扶養控除内で働きたい妻が「フリーランスで契約」したら上限は103万ではない件
厚生労働省の審議会は、今年度の最低賃金の引き上げ額を31円とする目安を示した、という報道がありました。
私は民間の資格ですがAFPを持っており、ファイナンシャルプランナーとしても活動しています。普段、お金について相談を受けることも多いのですが、その中でここ数年急に増えてきた事象があります。
それは、「妻がパートを希望したら職場から『フリーランスで契約する』と言われがどういう意味?」と相談です。
「物価も上がっているし、バイトをしたい」
「家計を支えるために、パートに出たい」
そういった考えから、主婦は夫の所得税の扶養控除の範囲内である"年間103万以内"を目標に働きたいと考え、働き口を探します。
その中で行きついた働き口から「フリーランスで契約」と言われ、その意味をあまり理解できないまま、仕事を受けてしまうようです。
経営者はパートではなく単なる取引先としたいのでしょう。 経営者は対象者に給料を支払う場合、その金額には厚生労働省が定める最低賃金を超える金額を支払う必要があります。さらに一定条件をみなすと雇用者を社会保険に入れなければいけません。
一方、相手を"雇用"ではなく"取引先"とすれば、単に報酬として自らの定めた値段を相手に与えればよく、給料を支払うケースのような決まりを気にする必要がありません。
こういった取り組みの是非については私もいろいろと思うところがあります。物価は世界的に上昇している一方で、日本の経済成長率は低い。その中で経営者の考えた苦肉の策なのかもしれません。
ここで働き手が注意しなけえればならないのは、そもそも妻が希望する「夫の扶養控除内の103万以下」という数字についてです。
巷でよく言われるこの金額ですが、103万円とは給与所得控除額の最低額55万円と所得税の基礎控除額48万円を加えた金額をさします。給料がこの金額以下で、かつ他の収入がなければ所得税はかかりません。
しかし、フリーランスとなると所得区分は「事業所得」になり、話は変わります。
日本の所得税は10種類に分類されていて、収入をそれぞれ当てはまる区分の方法で計算し、計算します。
アルバイトやパートは「給与所得」なので、1年間の収入金額から問答無用に給与所得控除の最低額55万円を引いて計算できます。
しかし「事業所得」には給与所得控除は無関係なので、もらった金額から経費を引くなど当事者が計算しなければならず、さらにその1年間の事業収入が20万以上なら、その収支を自ら帳簿につけて確定申告しなければなりません。
そして、1年間の事業収入の収支、いわゆる事業所得が基礎控除額の48万円を超えると夫の所得税の扶養から外れなければならない可能性もあるのです。
【まとめ】妻がフリーランスとして働く場合、気をつけること
妻がフリーランスで働くが夫の所得税の扶養に入りたい場合、1年間の収入金額の上限として意識しなければいけいないのは「額面103万円」ではなく「フリーランスの収入金額から必要経費を引いた額が48万円」となります。
この必要経費も何でもかんでも入れていいわけではなく、収入を得るために必要な費用のみが必要経費であり、かつ所得税法が定めるものに限ります。
単にもらった金額が103万円を超えないようにする、という意識だけでは済まないのでややこしいですね。
また、こういった手続きを知らず、必要経費とするべきだった費用の領収証をもらわずに過ごしていた、という話もよく聞きます。働き口から「フリーランス」と言われたら、まず必要経費の領収証をとっておくのが賢明です。
自分の人生です。自分を守る意識を高めて日々を過ごしましょう。
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