「年収の壁」の是非
「年収の壁」超えで働くと、世帯の生涯可処分所得は「年収の壁」以内を上回る
政府の「女性の職業生活における活躍推進プロジェクトチーム」作成の、中間とりまとめ案(←PDFです)によります。
就労継続・正社員の場合、出産後離職・再就職しない場合に比べ、税・社会保険料支払い後の可処分所得が約1.7億円多い
出産後にパートとして「年収の壁」超えの年収150万円で復職の場合、年収の壁以内で働くよりも、給与と年金増により、可処分所得は合計1,200万円増加
こうした試算の条件が必ずしも個人に合うわけではないので、各家庭で夫婦それぞれの試算をすることで、税や社会保険の仕組みの理解にも繋がるでしょう。
「年収の壁」を理解していない人が5割超
連合が発表した「年金に関する調査2024」(PDFです)によると、
「“年収の壁”を理解していない」56.4%
「社会保険や税、企業の配偶者手当など、様々な制度の収入要件がなければ、 労働時間を延ばしたい」労働時間を調整している人の57.9%
第3号被保険者制度は 「第1号被保険者と同じくらいの負担にする」「完全に廃止すべき」
だそうです。もう、配偶者扶養という概念はなくしても良いのでは、とずっと思っています。
短時間だと派遣は逆に扶養されていないと働けないので、電話相談の会社は短時間の契約社員という扱いになっています。週20時間未満ですので雇用保険加入なし、労災保険のみです。国保・国民年金は自分で加入しています。
働く条件は同じなのに、これが扶養されている人だと途端に扶養している配偶者からは税控除があり(年収によります)自分は社会保険料を払わなくて良くなります。扶養している配偶者が保険料を2人分払うならわかりますが、これでは年金も健康保険も破綻しても仕方ないし、不公平なことこの上ないです。
企業の配偶者手当もやめるように政府が働きかけています。そのために補助金を出すのはおかしな話だと思いますが、企業の給与制度が時流についていけていない面があります。
手当を沢山つけているのは、基本給を下げるため。なぜ基本給を下げたいかというと、賞与の係数がかかる部分を小さくしたいから。そういう設計だったのではないでしょうか。
手当をなくして年俸制にした会社の社員が、何年経っても「手当がなくなった」「〇〇会社は手当が出ているのに」とブーブー言っていましたが、それまでのナントカ手当や固定賞与も含めた年収の1/12を月給として受け取り、業績賞与はその1/12に係るのだからむしろ増えるのでは?と説明したらようやく納得しました。
最後の会社は外資系なのに家族手当だの住宅手当だのついていた上に、6月・12月の賞与の配分が大きかったです。これは恐らく、厚生年金が総報酬制になった時に見直していないから。以前は月給からしか厚生年金保険料が引かれなかったので、賞与のポーションを大きくしておけば月給に係る保険料の会社負担分も少なくなったわけですが、総報酬制の導入で賞与にも係るようになりました。この改正の施行は平成15年からですよ?
今後の動きにも注目
社会保険は働く時間数の他、企業規模によっても違いがありました。だんだん厳しくなってきて、2024年10月から51人以上の企業に適用開始されますが、この企業規模要件も撤廃の方向のようです。
そうなると、社会保険料の会社負担分を渋ってきた企業も、パート社員にすればいいや、という短絡的な考えを改めるかもしれませんね。
加入する・しないではなく、収入に対して一定の率で徴収する税方式にすれば済むことだと思いますけれど。夫婦のどちらかが大黒柱ではなく、家庭の総報酬で税・社保の負担を算出する ── 夫婦合算申告にすれば良い話だと思いますけれど。
右肩上がりの経済の時に作られた社会保険の制度は、少子化で支える人数が少なくなったら厳しくなるのは当たり前。人口が少なくなったら国家だってダウンサイジングしても良いのでは?