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咲き乱れるつつじとひとりの私

つつじの香りが思い出させる

いまおもえばいつも一人で寂しかった小学校のころのはなし


鍵っ子 留守番

あの頃は、誰かの家にピンポンしにいけば少しの時間は寂しくなかった

5時のチャイムが鳴り、みんなは明かりのついたいい匂いのする家に帰っていく
そのなかでひとり鍵を開け、電気をつけ
リビングの電気をつけ、足にまとわりついてくる猫を抱き上げる

3チャンネルと12チャンネルを行き来しながら
おやつ代わりに砂糖とクリープをたくさんいれたコーヒーをのむ

それがないときは水に砂糖をとかすだけの通称「砂糖水」

兄は家にいることもあれば出かけていることもある

家にいても基本は2階の部屋にこもりきりだし、父と顔を合わせたくないからと食事も別

時たま気が向くと趣味の料理を手伝わせてくれた

刺身の切り方や卵の巻き方は母からも教わったことがあるが

はるかにわかりやすく、話し方も優しく、時に豆知識も入れながら私に合わせてゆっくりと教えてくれた

小学校五年生の時
母は帰りが遅くなる仕事についていたため(やましいものではない)
私が夕食の準備を命じられていた

週に数千円のお金を渡され、自転車で行ける範囲の
スーパーや酒屋さんでそれっぽいものを買い調理し
父と妹に提供していた

その時たまに手伝ってくれたのも兄だった

ていうか、父よ、母より先に帰ってきたのなら
ご飯くらい作ってくれてもええんやで

おかげで私はテレビの3分クッキングをノートにメモしたり
下校しながら今夜のおかずは何にしようと考える小学生になった

手提げをブンブンふりながら
片道40分の下校途中

畑で作業するおじさん、いやおばさん?と悩んだり
学校と家が近い同級生が
自転車でどこかへ、向かうのを見つけたり
いつもいる野良猫が今日は見当たらないなと車の下を覗いたり

家が近くなってくると
あの素敵なかほりがしてくる

近所の小さな公園で
立派なツツジガ満開になっているのだ

その勢いたるや、おそらくは周辺住民の腹を全て満たせるくらいである

そう、小学生にとってつつじは
愛でるものでなく食すものなのである

蜂に気をつけながら
咲いたばかりのみずみずしい花をいくつかピックアップ
ガクをうまくとるとおしべやめしべもきれいに抜ける
お花のすぼまった方を吸うと
なんともあまい幸せな味がする

誰もみていないのをいいことに
2つ、3つと手が止まらず
たらふく堪能し
家でまた食べようと3個くらいお土産に。

そしてまた同じ夕方のお留守番がはじまる


我慢ばかりの子供達をちゃんとした「旅行」に連れて行ってあげたい。 映画や観劇、体験型レジャーなんかもしてみたい。 養育費と慰謝料がないので面白かったらチップをお願いします。