かたもみけん
長女(小5)が家庭学習で使っている通信教育用タブレットには、メールの機能がついている。
解答の結果や、時には長女が私たち(私と妻)宛に書いたイラストメッセージが届いたりする。
私はまめにメールをチェックして、返事も書くようにしている。それが長女の励みになればいいし、どんな形であれ長女とつながっていることが嬉しいからだ。
先日も解答結果メールと合わせてイラストメッセージが届いた。
『パパ かたもみけんです。つぼおしけんです。使ってね!』
さっそくその日の夜に使うことにした。
『おーい!かたもみけんとつぼおしけん使いたいんだけど!』
リビングで妻と一緒にいる長女に声をかける。
『いいよ!…ちょっと待って!すぐ行くから!』
2、3分待ったがなかなか来ない。妻とまだおしゃべりしているのか?
『まだー?パパはもう寝るんだよ!』
『お待たせしました!』
うつ伏せで、揉まれる体勢で待っていた私の背中に長女が乗っかってきた。
『どこがこってる?』
『う〜ん…肩かな?お願いします。』
『はい、わかりましたー!』
『…ううぅ…前よりも上手になったね。』
『そう?…パパ、肩やわらかいね。そんなにこってないんじゃない?』
その通り、パパは肩はこっていないのだ。かまって欲しかっただけなのだ。
『…じゃあ、今度は腰とお尻の方をお願いします。』
『わかりましたー!』
店員風にそう返事すると、いったん腰を浮かせて今度は私のお尻の付け根あたりに乗っかって、腰を揉んだり叩いたりし始めた。
『パパ、腰は硬いね!』
そう、それは筋肉なのだ。実は腰も痛くないのだ。トントンして欲しかっただけなのだ。
『じゃあ、今後はつぼおしお願いします。』
『はいよっ!』
そう言って立ち上がって足先の方に移動すると、小さな両手の親指で私の右足裏をグイグイ押し始めた。
『パパ、ここも硬いね!』
大当たり!そこが硬いから今でも時々右アキレス腱が痛いのだ。
一通り終わると、今度は交代して私が長女のマッサージをしてやることに。(勉強してると肩がこるんだよ)と言うので、肩甲骨周りや背骨に沿った部分をマッサージしてやった。
『はい!終わり!ご苦労さま!』
『パパ、ありがとう!おやすみ!』
そう言って、長女はまたリビングにいる妻の方に行ってしまった。
『はぁー…寝るかな。』
ボソッと呟いて、スマホを手に取って、寝る前にメールをチェックすると、
『パパへ では、かたもみ、つぼおしやらせていただきます。ご利用ありがとうございます。』
『では次回のけんをさしあげます。かたもみけん★ つぼおしけん❤️です。』
さっき来るのが遅かったのは、これを書いていたからだったのか。
ケガをした際に処置することを『手当(てあて)する』という。その語源は、大昔、病気やけがをした際、患部に手を当てて治療したという俗説からきているそうだ。
私の大きな肩を揉むには、長女の手はまだ小さいし、力も弱い。でもその温かい小さな手から愛情はたっぷり伝わってきた。
間違いなく心のこりはとれた。