ため息を 言葉にしてみよう 〜 Bad Romance 〜

何度だって観たい舞台がある。

「マチネ(昼公演)」と「ソワレ(夜公演)」で「マチソワ」。
1日に昼夜2公演あるんだから、あれもこれも観ちゃおう!と結果的にマチソワ観劇になってしまうことがあります。
作品それぞれをくまなく吟味して、取り憑かれたように余韻にひたればいいのに。
睡魔に襲われたり、途中で集中力が切れればおしまい。それまでのこと。
もったいない気もしますが、なかなかどうして悪くない。予想外の事から何か新しいものが生まれてくるような、そんな運と出逢いに期待する気持ちもあります。

終演後、締めくくりとして銭湯を経由したりもします。新大久保にいい湯があるんですよ。笑えるほど浮腫んだ足首は、お行儀よく座っていた証だ。銭湯独特の音の響きは耳に心地よく、ぐーんと手足を伸ばすと体も心もほどけていきます。
「いい1日だったなぁ」と天井を見上げて、ため息をつく。物語を完結させるエピローグとするなら0点だな、これじゃ。 

7月某日の組み合わせは

マチネ:『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』 @帝国劇場
ソワレ:COCOON PRODUCTION 2024『ふくすけ2024-歌舞伎町黙示録-』
    @東急歌舞伎町タワー6階 THEATER MILANO-Za

融合の結果、「純愛」に思いを馳せた。


『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』は、昨年とキャスト変わらずの再演。
2025年閉館予定の帝国劇場で観る最後ならば、と個人的千秋楽の日時をキャストスケジュール優先で選びました。気が抜けてぼんやり有楽町駅へ向かう自分を想像し、先行申し込み時は何か甘いモノでも食べて帰ろうと思っていました。反動で塩辛いものを欲するまで。まるで失恋後のやけ食いみたいに不健康になりたかった。


今回で4回目の公演となる『ふくすけ』。私は 2012年の再々演を大阪で観て、1991年の初演、 98年の再演を見逃したことが悔しくて、次があるなら必ずと誓いましたが、その日がやって来るなんて実はびっくり。

開演前の場内アナウンスには、「治安が悪い」とボソボソと話す松尾さんの声が。客席で、観る順番間違えたかな、なんて思ってごめんなさい。
この日は収録のためカメラが入っており、舞台上の一挙手一投足、一言一句に、これホントに放送できるの?とソワレだけにソワソワ……してたのは最初だけ。

歌舞伎町を舞台にしたお芝居を歌舞伎町で観るというリアル。前公演はうろ覚えでも、コズマ三姉妹、中でも宍戸美和公さんのヴィジュアルと早口で甲高い声がパチンとスイッチを入れてくれました。主人公の設定が変わっても毒々しさに手加減はなく、たてまえ程度の倫理観なんて、もはや何の役にも立ちません。
歌舞伎町ならあり得る。私の偏見と思い込みも躍動する(喜んでる)。

情動に突き動かされる面々が愛おしくてしょうがない。みんな狂っている。百も承知です。そこに「純愛」を探してしまうのは、そうであって欲しいという、ひとりよがりで傲慢な願いかもしれません。なんせ、先のマチネ公演で、すでに暴走気味の純愛モードが出来上がっております。もう自分でも止められないのだ。

ふくすけやサカエは確かに愛されていた。地球上にただ一人だとしても。
ミスミミツヒコやコオロギの言動は論外。でも彼らは欲しい愛をそうやってしか手にすることができないんだもの。
不発弾へのこだわりは、物が違えば「偏愛」という微笑ましいくくりに。(極論)
フタバが欲しくてたまらない「ジュンアイ」はどうしたら手に入るのか。
頭の中ではベートーヴェン作曲の交響曲第9番第4楽章「歓喜の歌」が流れ続け、エスダヒデイチの「純愛」についてボーッと考えてたら、湯船でのぼせそうになったよ。危なーい。
(そういえば皆川猿時サン、露出はいつもに比べて控えめでしたね)


さて。『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』では『Backstage Romance』という曲があります。Lady Gaga 様の『Bad Romance』(2009年)がベース。

帝国劇場では絶対に叶わぬことだが、舞台上の皆さんと一緒に、ライブみたいにぴょんぴょん跳ねたいし、両手を突き上げたり、思い切りクラップしたくなった。感情の爆発を抑え、もぞもぞしていた自分がお恥ずかしい限り。

純愛は狂気を孕んでいる。『Bad Romance』を聴くとそう思います。リリース当時、衝撃的だったMV映像のせいかな?あれ?反対か。狂気は純愛を孕んでいる?
ついMVに見入ってしまい、 Acoustic Live や Piano Version にまで手を広げてしまった。同じ歌詞、同じアーティストが歌うのにこうも印象が変わるとは。

「 Caught in a bad romance 」という歌詞は、聞き間違いでなければ
「 お ぼ れ る   bad romance 」と舞台で歌われていました。



「恋におぼれた日を思い出してみてほしい」
クリスチャンのモノローグは悲劇的な結末の予告。2幕はこうやって始まります。

陽気に客席に語りかけるので、きらきらした思い出が蘇ってくれればいいのに。

昨年、個人的初日に思い浮かべたのは、「fall in love 」や「落ちた」 とか、ふんわり軽やかなものではなく、考えただけで俯き、ため息が出てしまう、そんな日々と朧げな記憶に残っている表情でした。あんまり思い出したくない部分を不意につつかれたのだよ。クリスチャンのばかー💢

夢中になって心を奪われる様を「(何かに)溺れる」とも表現しますが、たとえば水に落ちて生死の狭間で冷静な判断や行動ができなくなる、息もできないくらいになって、もがくようなイメージが先行したのでしょう。映画版の結末を知っていたこともあるのかな。

この『 Bad Romance 』を最後まで見届ける役割を任された、というか、大袈裟に言うと、そんな契約をクリスチャンと結んでしまったみたいな気もしたんです。

舞台のエンディングを観て以降、「…… Bad Romance … でも……」の『でも』、ニニ様の艶やかなささやきで早々にハンカチを握りしめる事に。毎回、しくしく。


主題「純愛」のカタストロフィーもここがはじまり。
プロローグは愛の起源。1幕はクリスチャン成長の記録(子どもかっ!)だった。


次のマチソワ予定は10月11日(金)。こちらは意図的に組み合わせてみた。
マチネ:『The Gentlemen's』 
  @有楽町マリオン(有楽町センタービル) 別館 7F I’M A SHOW(アイマショウ)
ソワレ:『billboard classics KAI SHOUMA Orchestra Concert 2024』
  @すみだトリフォニーホール 大ホール

舞台ではないのでマチソワと言わないのかもしれませんが、また彼らの歌声を聴く機会があるのだ。やったー!おかげさまでロスは回避できています。
これ、脳内に映像を補完すれば、おおよそムーランだし、ほぼイザボーじゃない?サティーンとイザボーを隣席に召喚すればいいんですよね?そういうの得意です。彼女たちを偲ぶ日にもなるでしょう。翌日の有給取得も宣言済み(確保ではない)、時間はたっぷりある。