花札を愛でる

はじめに

 おはようございます。
 ただ花札を眺めたりくったりしてるだけで楽しい中島遊花堂です。
 今日は一般的なごく普通の花札のデザインを眺めてあれこれ言っていきたいと思います。といっても、花札のデザインに関しての考察やらなんやらではなく、ぼくがやりたいのはただ任天堂と田村将軍堂、そして大石天狗堂それぞれのデザインを見比べて違いを楽しみたいなと、ただそれだけ。それだけでございます。
 今回用意したのは、任天堂は「大統領」。田村将軍堂は「花くらべ」。そして大石天狗堂は「金天狗」です。田村将軍堂のが少し古いけどまあいいでしょう。絵柄見比べるだけだしね。札は必ず左から任天堂、田村将軍堂、大石天狗堂の順に並べることにします。

もちろん札すべてに違いがあるんですけど、全部はさすがに疲れそうなので、主要なというかわかりやすいやつだけ見比べていきます。

それではさっそく愛でていきたいとおもいます。

松に鶴

まずは一月から。
任天堂と将軍堂に大きな違いはなさそう。将軍堂の鶴のほうが背中の羽根に少し模様が多いかな。入れ替えてもわからないレベル。それに比べて天狗堂の鶴はとてもスマートだしくちばしは水平に伸ばしてるし少しも似ていない。そしてちゃんと頭頂だけが赤いのがよい。



梅に鶯

鶯かわいい

任天堂の鶯はこの中では一番むっちりしてる。将軍堂の鶯は体は小さいのに足が大きくてしっかり木を掴んでいる。乗ってる枝の太さと辻褄合わせたのかな。そして梅の黄色の部分が大きいので一番派手に見える。それに比べて天狗堂はとてもあっさりしています。まず雲に模様がない。鶯の目は塗られておらず足もない。ハリボテを置いているみたいですね。そして鶯が乗っていない枝は細かったりそもそも枝自体がなかったり、細部を簡略化したミニマルデザインか。



桜に幔幕

桜は華やかで見栄えがいい

桜っていうだけで気持ちが明るくなってくるね。花見のイメージだ。任天堂は幕の色が少し暗い。モニターのせいかな。一番上の色は紫なんですけど。天狗堂は紐に水色が使われていて、他とは一線を画してる。ちょっと珍しいよね。
 それはさておき、幕を紐につるす部分に関しては将軍堂のが正しいんじゃないかな。

この黄色いやつね



藤にホトトギス

右側の!鳥…なの?

 目を引くのは天狗堂のホトトギス。目がない。くちばしもおかしい。月の形もへん。三日月も鳥という生き物も知らない人が既存の花札をてきとうに模写したのだろうか。不思議。



菖蒲に八つ橋

八つ橋ってなんだ

任天堂が一番地味。将軍堂のは一番描き込みが多い。花弁の黄色いラインが目を引く。杭に横線が描き込まれている。天狗堂は全体的にあっさりしてる。杭の色が菖蒲の葉と同じ色だし、将軍堂の黄色い茎らしきものは天狗堂に至っては花からぶら下がってる何かになってしまっている。



牡丹に蝶

蝶というより蛾みたい

将軍堂の牡丹は側面からの絵。上下に少しつぶれている。蝶は翅の描き込みが多くて虫の気持ちわるさが出てる。任天堂と天狗堂の牡丹は真上から描いている。天狗堂はあいかわらず薄いがそのぶん牡丹の葉の模様もはっきり見える。
 よく見ると任天堂の蝶の翅の模様が葉脈になってる

まちがい探しか



萩に猪

目がかわいい

猪だとわかって見てるから猪に見えるが、言われなかったら何の動物かわからないと思う。耳があったらもっと猪に見えるかな。個人の感想ですけど。
任天堂はまつ毛長め。将軍堂は垂れ目。この札に関しては任天堂と将軍堂の違いが大きい。天狗堂は常に別物。



芒に雁

月はおもしろくなかったので雁を選んだ。任天堂と将軍堂の芒は黒い丘に見える。山って言われてきたのはこの色合いのせいか。天狗堂は濃淡がはっきりしててちゃんと芒に見える。そして天狗堂の雁の一羽だけ色が違うのは日本骨牌合資会社と同じだ。なんでだろう。でもこれよく見ると翼の色を塗る場所まちがってない?

となりの鳥の翼と色が入れ替わってるよね




菊に盃

毛?

将軍堂の菊の花びらがトゲトゲしい。三つとも大きな違いはないようだけど、しいて言うなら盃の下のあれなんだろう。こんなに色使いの解釈が違うのも珍しい。菊の根っこ?でも天狗堂は水色だしね。もしかして描いた人も何だかわかってなかったりして。




紅葉に鹿

任天堂の鹿は顔がシュッとしてる。将軍堂のは顔だけ見ると鹿に見えない。何より気になるのは、どちらも顔の前にあるとってつけたような小さい枝みたいなもの。初めて見たときは口からなにか出てるのかと思った。天狗堂の札にはそれがないから好き。

鹿に見えない




柳に小野道風

 天狗堂の札が一番小野道風と蛙のバランスがいい。すごくいい。柳が細いところもまたよい。他の二つは人が小さいうえに柳がもっさりしててなんだかギュウギュウしてる。
 天狗堂のはバランスがとてもいいんだけど、やっぱり傘を持ってる手の袖が描かれてなかったり、蛙がどう見ても里芋だったりと少しづつおかしいのはあいかわらず。
 そしてもっとも重要なポイントは、小野道風の前にも川が流れていること。この右奥から左手前に手前に川が流れているスタイルについては、手元の資料によると京都ではなく大阪の花札の特徴らしいんだけど、天狗堂は京都の老舗だしなあ。どういうことなんだろう。



桐に鳳凰

任天堂と将軍堂はよく似てるね。同じお手本を見て描いたのかあるいはどちらかがお手本なのか。目の上の丸い模様や目の下の線、翼の模様までだいたい同じ。将軍堂のほうがやや細かい描き込みが多い。桐の葉の模様もみっしり描かれている。
 天狗堂はもはや「見ないで描いてみよう」状態。



桐のカス札の違い

縦にならべました

最後に桐のカス札。
それぞれの会社名と登録商標を桐のカス札に書くのが花札の定番。書く札は違っても似たようなことが書かれている。
 軽くググったら「張貫」っていうのは紙を何枚も重ねる製法のことらしい。たぶん。
 ただ、天狗堂だけ「張貫」って書かれてない。どこにあるかっていうと、

張抜

ここにありました。なんでこんなところに書いたんだろうね。



終わりに

以上、ざっくりと見てきました。
楽しいですね。こうやってああだこうだ考えながら眺めるだけで楽しい。
 注意していただきたいのが、ぼくは決して何かを貶めようとかどこかからお金をもらってるとかそういうわけではなく、思ったことを書いてるだけなので、「そういう見方もあるか」程度に見ていただければ幸いです。
 
 最後に一つ、ケースはなんといっても任天堂が一番いいですね。天狗堂も将軍堂もうっかり持つと下が抜ける。引き出しから取りだすときは、両手で持つか左右から押さえつけながら持ち上げないと蓋だけが取れる。その点任天堂のケースは少々雑にあつかっても大丈夫。バッグに入れてても開いてしまう心配がない。みんなこうなればいいのに。 


ではまた次回。

いいなと思ったら応援しよう!