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4年間のFF14コミュニティ運用で学んだことまとめ
長いようで短かった丸4年間。
特に最後のほうはあまりがんばれず、私自身はコミュニティの役には立てませんでしたが、CWLS運営中に私なりに経験したり調べたりして勉強したことをまとめます。
何を偉そうに、と思われるかもしれないし、失敗した人の小難しい話は求めてない、という方も多いと思う。私は私の知識の中でしか話せなくて...これから新しくコミュニティ運用する人にとって、せめて、どこか足しになれば。
ちなみに文章はめちゃくちゃ堅苦しいです。真剣に学びたい人、真面目に考えたい人向けです。
コミュニティのライフサイクル
さて、まず前提として、人が作ったものにはライフサイクルがあります。コミュニティにおいても同様で、まずは導入期、つぎに成長期・成熟期を経て、やがて衰退期を迎えます。製品であれば、プロダクトライフサイクルともいいます。
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FF14のコミュニティに当てはめるとこんな感じでしょうか。
① 導入期:新しくコミュニティを作り、宣伝をしていく時期です。
② 成長期:さまざまなメンバーが加入し、コミュニティを彩ります。新しいイベントや遊び方を模索していく時期です。
③ 成熟期:メンバーが定着し、独自の文化が形成される時期です。
④ 衰退期:メンバーの成長や環境の変化などのさまざまな要因で、コミュニティとしての必要性が低下する時期です。悪いことばかりではなく、コミュニティに求める需要が満たされたことで、役割を果たした状態とも捉えられます。
永遠に衰退しないコミュニティなんてありません。なんでも、そうして循環していくのが世の理だと思います。
そして、コミュニティが今どのステージかによって、抑えておくべき内容は違います。めちゃくちゃ長文ですが、ステージ別に書くので、必要そうなところだけ、なんとなく読んでください。
導入期に抑えておきたいこと
これから作る人向けの内容です。導入期で大事なのは、どんなコミュニティにするかしっかり考えて枠組みを作ることだと思います。
市場調査~ペルソナの策定が大切
コミュニティを作る前にある程度の方針を決めなくてはいけません。コミュニティに限らずですが、何かを作る時は、以下の3つの視点から考えると整理しやすいです。
自分がやりたいこと、売りたいこと
相手(他のプレイヤー)がやりたいこと、欲しい情報
法律やルール上規定する必要があること
(1)は自分のことなので、書き出すだけで整理できます。(3)はFF14のコミュニティであれば、挨拶のルールやネタバレ配慮をどうするか、VCを使うか、などが入るかと思います。ちなみに、私の個人的な考えですが、ルールはあまりガチガチに縛らないほうがうまくいくと思います。他人と揉めたくて交流のコミュニティにくる人なんていないはずなので。
ただ、もっとも重要なのは、(2)の相手のこと。そもそもコミュニティというのは、相手がいないと成立しないものですから、方針決めにあたっては、どのようなプレイヤーにどのような価値を与えられるかを中心に考えたほうがよいと思います。
そこで登場するのが「ペルソナの策定」です。ゲームを想像する方もいると思いますが、まじめな話、そうではなく、ビジネスにおける「ペルソナ」です。ペルソナというのは日本語でいうと「人格」です。
ビジネスでのペルソナの策定は「ターゲットを絞ること」に似ています。例えばお店に例えると、お菓子を売るお店が「全年齢層が買いやすい、どんなお菓子でも揃ったお店」だとすると、どの年齢層にどのようなお菓子を売ればよいのか、どうやって商品を選べばよいのかがわかりにくくなってしまいます。しかし、「お菓子を探している女性に向けた、ヘルシーで美味しいお菓子を揃えたお店」とペルソナを決めると、女性が買いやすいお店になります。
つまり、ペルソナの策定は、お客さんのことをよく知り、そのニーズに合わせた商品やサービスを提供するための大切な工程なのです。
