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もくもく生活(手術前検査の日)
https://www.instagram.com/p/DBjcgG_Tbr5/?igsh=bHowd3NteGYxMXY1
(キャプション引用)
2024/10/24
しばらく思うように歌えていない
一定の音より上はただ息が漏れるだけ
こんなときに限って、歌いたいうたがあったりして困っちゃうけどしかたない
最近ようやく、可動域(?)がわかるようになった
この類の声は今は出ない
この高さは今は出ない
このうたは今は歌えない
この喋り方なら話せる
この喋り方じゃ話せない
というように
ー
この日は朝早くから手術前の検査と入院の手続きのためいつもの病院を飛び出して大きな病院へ
かかりつけの先生は今日もジーンズにスニーカーで軽くステップを踏むように診察をしている。
いつでも走り出せそうな身軽さでなんだか信頼できる手術に踏み切ったのもこの先生が言った
「かわいそうにな、早く歌いたいやろ」が
スッと肌に馴染んだからだ。
事前に準備していた、この日先生に聞きたかったことは「声が変わったりすることはありますか」
だったのに、質問は?と聞かれ
「術後、すぐに本は読めますか」が真っ先に出てきた私は、喉のことはもう任せておこうと
思えていたようで、同意書のサインも難なく終えた。
言われた順番通りに検査をこなす。
渡された紙を見ながら場所を確かめ向かう様子は
サーキットイベントみたいで悪くはなかった。
行く先々で名前と誕生日を確認のために聞かれ答えるたび
私の身体からアーティストである部分が
剥がされていくような感覚になった。
生まれた日も名前も一度も変わったことはないし
これからも変わることはないのに
産んでくれた母がずっと隣についてくれていながら
そんなことを感じていた。
私の身体の、目には見えない"いろいろ"な情報が
流れ作業で測られていく。
一番苦手な血液検査も、ブスッと刺してドバッと採ってヒュッと抜かれて はい終わり
目眩でふらつきながら次、
歯科口腔科ではブニュっとしたいちご味の何かで
歯の形を取ってもらった。
私専用のマウスピースを作ってくれるらしい
一瞬だけど仰向けで横になれたので目眩はだいぶマシに(これはありがたかった)
それから心電図、肺活量の検査。
声帯に異常が起こってからは本当に息が続かない
大きく吸ってから吐いても10秒くらいでギブアップ。吹奏楽でホルンを7年、歌い続けて何十年、
どうしても信じられない。
平均を下回りすぎておかしいと言われ何度もやり直したけど結果は同じでこれがかなり悔しかった。
レントゲンも撮った、先生が同い年くらいだったことくらいの感想。一瞬で終わった。
他にもなにかあった気がするけど、忘れた。
なんだかんだで最後、麻酔科の先生とのお話。
なんだか目が合わない
こんなにも不安なのに目が合わない、、
ー「アクセサリー、めっちゃかわいいですね!」
なるほど、先生は確かに最初から私の右耳を見ていた。
ジャジャン!作ったんです!ドヤ!ニンマリ!
「誰か血の繋がりのある方で全身麻酔の経験がある方はいますか?」と先生が言うと、授業の如くちいさな挙手と「はい!」と隣でお茶目な母が堪らなくかわいかった。同意書にサインをする頃には不安なんて忘れていた。
そのあとは入院の手続きをし、精算も終えて病院をあとに。
母がついてきてくれていなかったら
途中で泣き出してしまっていたような気がする
この歳にして情けないけどありがたかった。
朝ごはんはクロワッサン1個の母とバナナ1本の私は二人揃ってお腹ぺこぺこ!
なのに似たもの同士なので途中気になったお店に
寄り道 寄り道 寄り道でようやくランチ!の頃には
もうすっかりおやつの時間、予定より3時間も過ぎていた。この母にこの娘あり、逆も然り。
そしてありつけたランチ(15時前)で食べたのがこの写真。
身体のいろんな情報が抜き取られた後で
もうすっかり空っぽの気分だったので
口から入るもの全てが恵みでうれしかったしおいしかった。
入院の期間は短いが、声を出してはいけないだけでなく手術の日は絶食、、暴れそう。
ここにくるまでの4ヶ月ほど(短いようで長い)で
悩んで考えて悔しくていっぱい泣いて
自分にとって歌うことがこんなにも特別なことで
生活の中の当たり前になっていたことに気づいた
ライブができることの幸せも
ありきたりだけど失ってからやっと気づいた。
先生の話を聞いたり検査をしたりしながら
この経験があるとないではこれからの音楽人生変わってくるな とか思いながら、これはこれで
良くはないけどよかった。
フッ、また深みのある人間になってしまったな、ハハ
まだしばらくは歌えないし、
術後は完全に筆談になるのでなるべく誰にも会いたくない。
さみしいけどその間に知識をどっさり増やして
ムキムキになっておこうと思う。
先の予定を立てるのが怖くなって
そのあとの約束は(仮)でしか入れてないけど
お茶したりご飯いったり気にせずお酒も飲めるようになったら、また会いたい顔がたくさん浮かぶ。
果たさなければいけない約束がたくさんある。
こんなところで止まっちゃいられない、
闘いはまだ始まったばかりなのかもしれない。
根腐れしないように、枯れないように
自身の人生を愛でてゆくしかないのだ。