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旅人たち:2月11日の日記〜インドネシア、ブナケン島

二月十日(金)中国人のアイビーとアイルランド人のケビンが去った。アイビーは十一日にマナドからソロンへ飛行機で飛び、ラジャアンパットを目指す。ラジャアンパットはインドネシアのダイビングスポットの中で超有名どころの一つである。

前日に彼女がマナドまでのボートを手配するとき、通訳を頼まれた。私たちのゲストハウスはブナケン島の公共ボートが発着する船着き場から少し離れていて徒歩では行けないので、船着き場までのボートをアレンジしようとしていた。

ケビンも同じ日の朝にブナケン島を発つと聞いていたので、「同じ船でマナドまで行ったら?」と提案したが、ゲストハウスのスタッフによくよく聞いてみると彼は同じスラウェシ島でもマナドじゃなくて、マナドから五十キロメートル離れた別の街までのプライベートボートを手配したらしい。

けっきょくアイビーは、ブナケン島の公共船着き場までの小舟をアレンジしてもらい、そこからは自力でマナドまで行くことにした。船着き場からマナド行きのボートは午前八時二十分から三十分の間に出るというので、当日ゲストハウスを出発するのは午前八時すぎという段取りになった。私たちは朝八時のダイビングボートで海に出るので、そのときに最後のお別れができるねと、いっしょに朝食を食べたあと、準備をしに部屋へ戻った。

歯磨きして水着に着替えたあと、タオルとスマホをデイバッグに入れて、八時前にダイニングルームに戻ったらすでにアイビーは出てしまったあとだった。「ついさっき、出ていったばかりよ」とフランス人のYにいわれて、ビーチへのコンクリート階段を裸足で降りた。

もう船で出ちゃったかしら、とビーチを見回しながらダイビングボートの方へ歩いて行くと、ちょうどアイビーらしき旅人を乗せた小舟が見えた。インドネシア人の漕ぎ手が沖へ向かって竿で船を押し出している。
「アイビー!」
と叫ぶと、先にインドネシア人が気がついて、彼女に私たちを指さして知らせた。風が出ていたので、たぶんお互いの声はあまり届かないのだろう。

するとアイビーはこちらに気がついたようで、手を挙げた。なにか言ったかもしれないが、やはり彼女の声も聞こえない。でもこちらの声は聞こえるかもしれないと、
「楽しんでねー!」
と叫んだ。
アイビーは再び手を振った。

ボートはエンジンをかけ、ぐんぐんスピードを増していき、左の方へ進んで行った。私たちは、いつものようにダイビングボートの方へ歩いて行ったが、ほどなくもう一艘のボートが沖合に見えて来た。ケビンの船だ。

彼はここから直接スラウェシ島へ行くので、まっすぐ沖へ向かって進んで行く。手をふると、彼はすぐに気がついて手を振り返した。

二人の旅人が去って行った金曜日、別に二人の旅人がやって来た。カナダ人のエイドリアナとインドネシア人のプディングだ。二人はいっしょに旅行してるのか別々なのか、最初は分からなかったけどどうやら同じ部屋に泊まっているらしいので、カップルなのかもしれない。

二月十一日(土)には、フランス人夫婦が去って行った。彼らはマナドまでのプライベートボートをチャーターしていて、午後三時の出発だった。私たちが海から戻りランチを食べたあと、ゆっくりお別れを行ってさよならできる、と思っていたら、ランチのあと熱帯の雨が激しく降って来て、彼らは慌てバルコニーに置いてあった荷物を移動させなくてはいけなくなった。

彼らと入れ違いにやってきたのが、二人のソロトラベラー、カナダ、ケベック人のケビンとスペイン人男性だ。ケベックのケビンとは夫が長いことフランス語で会話していたが、スペイン人の彼とは(名前をまだ聞いていない)夕食後まで話す機会がなかった。

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