FCやCWLSにおいても、同様に、ニーズに合わせて方針を決めていくといいでしょう。ただ、エスパー能力でもない限り、相手の考えが完全に分かる、ということはありえないので、ペルソナを策定するために市場調査を行います。
市場調査というと難しいように聞こえますが、やることは単純です。
・フレンドにどんな遊び方が楽しいか聞いてみる
・SNSで検索してみる
「FC(CWLS) 探し」とか「FC(CWLS) 募集」とかの検索ワードなら、 今探している人の投稿が見つかるでしょうし、「FC(CWLS) 楽しかった」なら、すでに活動中のコミュニティで、どういった活動が楽しいと感じられたのかが分かりそうです。
・コミュニティファインダーで、どんな募集が多いか分析してみる
私がLSを作った時にはこの機能はありませんでしたが、今は簡単に募集を見ることができます。募集が多い=需要が大きい、と捉えてよいと思います。
ブランディングもできる限りがんばる
コミュニティというのは、無形サービスなので、具体的に目に見えるものがありません。なので、何か形を作ってあげると、どんなコミュニティなのかメンバーに伝わりやすくなります。
例えば、ロゴやキャッチコピー。私は作れなかったんですが、イメージキャラクターとか作るのもいいですね。
また、簡単にいくなら、イメージカラーを決めたり、ゲーム内で使う制服を作ったり、みんな共通で使える小物を用意するのもいいと思います。
なんでもいいので、加入したプレイヤーが、自分で実際に使って触れるものを作っておいて、参加型にできると文化の醸成がしやすいのかなと思います。
どんな組織形態が理想かイメージしておく
「組織形態」というとすこし大げさですが、要はリーダーのパワーが強いトップダウン型の組織にするか、メンバーのパワーを強めたボトムアップ型の組織にしたいか、メンバーそれぞれが自由に動くアメーバ型の組織にしたいかで、段取りが少し変わってきます。
作った自分自身がしっかりとリーダーシップをとっていき、トップダウン型で運用しようという方針だったら、自分が好きなように準備をしたらよいと思いますが、ボトムアップ型であればメンバーと意見交換できる場所や機会がゆくゆくは必要になっていきますし、アメーバ型にしたいのであればコミュニティの性格や考え方を作ってメンバーに伝える必要があります。トップダウンにしない場合は、上述のブランディングをよりしっかり準備したほうがいいですね。
なお、私がLSを作ったときは、自分自身にあまりパワーや自身がない性格なのと、初心者すぎてゲームのことがあまり分からなかったので、できるだけボトムアップ型かアメーバ型のどちらかに、と思っていました。なので、ロゴとキャッチコピーと、盛り上げを手伝ってほしい主旨で宣伝しました。
余談:個人的にはティール組織にするのが最終目標でした
これを読まれている方は「ティール組織」という言葉をご存じですか?ちなみに私は、コミュニティを運営し始めたあとで知りました。
「ティール組織」とは、組織の仕組みや働き方が変わった最新の組織の形を指します。例えると、ティール組織は樹木のようなもので、根っこが広がっているので、自律的に成長します。各々のメンバーが自分自身で考え、自律的に行動することで、組織全体が柔軟かつ効率的に動くことができます。
AIくんの用語解説、難しいですね。「ティール」というのは色の名前(青みがかかった緑色)です。かみ砕いていうと、この理論では、リーダーの決定権の強さによって組織を色分けしています。
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FF14のコミュニティは権限があって、どうしてもマスター・リーダー・一般メンバー、のような階級制になってしまいます。それでも、コミュニティの性格や考え方の指針決定と共有さえできれば、マスターだけは概念化して、全員をリーダーにできたら、結構フラットに近くなるかなと思っていたんですが、私のプレゼンが下手すぎて実現には至りませんでした。
(中身のいないマスター名義用のキャラを作って、月イチくらいで全員にリーダーつける作業だけマスターがやったらいけると思ったんですけどね)
個人的には画期的な構造だと思うので、もし我こそはという方いたら、ぜひお試しください(責任はとれませんが…)
