【宝石】フローライト
もう10年ほど前でしょうか、某ジュエリーフェア(国内)であたかも新しい宝石かのように紹介されていて驚きました。これは昨年、業界の方(製作の方と販売の方)と話していても、やはり同じことをおっしゃっていました。
なぜかと言いますと……。
綺麗ですけれど
外観は透明から半透明で、ホワイトとブラックを除く全ての色があります。
新たな宝石のように紹介されていたのは、透明で綺麗な色のフローライトをファセットカットにしたものでした。
耐久性が低いです
耐久性は、硬度、靭性、安定性で示されます。
硬度
フローライトはモース硬度4の代表です。
モース硬度というのは引っかきに対する抵抗力ですが、鉱物間の序列であって、等間隔ではありません。硬度9のコランダムは硬度8のトパーズの5倍、硬度10のダイアモンドは硬度9のコランダムの5~140倍にもなります。ということは、硬度4がどれだけ引っかきに対する抵抗力が低いかおわかりでしょう。ちなみに爪が硬度4ぐらいと言われています。
ジュエリーとして着用に耐えられるのは、硬度6~7以上が好ましいと言われています(デザインや加工方法にもよります)。
靭性
割れや欠け・砕けに対する抵抗力(粘り強さ)はこの靭性で表します。
フローライトは劈開が4方向完全、靭性は不可です。
この形は売られているフローライトでよく見られますが、これがクリベージの4方向です(よく出てくる結晶の形はまた別)。
綺麗にファセットカットされていても、硬度の低さから着用しているうちにファセット稜線(角)がモロモロしてきますし、ちょっとした衝撃でクリベージ方向にスパーンと割れる可能性があります。
美人だけれど、傷つきやすくて脆い子なのです。
安定性
化学作用に対する抵抗力で、酸による化学分解や変色、温度変化による変化に対する抵抗性のことです。
フローライトの名前の由来はラテン語の“fluere”(流れるの意)、フラックスとして容易に溶融するためだそうです。人の体温で溶けるわけではありませんので、着用に問題はないはずですが、加工の際は熱に注意ですね。
別の美しさ
2022年2月19日に開幕した科学博物館の企画展示の小部屋です。
紫外線蛍光を呈する石を集めた部屋で、普通の光源→消える→ブラックライト→消える……と繰り返す、そのブラックライトの時の写真です。
確か手前がソーダライトでした。フローライトもこの部屋にいましたが、はて(忘却)。
英語の“fluorescence”(蛍光)は、この石が語源だそうです。和名の蛍石も、この紫外線蛍光からきています。
全てのフローライトが蛍光や燐光(光源が消えても光が残ること)を放つわけではないのですが、科学博物館のコレクションはビカー!と光ります。
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