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語学学校、ちょっとモヤモヤした話

語学学校に行っている。

「英語で何か勉強するのは分かるけど、英語自体を学校で勉強するなんて無駄だー!」

と過去に豪語していた私だが、今は

「英語でやり残したことがないように、ある選択肢は全部やる!!」

に切り替えて、結局オーストラリアのメルボルンで語学学校に3ヶ月通うことにして、訳半分の期間が過ぎた。

私の語学学校は4時間授業で、最初の2時間が「コアクラス」といい、レベル分けされたクラスで、同じクラスメイトとテキストに従って学んでいく、いわゆる「授業タイプ」のクラスで、これは毎日変わらずある。

その後の2時間は日によって変わり、スピーキング・語彙など、コミュニケーションに注目したクラスがある。これは先生、クラスメイトも毎回変わるので、指定された教室に移動するスタイルだ。

わりとエンジョイしていた学校生活だったが、2週間とちょっと前にコアクラスの先生が代わった。

前の先生はワーキングホリデーを使って仕事をしていて、ビザの関係で今の学校を辞めることになったのだ。

アイルランド出身の女性で、優しく忍耐強く、生徒思いで素朴な、とーーーーーーーっても良い先生だった。誰に聞いても好印象な答えが返ってくるめちゃくちゃ好感度の高い先生だった。

最後の日に「I miss you already!」と言って写真を撮ってもらうと、彼女は涙ぐんでいて、私も目の奥がつーんとしてしまった。

それで、次に私たちのコアクラスの先生になったのがニューヨーク出身の女性の先生。半年ほど前にこの学校に勤めていたが一度辞め、今また帰ってきたらしい。
生徒の中にも彼女を知る人がたまにいて、明るくハキハキした印象を受けた。

彼女は時間と授業中のマナーに厳しく、何かというと

「お互いにリスペクトして。私の時間を、あなたたちはリスペクトしなければならないの」

とよく口に出す。

心の中で(お~なんかめっちゃアメリカ人っぽい)と思いながら、少し経ったある日。

私の学校では定期的にテストがある。

内容としては

・リスニング:音声を聞いてペーパーの問題に答える
・ボキャブラリー・グラマー:ペーパーのテスト
・スピーキング:前の先生の時は先生と少し話していた(今の先生はどこで判断しているか謎)
・ライティング:お題を出され、軽くエッセイを書く

こんな感じ。

ペーパーのテストが終わった段階で一度回答が回収され、クラスメイトの回答が配られてきて、採点をする。また回収され、先生によってスピーキングとリスニングの点数が加点されて、後日最終的なテスト結果が返ってくる。

ただその日はクラスメイトの採点をした後、他人のライティングのエッセイが配られてきた。(先生による採点はなし)

先生が、

「他の生徒の英語に目を通すことで、自分の英語の上達に繋がります。クラスメイトのライティングを採点してください」

と言っている。

その日のライティングのお題は家族についてで、私もだが、配られたエッセイも自身の家族についてかなり詳しいことを綴っていた。

家族の名前、出身地、詳しいパーソナリティや自身との関係性など。

私はちょっとモヤモヤして、一応クラスの他の日本人に確認してみた。

「これって、他の人のが配られてますよね?」

クラスメイトの日本人の女の子は鼻で嗤い、

「自分は自分の英語で正しいと思って提出してるんだから、自分のを見たって採点できなくないですか?」

と返してきた。うーん、まあ正論ではある。

はぁ、とかなんとか言ってクラスメイトのエッセイに目を通し、特に絶対的な間違いを見つけられないまま、私はそっとエッセイを書いた本人に戻した。

その日はずっとモヤモヤしたまま、もう帰るか~と思っていたのだが、同じクラスのタイ人の女の子にランチに誘ってもらい、放課後タイフードを食べに出かけた。

ランチを食べる間、私は軽く

「今日のテストどうだった~?」

と聞く。

すると彼女は思った以上に真剣な表情で、

「ありえなかったね」

と言い放った。

「あれ、なんで私のライティングを他の人に配ったんだろう?私は先生に向けて書いてるから、家族の詳しいことまで書いてた。個人情報だよ!」

私はちょっとビックリした。
今日のテストで私以外にモヤモヤしている人がいると思っていなかったからだ。

「・・・そうだね。私が見たエッセイもかなり彼女の家族について詳しく書いていたし、私がそれ知るのは変だよね」

私が呟くと、彼女は続ける。

「他の人の英語を見ることで自分の英語が上達するって言うけど、私たちのレベルだと大体英文合ってるし、書いてることは伝わるでしょ。それに先生に向けて書いてるんだから読むのは先生であるべきだし、そもそも採点するのは彼女の仕事でしょ!」

私はとっさにこう言った。

「今日のテスト、あれは rude (失礼)だったね」

そうか。

私、今日のテストを、私に対して「失礼だ」と思っていたのか。

毎回毎回「リスペクト」を持ち出す彼女の行動が「リスペクト無し」だったということか。

「そうだよ!そう!あれは生徒に対してものすごくrudeだった!」

「私、同じクラスの日本人の女の子に質問してみたんだけど、彼女は何も気にしてなかった。それにも驚いたけど・・・でも、やっぱり、もし事前にテストをクラスメイトに配ることを知らされてたら、違うことを書いただろうなって思う」

タイ人の女の子は、もちろん日本語が通じない。

なので私たちの会話はつたない英語でかわされる。

伝わらないこともあるし、お互い思っていることを全部英語にできているとも思えない。

それでも、私はこの時とても通じ合えた気がしたし、なにより彼女と話すことで自分への理解が深まったことを感じた。

私がモヤモヤしていたのは、日本人の女の子に対して、というわけではなかったのだ。

もっと言い方あるんじゃないの?