成長期で抑えておきたいこと
メンバーの心理的安全性を確保する
ビジネス現場でも、よく話題にあがりますよね「心理的安全性」。
「心理的安全性」とは、自分自身や他人と話すことが怖くない、安心して意見を言える状態のことです。意見交換をするとき、間違った意見を出してしまったら嫌な気持ちになってしまい、それ以降は口を開けなくなってしまうかもしれません。しかし、心理的安全性があれば、間違った意見を出しても、周りの人が優しく受け止めてくれるので、安心して話せます。言い換えると、心理的安全性がある場所では、自分自身を正直に表現できる、言いたいことを言える、という環境が整っているということです。
心理的安全性が低いと、メンバーがネガティブな感情を抱いても、直接的にそれを相談できる場がなく、誰宛でもないネガティブキャンペーンがSNSの海をさまよいはじめる、なんていう危険性もあります。
人の好感度に関する心理学「ザイオンス効果」
人間は顔を合わす回数や多くなるほど好感度が上がりやすい、という学説です。アメリカの心理学者ロバート・ザイオンスさんが発表したので「ザイオンス効果」といいます。日本語で「単純接触効果」ともいわれることもあります。
実際にゲーム内で会わなくても、写真を見るだけで効果があるそうです。適宜、イベントや声掛けを行い、ゲーム内で顔を合わせる機会を増やしたり、SSなどを見せ合ってリアクションできる場を作って、数をこなしていくのがとても有効だと思います。
一定の成長率を維持する必要がある
作ったあとの組織はひたすら成長・拡大を続けることを求められます。環境や、メンバーの意欲は時間経過とともに変わっていきます。何もしていないのに知らないうちに人が居なくなることは比較的よくありますが、知らないうちに人が来てくれることはほぼありません。
落ち込んでいるメンバーがいれば声掛けをすることも大事ですし、新規獲得ができなければ現状維持すらままなりません。必要に応じて新規メンバーを募集するようにしましょう。
成熟期~衰退期に抑えておきたいこと
メンバーの定着度の差に気を配る必要がある
成熟期に入っているコミュニティは、おそらく活動期間もそれなりに長くなっているでしょう。メンバーの中にも、古参の人と、新しい人が入りまじり、古参にとっての懐かしネタが、新しい人に全く通じない、といったことが起こり始めます。
これ自体は、起こさないということではなくて、用語集や、過去にあったできごとなど、誰でも見れる場所に置いておくと緩和できると思います。正直、私は想定不足で3年目くらいになってようやく手をつけたんですが、マメにできそうなら、誰がいつ加入したか、いつどんなイベントした、こういうネタがあった、など覚書を作っておくとよいかもしれません。
忘れるほうが知ることよりも難しい
対人関係が発達して、仲が良くなってくると、逆に相手の悪い面が見えてくることがあると思います。一度知ってしまうと、それを忘れることはとてつもなく難しいです。見て見ぬふりをするのが大人なのかどうかは、ちょっと判断しかねるところですが、スルースキルを使ったとて、知らなかったころに戻ることは絶対にできなくなります。
基本的にもう後戻りはできない
成熟期にはいると、メンバーや文化が定着してきます。組織としてすこし落ち着いてきたくる時期です。成長期の勢いが懐かしくなることがあるかもしれません。ただ、残酷なことに、成熟期にはいってしまうと、そこから成長期に戻ることはできません。成熟期としてどれだけの期間を見据えるか、どのように過ごすかはコミュニティ次第だとは思いますが、いずれは衰退期を迎えるものです。
ただ、衰退するのも、コミュニティとしてのライフサイクルが正常に回っているという考えで、別に悪ではないと思います。適宜、解体や洗い替えをすると、疑似的にサイクルをループさせることができると思うので、ちょっとこのままでは悪い衰退を迎えるなと感じたら、再度サイクルにのせられるか検討して、作り直したりなどを試してみましょう。だめそうなら潔く終わらせるのも全くもって悪くないと思います。
ステージ関係なく、抑えておいてほうがよかったなと思うこと
メンバー同士はニーズが合うとは限らない
