膀胱炎かな?というときの漢方薬
外来に来られる患者さんが、膀胱炎の薬も出してもらえませんか、と言われることがあります。ほとんどは女性です。過去にも膀胱炎のために治療を受けた経験があることが多くて、症状から膀胱炎だと分かるようです。
膀胱炎は皮膚などの細菌が、尿道を通って膀胱に入り、感染を起こすものです。炎症を起こすので、排尿の時に痛んだり、残尿感があったり、頻尿になったり、時には出血したりします。
急性膀胱炎の治療は細菌感染に対する治療ですから、基本的には抗生物質を使います。また水分を多めに取るように指示をします。膀胱炎を繰り返さないようにするためには、排便後にトイレットペーパーを使用する際には、前から後ろに向けて拭き取るような指導もひつようです。
膀胱から細菌感染がさらに尿管から腎に広がっていくと、急性腎盂腎炎を起こしてしまいます。こうなると悪寒発熱背中の痛みも寝嘔吐倦怠感など、症状もひどくなってしまいます。そうならないように早めの処置が必要です。
膀胱炎の治療は抗生物質が基本ですが、漢方薬を利用する場合もあります。膀胱炎の症状だけで明らかな細菌感染がない場合、抗生物質で検査所見が改善しているのに症状が取れない場合、膀胱炎の治療として抗生物質と一緒に使う場合などです。
よく使用するのは、猪苓湯(ちょれいとう)です。猪苓湯は尿を出し、炎症を抑え、出血を止めるように働きます。肌がカサカサで体力のあまりないような方なら猪苓湯に四物湯(しもつとう)を加えた猪苓湯合四物湯を使う場合もあります。
冷え性の傾向があり、慢性的な膀胱炎症状があるような場合には五淋散(ごりんさん)を使います。これには地黄が入っているため,胃腸の弱い人には注意が必要です。
胃腸が弱くて、元気がなく、イライラしたり神経質な傾向のある人には清心蓮子飲(せいしんれんしいん)を使います。精神的な要素が排尿にも影響を与えているといったところでしょうか。
比較的体力のある人で、痛みなどの症状が強くて、膀胱に熱を持っている時は竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)を用います。
膀胱炎症状が軽かったり、何度も繰り返したりといった場合、漢方薬だけでも良くなります。また、膀胱炎のために抗生物質を使っていると、抗生物質が効きにくい細菌を育てることにもなってしまいますからちゅういが必要です。治療に漢方薬を利用することによって、自分に合った漢方薬を見つけておくことが良いと思います。常備しておけば、膀胱炎かなと思った時にすぐ服用すれば、抗生物質のお世話にならなくて済むことが多くなると思います。
なお、膀胱炎症状が続く場合には,単なる膀胱炎ではなくて、他の病気が隠れている場合もあるので、泌尿器科で詳しく検査をしてもらうのが良いと思います。
若い頃には簡単に治っていた膀胱炎症状も、高齢になると慢性化したり、検査をすれば常に尿中に細菌を認めたりと言った状態になることもあります。漢方薬で対応できるならば、必要以上に抗生物質に頼らなくても良くなりますから、漢方薬の利用はおすすめです。
今回は膀胱炎に使用する漢方薬をご紹介いたしました。参考にしていただけたら幸いです。