オヤスミのくちづけを(妄想小説)
男の人のヒゲがあんなに硬いものだとすっかり忘れていた。
私の上唇に触れた
ザシッ……
という感触
温かい隆二の体温が手のひらからも
唇からも頬からも背中からも私に伝わる。
『くすぐったい』
クスクスと笑う私を隆二は『なんで』とふにゃりと
笑う。
『ヒゲが』
と言うと、わざとますます押しつけてくる。
あ。
小さい頃、父親もこんなことしてたよね。
と思い出した。
ザシザシという不愉快な感触と安心と幸せな気持ち。
隆二のザシザシは、不愉快よりも甘くて官能的で蕩ける感覚。
大人になっちゃったわ。
『隆二眠い……』
目を閉じると隆二は『オヤスミ、また明日』
と言ってキスをしてくれた。
ザシッ
幸せなオヤスミのくちづけを