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くまちゃん
タイトルは、角田光代さんの短編集に出てくる、「くまちゃん」の主人公、苑子が好きだった人のあだなである。
そしてくまちゃんと別れた苑子が、10年以上経って、最後の方の短編「光の子」でも、わき役に出てくるのだが、主人公の林の言葉を借りれば、同じ年とは思えないほどかなり老けているらしく、10年間の苦労が伺える。
好きならばただ「見守るだけでいい」「応援していればいい」と考える林に対して、
「今、何かしなきゃ未来につながるものだってなんにもないってことよ」
そして、
「今、いっしょにいる人が何かやりたいって言うんだから、私そっちをとろうと思うのよ。キャリアも無駄になるし、お給料だって馬鹿みたいに減るだろうけど、私はもう知っているんだもの。地味とかみみちいとか、キャリアとかお給料とか、人生になーんも関係ないんだって。なりたいものになるにはさ、自分で、目の前の一個一個、自分で選んで、やっつけてかなきゃならないのと思うの。文ちゃんも今、そう思ってるんだと思う」
といい、林にかなわないと思わせた。
そして、上記のセリフが私にもかなり響いて、角田光代さんは、すごいなと思わされたのでした。
本当にとても面白い短編集だった。