【💎】宝石の「族」

前回の『鉱物とは？宝石とは？』で宝石の定義がおわかり頂けたかと思います。私は図表を作って「よくやった、自分」と自画自賛してしまいました。せっかく作ったので再掲します。

「有機質」にシェル（貝）を入れ忘れているのですけどね

その中でこんな予告もしていました。

いくつかの種で「族」を構成する大家族のような石もありますし、ラピスラズリやユナカイトのようにいくつかの種が集まった「岩石」と分類されるものもあります。これは次のお題にしましょうか。

鉱物とは？宝石とは？より

それでは「族」や「岩石」を紹介していきます。上の図では、鉱物の〇と宝石の〇が重なる部分に入っています。

集まりしモノ ─ 岩石

まずは「岩石」から。鉱物がいくつか集まったものを岩石と呼びます。呼び慣れていないだけで、きっとご存じですよ。例えばこちら。

ラピスラズリ

エジプトで買いました。スカラベ型なのがエジプトらしいと思いまして。

ラピスラズリ

ラピスラズリは、主にラズライト、カルサイト、パイライトからなる岩石です。ラズライトは青い部分、白っぽいのがカルサイト、金色がパイライトです。

この手の石が鑑別に出てきたら（見るからにラピスラズリではあるのですが）青い部分、白い部分、金の部分は小さいから不明瞭でしょうけれど、それぞれ屈折率を測って「ラズライトの範囲だよね～」「カルサイトだよね～」は確認します。

ユナカイト

ユナカイトはビーズで売っているのを見たことがありますが、国内だったか海外だったか不明です。これはハワイで買った気がします。

ユナカイト

グリーンのエピドート、ホワイト～グレーのクォーツ、ピンクフェルドスパーからなる岩石です。全種類、きちんと認識できるものを選びました。

ルビー イン ゾイサイト

半透明から不透明の緑色ゾイサイトに、黒い角閃石インクルージョンを含む岩石で、通常ルビー結晶も含みます。

これは米・アリゾナのTucsonにて。標本っぽいのが欲しかったのですがなかなかなく、巨大なビーズで我慢しました。

ゾイサイトは透明グリーンも綺麗な石です。透明で青紫系のものはタンザナイトとして有名になりました。

アジュアマラカイト

いや～、忘れていました。ごめんごめん、ですね。アズライトとマラカイトからなる岩石です。アズライトは青、マラカイトは緑です。

ラピスとユナカイトだけだと思っていたら、もう2種類持ってました。

華麗なる一族

さて、いよいよ一族の登場です。

フェルドスパー

和名でいうと長石のグループです。では、屈折率の高い順に見ていきましょう。

ラブラドライトフェルドスパー
プラジオクレーズフェルドスパー

フェルドスパーグループのプラジオクレーズシリーズ鉱物種。化学組成はNaAlSi3O8とCaAl2Si2O8の間を変動します。

ラブラドライトといえば、青いフラッシュです。ラボでは「鯖」と呼んでいました。グレーの地にこの鯖フラッシュが見えると「おぬし、ラブラドであろう？そうであろう？」と思いながら鑑別を進めたものです。

ラブラドライト　原石

そして、鑑別特徴となる繰り返し双晶。黒・鯖・黒・鯖……見事な標本だなと思わず買ってしまいました。

ラブラドライト　繰り返し双晶

オリゴクレイズフェルドスパー

フェルドスパーグループのプラジオクレーズシリーズ鉱物種。サンストーンはラブラドライトあるいはオリゴクレイズの変種。……ってわかりにくいですよね。ラブラドライトのところで書いたように、化学組成が変動するのでこんな分類になっていて、分類も時代と共に変わっていっています。

鉱物マニアさんは〇長石にこだわる方もいらっしゃいましたが、いちいち鑑別に出す方ばかりでもありませんので、変種で呼ばれる方が多いかなと思っています。

ここでは変種サンストーンを。サンストーンはイエロー、オレンジ～ブラウン、よく反射する金属インクルージョンによりレディッシュあるいはゴールデンのシーンを示します。宝石のシーンは説明しにくいので、現物を。

サンストーン　原石

サンストーンのシーンの色は、天然の銅やヘマタイトといった金属状インクルージョンによります。

サンストーン
銅っぽい感じ

下のサンストーンはインクルージョンがキラキラ（ギラギラ）と大きく明瞭な反射光を出している（＝アベンチュレッセンス）ので、アベンチュリンフェルドスパーと言った方が良いかもしれません。一応、サンストーンとして売られていましたが。

サンストーン
ギラギラ系

透明なタイプも、これはこれで綺麗です。これは ↓ 短辺に赤が感じられるタイプですが、アンダルサイトと間違いやすいです（私が）。書きながら不安になって過去の記事を調べたぐらいです（→こちら。合っていました）。

Tucsonで赤の透明なサンストーンを見てそれはそれは綺麗で、赤といってもルビーの赤ではなく銅の赤で欲しかったのですが、めちゃくちゃ高くて買えませんでした。

サンストーン

サンストーンはとっても面白いです。

マイクロクラインフェルドスパー

変種アマゾナイトが有名です。色はグリーン系、ペパーミントブルー、白。時おり明るいオレンジ～ピンクともありますが、どこかで見たような見ていないような。

アマゾナイト
この霜降り感が可愛い

名前はアマゾン川に由来しますが、この地域では産出しないという……テストのひっかけ問題になりそうです。ブラジルは主要産地の一つではあります。

オーソクレイスフェルドスパー

ギリシャ語の“orthos”（直角の意）＋“klasein”（劈開の意）、劈開が直角に交わることから名づけられました。劈開（割れやすい方向）があるので、扱いや加工には注意が必要です。

有名な変種はムーンストーンでしょう。フェルドスパーグループの鉱物種のうち、アデュラレッセンスを呈するものです。アデュラレッセンスのような特殊効果についてはまたの機会に！

ムーンストーン
カボションカット（左）と原石（右）
白～青の光の帯がアデュラレッセンス

下の記事の中にはオレンジムーンストーンも出てきます。

特殊効果はアデュラレッセンスですが、シャトヤンシー（キャッツアイ）や稀にアステリズム（スター）も出ます。参考書に「稀」と書いてあるものを市場で見かけるとつい買ってしまいます。標本ですよ、標本（言い訳）。

スターブラックムーンストーン

ガーネット

ここまででも思ったより字数がいってしまいましたが、お楽しみはこれから！

下の写真は以前使ったものの一部で、全部ガーネットです。

左上から右に、グロシュラライト、グロシュラライト、グロシュラライト（ヘソナイト）、グロシュラライト（サボライト）、ロードライト、ロードライト、パイロープ、マリ……。

こちらも屈折率の高い順にいきますよ～。

アンドラダイトガーネット

GIAは1月卒業だったので、その年2月のTucsonへ卒業旅行代わりに行く予定でした。実習で欲しいと思っていたのが、変種のデマントイドです。上の記事でも語っていますなぁ。

これは全部Tucsonだったと思います。まだ日本では緑のガーネットがあるとはあまり知られていない頃です。ロシア産の濃いグリーンがまだ入手でき、アフリカ産も出ていました。アフリカ産の黄緑色も、色が薄いため分散（ファイア：地色とは違うスペクトルカラーが見える）がわかりやすくて好きです。