とか

他人のが配られてるか聞いてんだからイエスかノーで答えろ!お前の意見は聞いてないんだよ!!

とか、そんなことを思っていたわけではない。
(嘘、思っていたけど)

でもそうじゃなくて、私は ”個人情報が書かれた文を読む” 状況に関して違和感を覚えてモヤモヤしてたんだと思う。

そしてきっと、「他人のが配られていますよね?」と聞くことによって、「これ読むの、おかしくないですか?」と聞きたかったのかもしれない。

私自身にもはっきり分からなかったのだから、ましてや20歳の女の子がそんなことを汲んで考えられるはずもない。

そうか~。
私、テストのやり方にモヤモヤしてたのか~。

自分の気持ちなのに気付かないなんて不思議だなあと思ったが、この会話でかなり心が晴れた気分だった。

「私は今のクラス、あと2週間で終わりなの。上のクラスに移る時期だから。あなたはどれくらい今のクラスにいる予定?」

タイ人は続ける。彼女は私より長くクラスにいるから、もうすぐ上のレベルに移るということだ。

「学校の予定では、あと1ヶ月はあるね・・・」

彼女は眉をひそめ、「辛いね・・・」と言った。


次の日、いつも通りにクラスの授業を受けていると、昨日ランチをした子とは別のタイ人の子が私の隣に座った。

彼女が無言でスマホを差し出してくる。

そこには英語で、

「私は来週で学校を卒業してタイに帰る。帰ったら、このクラスの先生について学校に抗議のメールを送るつもり。彼女のやり方はあまりにも自己中心的だし、生徒に寄り添う気持ちがなさ過ぎる」

と書かれていた。

おおかたタイ人同士で昨日のことを話したのだろうと見当を付け、

「私も彼女のやり方には反対。自分ばかり喋って、生徒の英語のスピーキングの時間だって言いながら全然練習になってない。特に昨日のテストの内容は最悪だった。いつもリスペクトしろって言ってるけど、あれはノーリスペクトだったと思う」

と返した。

「私は来週、テストの日以外コアクラスはボイコットするつもり。気分が悪くなるし、居るだけ無駄」

彼女は私にそうメッセージを見せると、ちょっと笑った。


その後のクラスでも、先生は、生徒が作った英文を読んでる最中に自分の話を始め、英文が終わっていないにも関わらず

「ありがとう。では次の人ね」

と強制終了させたり(内容絶対聞いてない)、文法について詳しく説明を求める生徒に大きな声でテキストを繰り返し読み返す、という「それ説明じゃねーじゃん!」と思える授業を展開していた。

挙げ句の果てにはハロウィンの仮装をしてきた生徒と授業中に写真撮影を始め、

私はこの写真撮影の時間のために授業料を払ったってこと?

と更にモヤモヤが募った。

このことを別のクラスの日本人Aに相談すると、

「私、半年前あの先生が辞める前に彼女のクラスから移ったよ!他のコアクラスに移動した方が絶対良いよ!」

と言われ、日本人Bにも、

「お金払ってるしあと1ヶ月もあるんだから、絶対クラスを変えるべき。そんな楽しくないクラスで英語勉強にならないじゃん」

と言われ、本気でクラスの変更を考え出した。

躊躇してしまうのは、クラスメイトに仲が良い人がいるということ。
(まあ鼻で嗤った日本人もいるけどな)

とりあえず話だけでもしてみるか~と思い、先日マネージャーのもとに突撃してきた。

別に悪口を言いたいわけでは無いので、言葉を選びながらつっかえつっかえ話した結果、テストの話になるとマネージャーがかなり険しい表情になり、

「テストを他の生徒に配る前、先生は生徒に許可を取りましたか?」

「いいえ。だからちょっと、私はそのやり方に賛成できなくて・・・」

「それは当たり前だ。絶対に事前に伝えて許可を取るべきでしたね」

と言っていた。

「その件は僕と彼女で話さなければならない。あなたのクラスを変えることに問題は無いですよ。来週から変更になります」

ほっと胸をなで下ろしたところで、彼は続ける。

「面白いことに、他のクラスの生徒で ”彼女のクラスに移りたい” という生徒もいるんですよ!あなたと逆で」

「ええ、もちろん。生徒の中には彼女を慕う人がいることは知っています」

「性格もあるしね。なんにしろ、貴重な授業のレビューをありがとう。感謝します」

その後、私はなんともない顔でクラスに戻って彼女の授業を受けた。

授業中、例のタイ人(抗議を送る子)からメッセージが来て

「先生、なんで今こんなに急いで説明してるんだろ?彼女、いつもイライラしてるみたいね」

とあったので、賛成の意とともにマネージャーとの会話を伝えてみた。

このクラスに移りたい生徒がいるのだと言うと、

「オーマイガッ!信じられないね」

と私にメッセージをして、向かいのテーブルで笑ってみせた。

そんなことが先週あり、予定では来週の水曜日からコアクラスを移ることになる。

クラスメイトが変わってしまうのが正直不安だ。

ちゃんと馴染めるだろうか。

今のクラスの人たちとも、仲が続けば良いなぁ。

あと、クラス変わった後に廊下とかトイレであの先生にばったり会ったりしたくないなぁ。

そんなことを考えながら、この文章を打っている。

また何かあったら、書くかもしれないです。




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