9年ぶりに人前で泣いた話
泣いてしまった。両親の前で。
これからの色んなことが不安で、毎日生きてて楽しくなくて、辛くて。
お酒を飲んでいたけれど、酔っていたわけではない。酔っ払いが急に泣き出した、とかではない。
両親は私の珍しい姿をどう解釈したのだろうか。どう思っただろうか。
昔は泣き虫だった。保育園に行くのも嫌で泣いていたし、注射も嫌いで毎回泣いていた。それがいつからか、人前で泣かなくなった。泣くという行為を忘れたのではない。ひとりで泣いたことは何度もある。
人前で泣かなかったという約9年の間には、たぶん2度、母の運転する車に乗りながら、バレないようにこっそりと泣いた。高校受験に落ちた帰り道と、高校で嫌なことがあったときの帰り道。泣いていると思われたくなくて、静かにこっそりと泣いた。
泣きたいときはいっぱいあった。だいたいはひとりでいるときに泣くようにしていた。家族とおやすみと言い合ったあとのベッドの中、お風呂に入っているとき、一人暮らしを始めてからはアパートで。
だから今回も、泣いているとバレたくなかった。話しているうちに、話を聞いているうちに涙目になって、涙を止めることができなくなって、上を向いていた。鼻水を啜っているふりをした。
顔を正面に向けて話しているとき、抑えられなくなった。すぐさま持っていたタオルで顔を覆ったけれど、もう隠しきれないから、泣いた。
我慢しなくていいと母は言ったけれど、必死で抑えた。私らしくないから。
抑えてしまったからか、あまりすっきりしなかった。
でも、ずっとこうしたかったのかもしれないとも、思った。