【橋下徹研究⑨】「副市長案件」に潜む2つの巨大な闇|山口敬之/Hanadaプラス要点切り抜き
松井市長も吉村知事も沈黙を守っていたが…
・上海電力をめぐる松井知事や吉村知事のSNSなどでの発信を見る限り、維新という政治勢力は「国民の生命と安全を最優先する」、保守政党とはいえない。
インフラの安全を顧みない松井市長
・上海電力に公共発電をゆだねても「マズくない」という認識。
・松井市長や吉村知事は、国民・市民の生命と財産の保全よりも、橋下徹氏の擁護を優先。
大阪市長は何をすべきだったか
橋下氏や松井氏は、
・「手続きに違法性がないから問題ない」
・「外国企業だからと言って排除できない」
・「地方自治体の首長の仕事ではない」
という。
・上海電力の参入を知った段階で大阪市長としてできることがあったはず。
・大阪市が上海電力の関与を確実に知ったのは、遅くても
2014年3月16日、咲洲メガソーラーの着工式の日。
・入札に参加せず、完全な無契約・無関係な存在だった上海電力の社長が咲洲メガソーラーの着工式に現れ、落札者である伸和工業と鍬入れ式を行った。
・鍬入れ式には朝日新聞や新華社通信など内外のメディアが大きく報道。
・橋下徹市長はなぜ上海電力の参入が確定した段階で、市民にアナウンスしなかったのか。
お得意の「徹底的な情報公開」はどこへ行った?
・橋下氏・吉村氏・松井氏の3人の維新の歴代大阪市長は、今日に至るまで、上海電力の事業参加について大阪市民に一切のアナウンスをしていない。
・3氏はネット動画やツイッターなど非公式な媒体で「手続きに問題はなかった」「橋下氏は関与していない」など手続き論をつぶやくばかり。
・橋下氏に至っては、批判者を口汚く罵り、上海電力問題とは無関係なことで誹謗している。
・中国に国防動員法という法律があるからこそ、今回の上海電力問題が大きな注目を浴びている。
「副市長案件」という闇
・松井氏らが、ここへきて繰り返し主張しているのが
「副市長案件」「港湾局長決裁」という2つの単語。
・彼らが言いたいのは、「咲洲メガソーラーに関する決定は橋下徹市長ではなく、橋下市長によって副市長に抜擢された田中清剛氏が行った」ということのようだ。
・田中清剛氏は建設局長を最後に2011年に大阪市職員を辞め、 2012年2月に橋下徹新市長が副市長に抜擢した時には、外郭団体「都市技術センター」に理事長として天下っていた、大阪市職員OBだった。
・「天下り根絶」を掲げていた橋下氏が、天下りしたばかりのOBを副市長に抜擢したことで、当時は大いに物議を醸した。
・田中氏はその後7年の長きにわたって副市長を務めたあと、2019年4月には吉村洋文知事によって、大阪府の副知事に大抜擢された。
なぜ「局長」でなく「副市長案件」に昇格したのか
・咲洲メガソーラーは、外形上は「月額55万円の市有地賃借契約」。
・通常なら「副市長案件」ではなく、「局長案件」だったはず。
・大阪市は今年2月、咲洲メガソーラーがある此花区で同様の市有地賃借の入札を行なった。
・入札予定価格と落札価格を咲洲メガソーラーと比較すると、次のようになる。
[此花区桜島]
入札予定価格 658,909円
落札価格 1,100,000円
[咲洲メガソーラー]
入札予定価格 550,000円
落札価格 550,001円
・桜島物件の決裁を行ったのは大阪市契約管財局長。
・副市長や市長に報告したかどうかは別だが、決裁の最後のハンコをついたのは局長。こういうものを「局長案件」と呼ぶ。
・桜島物件も咲洲メガソーラーも、市有地の賃借に関する「制限付き一般競争入札」。
・もし大阪市が「局長案件」と「副市長案件」と「市長案件」を金額の大きさで決めているのであれば、桜島よりも予定価格も落札価格も低い咲洲は「副市長案件」「市長案件」ではなく「局長案件」だったはず。
