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胃内停水(いないていすい)?

 胃内停水なんて言う言葉は、聞いたことのない方がほとんどだと思いますが、漢字を見ると、胃の中で水がとどまっているということになります。皆さんも歩いているときに、お腹からぽちゃぽちゃという音が聞こえてきたことがあると思います。食後すぐであれば、よくあることかもしれませんが、飲食をしてから時間をおいてもこのような音が聞こえるようであれば、胃の動きが落ちて水はけが悪くなっている可能性が高いです。漢方診察でも仰向けになり膝を少し曲げた状態で上腹部を軽くたたくようにゆするとぽちゃぽちゃ言うことがあります、これを胃内停水として所見ありと考えます。

 こういう所見を確認すると、胃機能の低下があるとともに水滞ありと考えて、五苓散の出番となります。その他、六君子湯、補中益気湯、茯苓飲、茯苓飲合半夏厚朴湯なども利用します。これら以外にも、水の代謝をととのえてくれる処方は多く存在しており、症状によって合う漢方薬を探り出していきます。ただし、水滞があるからと言って、胃内停水の所見があるとは限りません。

 五苓散は水の代謝に滞りができたことによる症状を改善する処方です。むくみ、めまい、のどの渇き、下痢、嘔吐などの症状が水バランスを整えることにより改善すると考えるときに使用します。保険適応病名は、「口渇、尿量減少するものの次の諸症:浮腫、ネフローゼ、二日酔、急性胃腸カタル、下痢、悪心、嘔吐、めまい、胃内停水、頭痛、尿毒症、暑気あたり、糖尿病。」となっており、幅広い症状に適応することができる処方です。めまいなどに対して頓服で使用することもあります。

 六君子湯は、漢方の胃薬のイメージですが、水分代謝を改善してくれる、蒼朮や茯苓といった生薬が含まれています。全体としては、胃の動きを良くして、胃内のものを十二指腸へと送り出す動きをスムースにしてくれます。胃にとどまった水分も小腸へと送り出してくれるわけです。

 茯苓飲の保険適応は、「吐きけや胸やけがあり尿量が減少するものの次の諸症:胃炎、胃アトニー症。」となっています。胸やけ、げっぷ、胃痛、腹満などを訴える方に使います。この処方にも茯苓と蒼朮が含まれています。

 胃内停水を認める方に漢方薬を処方するときには、胃内停水を良くするために使うわけではなく、水のめぐりを良くすることによって、患者さんの訴える症状を改善させるのが目的です。もし、あなたが歩いているときに、胃のあたりでぽちゃぽちゃと音がするなら、水分バランスを整えてくれる漢方薬の出番かもしれません。

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