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打撲症にも漢方薬を

 打ち身や捻挫を経験する人は非常に多いと思います。若いころは、スポーツで受傷することが多いでしょうし、高齢になれば転倒など、事故などはあらゆる年齢が関係します。受傷すると、その部位は腫れて熱を持ち、痛みが出ますね。この急性期は冷やしてあげるとよいようです。なかにはいつまでも冷やすのが良いと思っている方がおられますが、急性期を過ぎて冷やしていると、冷やした部位の血液循環が悪くなりますから、かえって組織の修復を遅らせるとされています。急性期を過ぎれば、温めたり、無理のない程度に動かしたりすることで、血液循環を良くする必要があるわけです。

 学生時代に捻挫をしたところ、先輩から動かして治せと言われたことがあります。まだかなり痛いのに、ひどいことをいうやつだと心で思いましたが、動かして治すという理が分かっていっていたのかもしれません。はたまた、体育会系ののりでサディスティックだっただけかもしれませんが。

 受傷した際に筋挫傷といって筋肉が損傷し出血を起こしているようなときには、症状がとれるのに数か月を要すると思います。その間、湿布を貼ったり、痛み止めを飲んだりして、時間の経過とともに治るのを待つことになるわけです。このときに、入浴する、赤外線治療をする、適度な運動をするといったことで、血流改善を図ったほうがよいと思います。さらに、漢方薬を利用するといったこともお勧めです。

 打撲などの時に使う漢方薬としてよく名前が出るのは、治打撲一方(ぢだぼくいっぽう)です。ただし、受傷直後というよりも少し時間がたってから使用する場合が多いです。また古傷が痛むといったような場合にも試してみるとよいと思います。局所のうっ血をとり、血流を改善させてくれます。

 急性期に用いるとよいのは、通導散(つうどうさん)です。これはうっ血を取り除く力が強く、痛みを軽減してくれます。これには生薬の大黄が多く含まれているので、服用して下痢がひどいようであれば桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)に変更してもよいです。また腫れがひどいときには通導散と桂枝茯苓丸を一緒に服用してもらうこともあります。

 打撲直後なら、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)や三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)を利用することもあります。ただしこれらはある程度体力があるような人に用います。

 他にも状況に応じて選択できる方剤はあります。基本的には、桂枝茯苓丸、治打撲一方、桂枝茯苓丸+治打撲一方あたりでやってみるということで大きな間違いはないと思います。

 私は普通に西洋医学的診療を行っていますが、漢方薬も利用したほうが良いと考えた時には使用目的を説明して処方してよいかどうか患者さんにお聞きします。患者さんが希望するかどうかは、半々といったところです。服用しないとはもったいない、と心の中で思いますが、漢方薬はすき好きですから患者さんにお任せします。



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