・咲洲メガソーラーを扱った港湾局は、フェリーやコンテナ船のバースなど巨額の賃借契約を担当するため、特に2012年当時は局長の権限が強く、咲洲のような月55万円程度の不動産賃借は間違いなく局長の裁量で決裁できたという。
・金額的には安い咲洲物件が「局長案件」ではなく「副市長案件」に格上げされたのはなぜか。
・それはもちろん、金額以外のことが考慮されたから。
・その決め手となった人物こそ、2011年12月に市長に就任した橋下徹氏。
橋下市長に報告しなかったはずがない
2012年9月19日、橋下市長は市議会でこんな発言をしている。
・新しい市長が咲洲や夢洲など大阪湾でのメガソーラー事業について熱く詳細に語っていた。
・この橋下市長の発言を精査すれば、咲洲の隣の「夢洲メガソーラー」については、大阪市の幹部が橋下市長に詳細に説明していたことがわかる。
・これに対して橋下氏も「いったん決まった業者を変えられないのか」とか「地元還元するように考えろ」など、非常に細かい要求をしていた。
・それなのに南隣の咲洲メガソーラーについては、田中清剛副市長だけがすべてを決め、橋下氏には一切相談もせず、橋下氏からも何の指示も出なかったというのか。
もうひとつの大きな疑惑
・大阪市は「咲洲メガソーラーの決裁、すなわち書類上の処理は全て『田中清剛副市長が行った』」と主張。
・私はその説明まで虚偽説明だとは思っていない。
・逆に、もし田中副市長が咲洲メガソーラーに関する全ての決裁の責任者にさせられていたとすれば、それこそが深い闇の入り口だと見ている。
・橋下徹市長は、2012年8月には咲洲メガソーラーの様々なリスクを熟知しながら事業をゴリ押しし、だからこそ自らの身の安全のために副市長に全てを決裁させたという疑惑。
・大阪市の幹部は、事業規模的には「局長案件」という扱いで十分な咲洲メガソーラーの不動産賃借契約を「副市長案件」に格上げした。
・大阪市港湾局と田中副市長は、咲洲メガソーラーに関する強い思い入れについて議会で熱弁した橋下市長には、一切の報告も相談もせず、指示も受けていなかったことにし、決裁も「副市長案件」という体裁を取った。
・橋下市長がもし、咲洲メガソーラーについての説明は聞いていたが、決裁は副市長にやらせていたとすれば、そこにどういう意図があったのか。
・橋下市長が咲洲や舞洲のメガソーラー事業について議会で熱弁を振るった2012年9月といえば、大阪市港湾局内部で咲洲メガソーラーの計画が具体的に進み入札に向けた準備が急ピッチで進められていた時期。
・その3か月後には「伸和工業」と「日光エナジー開発」という、太陽光ビジネスの実績がまったくない2社で作る企業連合体だけが応札
・しかも入札の条件である納税証明書を提出できなかった日光エナジー開発の書類不備が見逃され、ついに成約に至るという異常事態が起きた。
・大阪市の幹部にとって、本来は入札段階で書類で弾かれるはずの企業と契約を結んでも自分には何のメリットもないどころか、自らが逮捕されることもありうる極めて危険な行為。誰の指示でそんな危険な行為に手を染めたのだろうか。
・2013年7月1日までに発電を開始するという契約は無視され、工事すら一向に始まらなかった。
・ここで、大阪市は伸和工業らとの契約を破棄すべきだったが、この時もやるべきことをやらず契約不履行を看過。
・この異常な判断を指示したのは一体誰なのか。
・不透明な入札の果てに実績ゼロの企業体が落札し、工事大幅遅延の末に上海電力が登場するという異常な展開を見せた咲洲メガソーラーのイカサマ性を最初から知り尽くしていたとしたら、自分のハンコは撞きたくないというのが人情だろう。