ため息を 言葉にしてみよう 〜井戸の思い出〜

ナンセンスコメディを観た後のナンセンスな感想のため、それ相応にとっ散らかっております。世迷言を申しますが、どうぞよしなに。

ナイロン 100°C結成 30 周年記念公演 第二弾
ナイロン100°C 49th SESSION『江戸時代の思い出』を観ました。

夢の話なんでしょ、しばらくはそう思っていました。目の前の光景は武士之介が見たヘンテコな夢。その続きを、見るからにお人好しの人良(ひとよし)さんとともにツッコミを入れながら、薄ら笑いで眺めていくワケだな……。あれ?違う違う。
これ、やっぱり「思い出」で、武士之介のメンタルタイムトラベル(心的時間旅行)に同行しているのか、と気づきました。

思い出は過去だけのもの? NO  NO  NO!
瀕死の天才脳外科医が日本刀で挑んだ、みそきち(武士之介の脳みそ愛称)移植手術は成功。未来の思い出を記憶するという、トンデモナイことが可能に。

池田成志さん演じる悪玉にまんまとしてやられたでござるよ。見るからに悪人顔の彼は、時空の歪みを調整する、いわばフィクサーでした。
ワケがわからないことが続くと、どうにか辻褄を合わせようとあれこれ考えてしまうものです。誰かが「伏線なんかない」とハッキリ言い切ってたのに(ふふふ)。
井戸から這い上がってはまた突き落とされる武士之介を見て、そんな呪縛から解放されました(これは大好きな展開だぞ、ぐふふ)。

だって、そこに井戸があるではないか!

井戸にこれほどテンションが上がってしまう理由を先に述べておかねばなりませんね。まずは幼少期に影響を受けたドリフのコントから。それから妄想癖に関しては『ツイン・ピークス』(原題:Twin Peaks 1990年 - 1991年、2017年に放送された米国のテレビドラマ)にもふれておきたい。
と、文字数を無駄にするまでもなく、そのものズバリ、的確なコメントがありましたので引用させてください。

この映画は、怖い「貞子」が邪魔をしてくるから、肝心の井戸を直視できません。

井戸は“水の世界”と”陸の世界”の間にあり、また”地下世界”と”地上世界”の間にあります。こうした2つの世界が通じているところには、”ほかの世界”からの出現者がやってきたり、逆に”ほかの世界”に行くための入口にもなっていきます。


ほほう。背後にある土の山と井戸は凸凹のセットで、透明なレゴブロックに見えてきた。ブロック上部に並ぶスタッドと呼ばれる突起を、裏側の凹み穴にはめ込む事によって相互に接続する仕組みです。そうやって「どこか」と「どこか」の世界がつながっているのでは。とすると……。

キューセイシュは顔を出す場所や時代を間違えたんだろうな。迷子にならないように道標が必要で、時間を止めたタイムカプセルは最適なアイテムとも言える。
「立派4」の4人は結局タイムカプセルを見つけられなかったけど、そこは彼らが埋めるはるか以前の山だから掘っても掘っても出てくるわけがないのだ。
飢饉の時代に繰り広げる、茶屋の3姉妹(おさかな、おやさい、おにく)の安穏とした会話には、今、飽食の時代を生きる人間も、かつて捕食者ではない時代があったんだよねぇ、なんてことを思う。
一つ仮定するだけで妄想は枯れることなく湧いてきます。楽しいぞっ♪

最初からドーンと構えていた井戸を見落としていた私のバカ、バカ。
ファンタジーかSFか、それともホラーか。カテゴライズにこだわり、オチを探し彷徨う、そんなつまらないことをしていてはもったいない。

ナンセンスコメディとは?
 
“Don’t think. feel!
It’s like a finger pointing away to the moon.
Don’t concentrate on the finger, or you will miss all the heavenly glory.” 
少々、偉人の言葉を拝借しました。

自由に楽しめばいい。好き嫌いはそのあとで。


昨年観た舞台『ねじまき鳥クロニクル』にも井戸があり、その周りでの舞踏には貞子を思い起こさせる(個人の感想です)ゴロゴロ、うねうねがありました。全編通して、ともかく超人的な身体能力に驚き、ため息をついたんだった、そういえば。
両作品とも井戸をつたい、私は旅に出ました。


ちなみに、大人になってから井戸が怖い、と思った映画作品はこちら。


井戸の中は絶対に覗かない方がいい。(絶対?)でもやっぱり覗いちゃうよなぁ。