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ショーケンKampo ⑩ 手足の冷えに桂枝茯苓丸

症例検討会のように症例を通して漢方に親しむ、ショーケンKampoの第10回です。手足の冷えを訴える方を通して、漢方薬を考えてみましょう。

【 ※Twitter  ※音声配信 】

【症例】女性 60歳

【主訴】手足の冷え

【現病歴】若いころから冷え性の傾向があったが、2か月ほど前に風邪を引いたころから冷えが強くなり、時に睡眠も妨げられるようになってきたため漢方治療を希望して来院した。寝る前に入浴して温まるのだが、夜中にトイレに起きたりすると、足の冷えのために眠れなくなることがある。

【所見】身長155cm、体重49Kg。子宮筋腫の手術瘢痕がある。舌の静脈が拡張している(舌下静脈怒張)。腹壁の緊張は普通。下腹部に抵抗があり、右下腹部に圧痛がある。浮腫みはなく、貧血傾向も認めない。

【経過】体力中等度の女性で血の循環がよくない方(瘀血)ととらえ、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)を処方した。2週間後の再診時には、少し冷えが良いようだとのことだったので継続処方とした。二か月を経過したころには、昼間に冷えを感じることがなくなり、夜間起きても冷えで眠りが妨げられることもなくなった。

【解説】桂枝茯苓丸は血のめぐりを良くする処方の代表で、よく利用される処方です。症例の冷えが血のめぐりの滞り(瘀血:おけつ)ととらえて桂枝茯苓丸を選択したわけです。

子宮筋腫と言われたり、その手術を受けた既往のある方などは瘀血がベースにある場合が多いです。また、舌下静脈怒張や下腹部の抵抗~圧痛というのは一般的に瘀血のサインとされています。

桂枝茯苓丸の保険適応は、「体格はしっかりしていて赤ら顔が多く、腹部は大体充実、下腹部に抵抗のあるものの次の諸症:子宮並びにその付属器の炎症、子宮内膜炎、月経不順、月経困難、帯下、更年期障害(頭痛、めまい、のぼせ、肩こり等)、冷え症、腹膜炎、打撲傷、痔疾患、睾丸炎。」となっています。

血のめぐりを良くする効果を主として考える処方ですが、気のめぐりを良くし、体を温め、水分代謝をスムースにし、気持ちを落ち着かせるといった生薬も含まれています。女性三大処方の一つとされていますが、男性に用いることも多いです。

皮下出血斑やいぼ痔なども瘀血ととらえますから桂枝茯苓丸を利用することが多いです。

似たような症状で便秘があるような場合は、便通を良くする処方をあわせたり、通導散や桃核承気湯などを処方することになります。

一言で冷え性といっても、他の症状や体質などから選択する処方がかわってきます。効能書きから適当に処方を考えるのではなく、漢方医や漢方に詳しい薬剤師に相談するのが、じぶんに合った処方に巡り合う早道です。

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