の前に巨人が現れた時と、子供がピンチな時くらい。
そう、巨人が現れなければ割と普通な人なのだ。

筆者の想定では、物語で巨人が敵として現れるのは多くて1割くらいの比重かな、と考えていたので安易な気持ちで”巨人殺し”の特徴を選択していた。
だが蓋を開けてみれば、物語中盤から巨人のオンパレード。
結果的に、物語中盤以降のリンファは巨人とエンカウントするなり東洋の神秘・気の力を使って仇敵の目前に瞬間移動しボコし出すという、暴走機関車キャラと化してしまう。
終いには、巨人にエンカウントすると他の参加者たちが「まずリンファは巨人のところまで飛んでいくでしょ。それからどうしよっか?」という前提で作戦会議をするようになった。
どうしてこうなった。
筆者的にはこの運命(必然かも)を面白がっていたのだが、一方で”リンファが巨人を優先的にボコす縛り”をパーティメンバーに課すことになってしまい非常に申し訳なく思っていた。
ただただ、このPCのロールプレイを最大限に尊重してくれた他メンバーの対応には頭が上がらない。色々とご迷惑をお掛けしました!

この「あのPCならこうするよね」的な対応はリンファ以外にも色々とあって、そういうお決まりみたいなものが参加者の中で徐々に構築されていくのが面白さの一つでもあった。
バーバリアンが(時には難癖レベルの)理由をつけてレイジする文句を楽しみにしたり、ガンスリンガーの背中にしれっと腕が増えているのを皆がいちいち驚かなくなったり、バードが呪芸でウィザード爺さんをこき使ってファイアーボール射出ポケモン扱いにしたり……。


ここが面白かったよPathfinder

・とっつき難いがカスタマイズ性の高いキャラクタービルド

筆者の場合はGMさんが至れり尽くせりでとても良い人だった部分が大いにある。
データ量に気圧されてしまう最初はビルドを手伝ってもらい、数多の質問攻めにも対応してもらい、ようやくキャンペーン中盤でキャラビルドの楽しさを実感し始めた。
こういうの得意な人は最初からフルスロットルで楽しいかもしれない。

・膨大なデータから成る堅牢で自由な世界を舞台に少しずつ構築されるPCたちの生き様を皆で楽しめる

データの多さは、世界とそこでPCがどう生きているかを想像する補強になり、更に私が深くゲームにのめり込むことができたのはGMさんの手腕によるものだと思う。
ロールプレイは所謂COC系に比べると控えめな印象なので演劇みたいに遊びたい人にはギャップが生じてしまうかもしれないが、うちは持ち回りでセッション毎にログ(PCが出来事を振り返る日記や記録みたいなもの)を書いていたので、そこからPCの内面や関係性が定まってきたりして楽しめた。
ダイスに泣かされることも多々あったが、逆に特定の状況で何故か必ずクソダイスが出たりしてそれが段々とキャラクター性を帯びたり、これがTRPGの醍醐味なのかなと思う。

・D&Dの映画が倍楽しい

タイムリーに映画「ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り」が公開され、字幕4DXと吹替とPathfinderメンバーでのオンライン同時視聴とで計3回は見たしBlu-rayも購入した。
システム的にはD&Dの親戚みたいな感じなので(このへんの事情はあんま詳しくない)見知った種族やクラスや呪文が出てくるだけで「リジリアント・スフィアだー!」「これがバーバリアンのレイジかー!」とめちゃくちゃ興奮したし、主人公一行が雄大な世界を馬に乗って旅するシーンは、自分たちの冒険の想像も掻き立てられて泣きそうになったりもした。
同時視聴会では、ちょこちょこGMさんが世界観や設定の解説をしてくれるという贅沢な体験もできた。その節はありがとうございました。
そもそも映画の出来が良いので、そっちを観てからこっち(D&D、Pathfinder)に参入するというのも良いんじゃないでしょうか。

・バルダーズゲート3も倍楽しい

またもやタイムリーに「バルダーズゲート3」が発売され、せっかくなのでリンファでキャラメイクをして遊んでみたらあまりに楽しくて200時間以上かけてクリアした。
システム的にはD&Dを更にゲーム化しているので勝手が違うことも多かったが、Pathfinderをやっていなければ遊ぼうとは思わなかっただろう。


さいごに


ほとんど推敲していないのでまとまりのない感想文となったが、このタイミングで書き散らすことができて良かったと思う。
何故なら週末にはRiseの続編(正確には続々編?)となる「Return of the Runelords」のキャンペーンを、また同じメンバーで遊ぶことが出来るのだ!
「続きをやりませんか」と言ってくれたGMさんと、再び一緒に冒険してくれる他PLに感謝。
筆者は前衛職から一転して、今度はウィッチをやる予定。
連日、呪文と呪術と使い魔のデータと睨めっこして訳分かんなくなってGMさんを質問攻めにしている。
流石に申し訳ないと思ってAIを頼るようになったが、彼らは平気で嘘を吐くので油断ならない。

リンファと仲間たちとの冒険はめちゃくちゃ楽しかった。
彼らの物語が一区切りついたことは寂しいが、気持ちも新たに(GMのヘイトを買わない程度に)この世界を暴れ回れたら良いなと思う。

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