新しく入る人は、マスターの人柄や、求心力のあるメンバー、もしくはコミュニティのブランドに惹かれて加入をしてきます。トップメンバーが提供する価値と、加入者の希望が合致している状態です。
ですが、このとき、それ以外のメンバーと加入者の希望が合っているとは限りません。
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こういう感じでAさんもBさんもマスターのことは好きだけど、AさんBさん同士はなにか思ったのと違う、ということが発生します。これを防いだり、緩和させるための具体的な方策は、正直あまり浮かばないのですが(人による部分が大きい)、同じ条件で募集したからといって、志が合う人ばかりが来るとは限らない、人間は複雑なものだ、というのを念頭においておくと、少し対応しやすいように思います。
議論が生じたらコップ理論を活用する
コップ理論というのは以下のようなことをいいます。言いたいことを伝えるだけでは、相手には伝わらない、共感する・傾聴することがとても大切です。
「コップ理論」とは、人の心をコップに、感情の量を水にたとえて表現したものです。人は、自分の話を聞いてもらいたいと思っているものです。「あれも話そう」「これも話そう」と、会話相手に「話を聞いてほしい」という気持ちでいっぱいになっています。
一方で、話を聞く側が「早くこれを言ってあげよう」「すぐにアドバイスしてあげなくては」という、「相手に言いたい」気持ちで対応してしまうと、お互いのコップに水が入りきらず、水があふれるように感情があふれ出してしまいます。これは、両方が「自分が、自分が」という状態になっています。これでは、お互いの話が頭に入りません。
https://zuuonline.com/archives/238164
複数人で運用したとしても自己負担の覚悟が要る
ゲームのコミュニティは、会社とは違って利益を追求するものではありません。しいていうと、利益はみんなが楽しく活動できることですが、それでは飯は食えません。コストや負担を減らしたり、分散させる工夫は要りますが、コミュニティ維持にかかる負担は、最終的には自分で抱えよう、という覚悟が必要です。
他にも色々あるけど、結局「相手を尊重する」に尽きる
たくさん書きましたが、一番大切なポイント、ここです。リーダーとメンバーのコミュケーションも、メンバー同士のコミュニケーションも、相手を尊重することが大切です。尊重することと、単純に優しく扱うことは少し違います。
たとえ若葉であっても、相手はひとりの立派な人間であり、大人であることを忘れないようにしましょう。なにか相手におかしいと感じるポイントや、自分より劣っている点があったとしても、決して相手の知性を低く見積もらないことです。気になっている点以外において、あなたよりも優れた点を多数持っているかもしれません。
できていない点を執拗に指摘したり、冗談で軽い気持ちだったとしても裏で悪く言う、などの行動は、相手を尊重しているとはいいがたいです。人が言われているのを聞くだけでも上述の心理的安全性はどんどん下がっていくと思います。
とはいえ、誰しも人間なので完全ではなく、完璧に対応するのは難しいです。(書いていて、自分でこれはできてなかった、と思うところがたくさんあります。)間違えたときに相手をバカにしない、転んで怪我しても起き上がれるようにがんばる気持ちが大事なんだと思います。
ゲームのコミュニティでここまで考える必要ある?
もちろん、必須ではないと思います。むしろ「周りを気にせず自分の楽しいことを優先してやるのが人生において良いことだ」という話もよく聞きます。でも、より深く考えれる人、周りの楽しみを尊重してあげられる人のほうがトップに立つ素質があると私は思います。(もちろん、自身が楽しむ人、盛り上げてくれる人はメンバーとして、とても助かるし大好きです。あと、そうじゃないからやってはいけないとも言わないです)
私みたいにここまで堅苦しくなくても、マスター業やっている方は、少なからず何かしら考えておられる方が多いと思います。
この記事の全部が正しいとは、私も思いません。どこかが参考になって、マスター・リーダーを頑張る人の一助になると幸いです。