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よく来たね、って言ってあげたかったんだ

やっぱりこのことばを聴くためにここに来たんだと思った。
櫻井さんから、とっておきのねぎらいの言葉
「よく来たね」

10年ぶりに参加したap bank fes 
10年前にはふたり連れだったわたしたちは、10年の時を経て鮭がふるさとの川に還るように8歳の息子を連れてつま恋に戻った。
こころなしか、ではなく確実にそんな参加者が多いと感じた。
2005年からやっているap bank fes 。初期のフェスグッズを身につけた令和生まれのキッズをたくさん目にした。

みんな、それぞれいろいろあっただろうなぁ。
10年前は始発に乗ってなる早で会場入りして午前中から水がわりだーとか言いながら飲んでいたビールを、9時東京発の行きの東海道新幹線で買うか買わないか、かなり熟慮した夫が結局買ったのが静岡茶のペットボトルだったくらい、時は流れていろいろと変化した。

もちろん、体力のことだけじゃない。
30代から40代に差し掛かる年齢は、人生の折り返しに片足を踏み出し多分みんな仕事のこと、家族のこと、自分自身のこれからのことについて壁にぶつかったり振り返ったり迷ったり、違う扉を開けてみたりとかなりの変化があるときだ。みんな、いろいろ、乗り越えていろんな思いを持ってこの場所に集まっている。

多分それは、櫻井さんだって同じことなんだろう。
あの櫻井さんは今年53歳らしい。

よく来たね
大変だったんじゃない? 遠方まで疲れちゃったんじゃない?
こんなに良いお天気だから今年もいっぱい遊ぼう
よく来たね
いろいろあったんだろう 悲しいこと 嫌なこと 辛いこと
だけどこうしてまた逢えたんだよ 笑顔をいっぱいつくろう

フェスのオープニングとして毎回歌ってくれるこの曲。
ほんとに、その通りなんだ。
みんな、よく来たよ、ここまでさ。
遠いところまで、いろんな都合をつけて準備をして、この場所まで。今日の距離や時間や労力だけじゃない。
ここまで、よく生きて来たねって命を尊ぶ思いを、いままで以上に深く感じた。

いろいろあったけど、それがあったからこそこうしてまた逢えている今があるってこと。それならこれでよかったじゃないか。これが、よかったじゃないか。そんな風に、過去におっきなマルがつけられた。
こころが震えてよくわからない涙が溢れた。これは浄化の涙だと思った。

会場に集まった3万人が、ステージに立つ櫻井さんを見つめながらそれぞれのこれまでを振り返っていることを思った。
思いが、過去と今とこれから在りたい未来とに行き来する。

櫻井さんは、いつもいつも、わたしたちに大切なメッセージを発し続けてくれる。

目の前の知らない誰かはいつかの自分かもしれない
独りに思えるかもしれない、だけどみんな孤独を抱えてる
壁を感じてるのは自分だって同じだよ
すべては捉え方しだいで
それは越えられない壁ではなく、開けられる扉なのかもしれない
耳を澄ませてみて。想像を越える未来から呼ぶ声が聴こえるよ
わたしたちは無限の可能性を持っている
大丈夫。一歩ずつ踏み出しておいで

きっと、いや絶対に、櫻井さん自身が自分自身にかけ続けてきて、これからもかけけたい言葉なんだと思う。
時に信じられなくなる時があって、何度も何度も壁にぶつかって、でも諦めきれなくて。怖くても信じて動いた先に見えた想像を越えた景色が本当はあるってことを伝えたい。そしてそれを自分に見させてあげるのは、「あなた自身しかいないんだよ」ってことを。

押しつけるでもなく、ひとことひとこと、祈るような思いを込めて、声を届けてくれた。

そんな絶大な影響力をもつステージ上の櫻井さんは、意外にも、というか当たり前のことだけど、リアルなサイズの実在する人間だった。広いライブ会場の後方からは、豆粒サイズだ。
もちろん、櫻井さんの活躍は多く人のの支えで成し遂げているものだ。だけど、櫻井さんには歌を歌い続けてほしい、その生き様を表現してほしいという応援者を巻き込むだけのエネルギーが、ある。どんなに大きな規模のイベントになっても、何万人という観客分の1のわたしには、櫻井さんからの直接のメッセージが音の振動とともにダイレクトに心臓を揺らした。メッセージ、確かに受けとりました。このメッセージを一緒に受け取った会場の3万人と一緒ならどんなことでもできてしまうはずだと思った。

こんな熱い思いをお土産に持ち帰らせてもらえるから、ライブはやめられないのだ。ダイレクトに受ける空気の振動でなければ、受け取れないものがある。

さてライブ初参加の息子8歳、物心つく前からMr.Childrenの音源はことあるごとに聴かされてきているので知ってる曲も多く、ふとひとりでミスチルを口ずさむこともある人だ。
リアル櫻井さんの登場に興奮し、なぜか無言で涙を流す母をチラチラ見つつ、フェスタオルで涙を拭いてくれた。「これは、観に来ないとわからないね!」と、知った口をきき、彼なりの何かを掴んでくれたようで親としてはしめたものだ。
ただ、子連れでこれからフェス参加を考えている方に注意してほしいことを付け加えておく。
大人は早くビールとうまいフェス飯でライブに備えようと作成を練っているけど、子どもは併設の巨大ジャングルジムやワークショップに興味津々。巨大ブランコに乗るために30分の順番待ちも厭わない。それらを全カットで帯同できるほど甘くはないので、絶対に譲れないポイントを絞って押さえていくべし。彼らなりの楽しみかたの視点もなかなか学びがある。ステージ上で繰り広げられるハイパフォーマンスよりも、飛び交うバッタや水溜まりにこころ牽かれるのも彼らの良さだ。とか言って、一緒に30分並んだ巨大ブランコに、ちゃっかり母も1人乗りした。見ると乗るでは大違い。あれは、乗った方がいいよ!

大人だからブランコは子どもに遠慮して譲るべきとか、そういうちっちゃい壁から取り払ってこう。
抜けた先に想像を越える未来があること、わたしたちはちゃんと教わってるんだから。







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