8年越しの初恋へ、終止符を。
初恋は小学4年生のとき。
好きだったのは同じクラスで、運動が得意な足の速いK君。
いつから好きだったのだろう。
気付いたら、席が隣ってだけで嬉しくて、同じ班にいることが嬉しくて。
遠足のとき、どうしてもバスで隣に座りたくて、ズルをしたのも甘酸っぱい思い出。
K君には好きな子がいることも知っていた。
それでも「独占したい」という感情をはじめて味わった初恋だった。
K君とは、わたしの転校で離ればなれとなった。
悔しかった。
自分の気持ちを伝えることができなかったことが。
だから、引っ越してすぐに手紙を書いた。
「本当は好きだった。K君に好きな人がいることは知っていたけど」
返事はすぐに返ってきた。
「ありがとう。嬉しかったよ」
それがわたしのはじめての告白だった。
自分の気持ちを伝えたらそれで満足して、K君のこともちょっとずつ忘れていった。
でも、話はここで終わらない。
最後に手紙のやりとりをしてから8年後。それはわたしの18歳の誕生日だった。
18歳になる3月に高校を卒業して、昔住んでいた場所に遊びに行くこととなった。
K君とはたまにメールを送る仲で、お互い大学に合格してK君が4月から一人暮らしをすることも知っていた。
「今度、K君の家の近くに行くんだ!」
もしかして会えたりしないかな、なんて淡い下心を持ちながら久しぶりにメールを送ってみた。
返事はまたしてもすぐに来た。
「まじで!時間あったら会う?」
心の中でガッツポーズしたのは言うまでもない。
そして、わたしの誕生日3月30日、18歳になりたてのわたしはK君の住んでいる街をはじめて訪れた。
その日はそれまでのわたしの人生において、一番幸せだったことをここに記しておく。
8年ぶりに会ったK君は昔のまま、かっこよくて笑顔が素敵な青年だった。
何をしたわけでもない。
会って、ファミレスでランチを食べて、これまでのことや思い出を話しただけである。
ただただ楽しかった。会えたことが嬉しかった。
その出来事は、別れ際に起こった。
駅まで送る、と言ってくれたK君と並んで道を歩こうとしたときのこと。
「荷物持つよ、危ないから、俺車道側歩くから」
このときの顔を誰にも見られなくて良かったと今でも思う。
8年ぶりに会った同級生を「女の子」扱いしてくれたK君。
恥ずかしくて嬉しくて「ありがとう」と小さい声で答えるだけで精一杯だった。
8年ぶりに会って、実感した。
わたしはK君にずっと恋をしていたんだ。
8年も片思いの恋をしていたんだ。
でも会ってわかった。
この恋は今日でおしまい。
K君とわたしは、これで会うのは最後だろう、と。
わたしの初恋は、8年の時を経て、やっと終止符を打った。
そう分かって、少しさみしくなったけれど、さみしさと同じくらい安堵した。
きっと今は、K君には素敵な恋人がいることだと思う。
もしかしたらもう結婚しているかもしれない。
わたしはK君のその後を知らない。
あの日、8年越しに会うことが出来てから一度も連絡を取っていない。
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