深夜のひとりごと#01
世の中は黒と白よりもグレーが一番多い。曖昧で輪郭がはっきりしない。人も社会も。
大人になって、それも私の場合社会人になってから強く実感するようになった。
物心ついて初めて夢中になったアニメはアンパンマン。
アンパンマンは正義の味方で、悪者であるバイキンマンをやっつける。弱者を助ける強いヒーロー。
正義は勝つ。単純明快で分かりやすい。アンパンマン大好き少女だった私は、そこそこ正義感強く育った。と思う。
その分、大人になってグレーに苦しめられることも多かった。なぜ正しいことを言っているのに受け入れられないのか、これを許してしまっていいのか。ジレンマをたくさん経験した。でも、そこで学んだことは、必ずしも正論だけが人を動かすわけではなく、正しさが人を傷つけることがあるということ。正義の価値観は見る「面」が変われば、簡単に変わってしまう。
神様は見ている、と昔から言われる。当然悪いことは悪い。
ただ、世の中は正義か不義か、善か悪か、黒か白か。そんな簡単に分けれるものではない。
犯罪は悪であり、不倫はいけないこと、それは当たり前である。
でも、そこに到る物語を知った時、必ずしも悪だと糾弾できるのか。
昔観たドラマで衝撃を受けた物語があった。かなり昔なので、ストーリーや流れなど多少の記憶違いはご勘弁いただきたいが、未だに記憶に残っているもの。
司法修習生に焦点を当てたストーリーで、「ビギナー」というタイトルのドラマ。修習生たちが、実際あった過去の案件を課題として審議していく。
その中で、妻を殺害し、殺人罪に問われる年老いた男性の裁判の話があった。
人が良く、真面目で責任感の強い男性。あるとき、友人の借金の連帯保証人欄にサインをしてしまい、友人が逃げ、借金を肩代わりすることになってしまう。(確か)
人様に迷惑を掛けてはいけないと、行政にも誰にも頼らず、家も無くし公園で野宿の日々。ついにお金も底をついてしまう。妻は元々体が弱く、持病を悪化させて衰弱していく。そして妻から「殺して欲しい」と懇願される。絶望の中で最後のお金で妻の好物のアンパンを1つだけ買い、ふたりで食べる。その後、長年連れ添った愛する妻の首を締め、殺害してしまう。
まだ当時小学生くらいだったと思うが、凄くショックを受けたことを覚えている。なぜこんなことが起きてしまうんだろう・・・。ドラマとはいえ、2人の心情を考えると悲しくて辛くて悔しくて、やるせない気持ちになった。
この殺人は悪なのか?この人は犯罪者なの?世の中には報道されないだけでこういう出来事が実はたくさんあるのかもしれない・・・。いや、新聞やニュースではたった1行で片付けられるニュースがこれに当てはまるのかもしれない。
小学生ながら凄く考えされ、未だに記憶に残っている。
物事を一つの側面からしか見れなくなるのが一番怖い。自分の意見が常に正しいと思い込むことは危険なこと。
事件が起こるたびに、「周りに頼れば良かったのに」「行政になぜ相談しない?」色んな意見が出るが、真面目な人こそ「周りに迷惑を掛けちゃいけない」「自分で解決しなきゃいけない」と思い込んでしまう。
本当に追い込まれた人がそんな冷静に考えられるだろうか。
どんどん複雑になっていく世の中で、一方的な報道や証言に惑わされず、情報を読み解く力を養わないといけないと日々感じる。
とある芸能人の訃報で色々考えされることがあり、頭を整理したくてこのnoteを書いた。この生きづらい世の中で、彼はきっと真面目で物事に真摯取り組む誠実な人だったのだろう。
端から見れば、仕事も順調、将来有望、容姿も整い何の不自由も無さそうに見える。ただ、それはあくまでも端から見た印象にすぎない。
人の痛みは他人には分からないのだから。
人はたくさんの面を持っていて、自分が見ているその人の面がその人の全てではない。
自分の何気ない言葉が、行動が人を傷つけてしまう可能性がある。
周りの人に寄り添える余白のある人間になりたいと思う。